Cycling The Earth ~自転車世界一周の旅~

日記

世界の果てから、故郷へ

2025.04.17 | アルゼンチン

【365日目 19,429km】

 

 

南北アメリカ大陸を巡る旅の果てに

たどり着いた街・ウシュアイア。

到着の翌日には雪が降り始め、

本格的に寒くなる前に到着することが出来てよかったと

ホッと胸をなでおろしております。

 

 

 

“世界の果ての街”という冠を

掲げているだけあって

多くの観光客がやってくるウシュアイア。

通りにはお土産屋や旅行会社が沢山あり

何となく話には聞いてたものの

予想以上の発展ぶりに驚かされます。

 

 

 

 

 

 

帰国の便までは1週間余り。

日にちがあるようだけど

帰国準備のためそんなにのんびりもしてられません。

滞在していたゲストハウスを拠点に

何かとせわしなく動き回っておりました。

 

 

 

大変だったのが

自転車輸送に必要な段ボールの調達。

大陸の端にあることで

物流もままならないウシュアイア。

サイクリストが皆欲しがるものだから

どのお店も余剰段ボールがないんです。

 

 

 

街の通りを歩き回ったり、

宿のお姉さんに電話で当たってもらうも

譲ってくれるお店は見つからず。

結局、事前情報で得ていた

3kmも街から外れた自転車屋さんから

¥1,000で譲ってもらう。…高い。

 

 

 

バラした自転車を

もらった段ボールに収納。

ラッピングまで自分でしておかないと

アルゼンチンでは空輸の際に

高額なラッピング代を取られる

という噂を聞いとります。

 

 

 

さらには自転車だけでなく

旅の荷物もまとめたりと、

整理整頓ができる人なら

一瞬でやってのける作業を

ダラダラと時間をかけて行います。

同室の方々、ごめんなさい。

 

 

 

 

 

 

作業の合間に唯一観光らしいことをしたのが

ウシュアイアが面するビーグル海峡を

遊覧するというボートツアー。

この日、3月31日が今シーズン最後の運航と聞いて

作業を放り投げて飛び込みで参加しました。

 

 

 

ツアーの見所は海にすむ野生動物達。

といっても結果的に見られたのは

岩山に群れるトドだけでしたが…。

それでも数百という個体が

所せましとそこら中に

横たわっている様子は圧巻。

 

 

 

摂氏0℃で冷たい風も吹き付ける

海の上で気持ちよさそうに

寝そべる姿をみると

自然の動物の力強さを感じます。

世界の果てなんだけど

こんなところにも無数の命が宿っている。

 

 

 

 

 

 

最終的に4日間の滞在となった宿での最後の夜。

みんなでBBQを食べるというので混ぜてもらいました。

 

「おい、コイツ自転車で世界一周したんだぜ!」

仲良くなった地元アルゼンチンのお父さんが

自分のことのように皆に触れ回ってくれるのが嬉しい。

 

 

 

ウシュアイア最後の夜を

最高の料理で締めくくることに。

雄大なパタゴニアで育った牛は

身が引き締まっており

北部のものより質が良いそうです。

これは本当に美味しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして遂に最果ての地を離れる時が。

ウシュアイア到着5日目の朝、

軽めの食事を済ませると予約しておいたタクシーで空港へ。

 

宿からほんの15分ほどで到着したかと思うと、

自転車など荷物の預け入れまでスムーズに完了。

晴れやかな気分で機内へと乗り込みます。

 

 

 

一気に日本に帰りたい気分だけど、

例えるならば

まだ北海道の知床にいるようなもの。

まずはアルゼンチンの中心部へ。

首都のブエノスアイレスまで

4時間あまりのフライトです。

 

 

 

 

 

 

 

 

雪も降り風も強かったけど、

飛行機はスムーズにブエノスアイレスに到着。

自転車などの荷物を受けとると空港の公式タクシーを手配し

宿泊場所へと向かいます。

 

 

 

空港から20分ほど乗車して

やって来たのはこちらのアパート。

旅における最後の滞在地となる

ブエノスアイレスでは

宿ではなく人のお家に

お世話になることに。

 

 

 

家の主は“フリアンさん”。

チリのアウストラル街道で2日間ほど

一緒に走ったサイクリスト仲間です。

彼も1年間に及ぶ南米大陸の旅を終え

ブエノスアイレスのお家に戻ったばかり。

別れてからも連絡を取り合っていたのです。

 

 

 

 

 

 

帰国便で南米を発つまではあと4日。

フリアンさんのアパートを拠点に

大陸を代表する大都市・ブエノスアイレスの

観光へと繰り出すことに。

 

 

 

スペインをはじめヨーロッパの

影響をとても色濃く表す建物。

碁盤目状に整った街並みも

西欧の都市を思い起こさせます。

“南米のパリ”と形容されることも

うなずけます。

 

 

 

観光客が多く訪れる街の中心には

大統領官邸「カサ・ロサダ」。

海外の官邸って観光地のど真ん中に

あることが多いけど

ただ賑やかなだけでなく

独特の緊張感もあるんですよね。

 

 

 

各国をイメージした庭園が

集まる一角には

“日本庭園”もありました。

興味本位で行ってみたけど

イメージを取ってつけたよな感じで

厳かな雰囲気が無かったな。

 

 

 

 

 

 

ブエノスアイレスの代表的な観光地になっているのが

こちらの「エル・アテネオ」。

 

“世界で二番目に美しい書店”と

称される本屋さんなのですが、

なんと百年近い歴史を持つ本物の劇場が

20年ほど前に本屋さんへと改修されたという場所。

 

 

 

観客席のバルコニーにも

ぎっしりと本が並んでおります。

ライトアップも劇用だからか

荘厳なビジュアルが印象的です。

でもなぜ“世界で二番目”なのか、

そこは謎でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

特に街歩きが楽しかったのは

イタリアからの移民が多く住んでいた地区「ラ・ボカ」。

ガイド付きの無料ウォーキングツアーに参加しました。

 

 

 

かつてはトタンなどを継ぎ接ぎした

掘っ立て小屋に

複数の家族が密集して暮らしたのだとか。

むさ苦しさを紛らわすためか、

カラフルに塗られた壁面が

現在ではこの地区の魅力でもあります。

 

 

 

音楽や絵など芸術も盛んなラ・ボカ。

旅で初めておみやげに絵を

買ってしまいました。

部屋に飾るのが楽しみ。

この画家のおじさん、過去に

日本のテレビ番組に取材されてましたよ。

 

 

 

さらにラ・ボカ散策で見落とせないのは

地区のはずれで大きな存在感を示す

青と黄色のスタジアム。

ひしめき合う建物の

合間を縫って歩いた先に

急に、どどんと現れます。

 

 

 

実は、ラ・ボカは南米を代表する

サッカークラブチーム

「ボカ・ジュニア―ス」の

本拠地なのです。

かのマラドーナがここでプレーした

と思えば、やはりすごい場所だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

限られた滞在期間のうちに要所だけは押さえておこうと

ちょこまか動き回ったブエノス・アイレス。

その中でも最高の思い出になったのは

大都市を歩き疲れた夜に訪れた

こちらのバー「ボリチェ・デ・ロベルト」。

 

 

 

130年の歴史を抱える

小さなバーの魅力は

地元のミュージシャンによって

奏でられる“タンゴ”。

ブエノスアイレスには欠かせない

伝統音楽です。

 

 

 

「タンゴに幸せな歌はない」

と言われるように

人生の悲哀を主題とした音楽ですが、

力強い歌声とギターからは

強烈なエネルギーが放たれています。

ものすごくエモーショナル。

 

 

 

 

滞在していたフリアンさん宅から徒歩5分と

“近いから”行ったのですが、

観光客向けではなく通なローカルの方々が集う

最高の音楽空間でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなブエノスアイレスの滞在で何より良かったのは

フリアンさんやお家にやって来る友達と時間を過ごせたこと。

特に何をしたわけでもないのですが

一緒にピザを食べたり、TVゲームをしたり。

 

 

 

一人で宿に泊まってると、

旅の終わりだからと

感傷に浸りすぎてしまいそう。

地元の皆さんと過ごすなかで

感じたのは、どこまで行ったって

何げない日常こそ世界の景色だってこと。

 

 

 

地球の裏側にあるこの街でも

日々の楽しみ方は変わりありません。

週末には皆集まってあれこれ話しながら

テレビを見たり、お酒を飲んだり。

色んな国でこんな光景を見てきたし

もちろん日本にもこんな日常が溢れている。

 

 

 

そんなことを考えていると

いよいよ日本の日常が

恋しくなってきました。

出発の朝、アパートの近くで

最後のコーヒーを飲み干したら

いよいよ日本に帰る時です。

 

 

 

 

 

 

カフェから戻ってしばらくしたら

フリアンさんが手配してくれたタクシーが迎えにきました。

 

思えば、前回の旅で南アフリカ・ケープタウンにてゴールを迎えた時も

地元のご家族が観光に連れていってくれたり空港まで送ってくれたりと

旅の終わりはいつも誰かが見送ってくれます。

 

僕はあまり積極的に人と関わる方じゃないけど

旅は素敵な出会いを最後まで与えてくれる。

 

そして、たくさんの人と出会っては別れてきたけど

これでいよいよ最後。

フリアンさん、そして旅で出会ったすべての人たち

本当にありがとう。

 

 

 

 

 

 

 

1時間足らずで郊外の国際空港へ。

ちなみにブエノスアイレスからは

ブラジル・サンパウロ(3時間)、

カナダ・モントリオール(10時間)

日本・成田(13時間)の経路で飛び、

合計26時間、待ち時間も含めると36時間もの

人生最長のロングフライトとなります。

 

 

 

機内やトランジットの待ち時間には

旅の日記を読み返し

アラスカから1日1日を振り返る。

これだけで何時間も時間が潰せて

自分が走ってきた道のりの長さを

改めて知ることが出来る。

 

 

 

やがて最後の経由地

カナダ・モントリオールを発つと

まっすぐ西の方向へ。

もうすぐ故郷に帰れる。

1年前の出発の時と似たような

ワクワクがこみ上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして4月9日午後16頃、

成田空港に到着。

1年振りに日本に帰ってまいりました!

 

預け荷物がモントリオールの空港に取り残されたままだけど

大きなトラブルも無く

無事に日本の土地を踏むことが出来ました。

(※後日自宅に送られてきました。)

 

 

 

 

 

 

 

 

ということで、

世界を巡る自転車の旅はこれで終了となります。

ユーラシア・アフリカ大陸を含めると

44,000km、37カ国の道のりを走ってきました。

 

準備段階やコロナ禍による中断を含めると

10年にも及ぶ夢の旅路。

2018年、上海を出発する前には想像もつかなかった

たくさんの景色をこの目で眺めてきました。

 

 

ただ大きな挑戦を達成したことで晴れやかな気分はあるものの、

まだ旅は続くような気がしていて

“終わった感覚”がしてないんです。

 

 

旅を計画し始めた頃から気になっていたこと。

それは“自転車で世界一周を旅した人は、その後どんな人生を送るんだろう”

という疑問。

 

まだまだこれからのことは不透明なことも多いです。

でも旅で培った経験、行動力さえあればなんだってできるはず。

新たに始まる旅の日々に期待しつつ、

“Cycling The Earth ~自転車世界一周の旅~”

はここで幕を下ろします。

 

ブログを読んでくださった皆さん

本当にありがとうございました。

 

 

 

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