2024.12.5 | ペルー
【233日目 12,651km】
アンデスの山々を越え、ナスカから2週間ほどかけて
ついにたどり着いたクスコ。
疲れがたまっているのも当然で、
朝ベッドから体を起こすと
両足太ももがピキーンとつりそうになってしまうほど。
ゆっくり休みたいところですが、
ペルーを訪れるほぼ全ての人がやってくるクスコでは
のんびりするばかりではいられません。
滞在中に行きたい場所がいくつかあります。
何といっても欠かせないのが
世界遺産にも登録される
かの有名な天空都市「マチュピチュ」。
ペルーに来ておいて
ここに行かないわけにはいきません。
移動手段確保ため、朝から旅行会社へ。
クスコから直線距離で
100km足らずの場所にある
秘境マチュピチュ。
当然山奥にあるのですが
現地への向かい方も大変で
ネットで調べても情報は様々。
普段は自由気ままな自転車移動ばかりの僕にとって
タイムスケジュールを考えながら適切な交通機関を選択する
という作業がどうにも億劫。
「もう、誰か代わりにやって」と言いたいけど
大人なので自分でやらなきゃいけません。
クスコから列車でズドンと直行すれば早いけど、当然これは高額。
安いのは、遠回りでバスで移動して最後は10km歩くコース。
悩んだ挙句、行きはバスで向かい、
帰りは贅沢に列車に乗ることにしました。
慣れない行動なので時間や日付を入念に確認して
無事に旅行会社でチケットをゲット。
行きのバスがあんなにも過酷なドライブになるとは思いもせずに…。
クスコ到着翌々日、マチュピチュに向け出発の日。
朝6時に指定の場所に向かうと乗り合いバスが待っていました。
ついにあのマチュピチュを拝めるのだと
ワクワクしながら遠足気分で乗り込みます。
バスの乗車は7時間程度。
最初のうちは何も問題なく
外の景色を気持ち良く眺めながら
車体に揺られておりました。
異変を感じたのは出発から2時間、
峠へ向かう上り坂の途中の事。
「あっ、ダメだ気分悪い」と
自分で気づいてからは一気に体調は悪化。
お腹からぐわっとせり上がるような吐き気に襲われたんです。
「ダメダメ、吐いちゃダメ」
一人格闘しながら、わき上がるものを抑え込みます。
たまたま後ろに座っていたメキシコ人の方がお医者さんで
袋を渡してくれたりと、色々気にかけてくれました。
遠足の時、クラスに一人はいる
残念で可哀そうな子になってしまいました。
やがて健闘むなしく、
堰を切ったように
リバースしてしまう僕。
悲しいのが、他に誰も
気分を悪くしてる人なんていない
ということ。
アンデスの青空の下を走るドライブの中、
BGMとして流れるペルーの伝統音楽に
「オロロロロ…。オェッ、オェッ、……オエェ…。」
という不快なコーラスを添えてしまいました。
結局、最後まで気分は優れず。
汗はびっしょり、お腹もぐるぐるして気持ちが悪い。
午後1時、停留所に着くなり
ベンチに横になって
しばらく休むことに。
気づけば眠りに落ち、
目が覚めると気分は回復して
降っていた雨も止みました。
気を取り直して、マチュピチュへと向かいます。
僕が選んだ最も安い「バス&徒歩ルート」。
マチュピチュの麓にある村まで
ここから10km歩いていかなければなりません。
歩いていくのは線路沿い。
この様子から日本人旅行者の間では
“スタンドバイミールート”
なんて呼ばれています。
僕はゲ〇を吐きまくったぶん
他の人より映画に忠実です。
途中、山稜を見上げると
マチュピチュが確認できました。
とても小さいですが
はるか高くの岩山の一画に
遺跡がちょこんと乗っかってます。
上から眺めるのが楽しみ。
3時間弱の道のりでは
日本人旅行者の方と
2人も出会いました。
互いの身の上を話しながら
歩いていくのが楽しい。
途中で列車にも追いかけられる。
やがて10kmを歩き、観光拠点の村
「アグア・カリエンテ」に到着。
この時点で夕方5時。
基本的にマチュピチュ観光は
2日以上かかってしまいます。
マチュピチュは一日にしてならず。
宿に向かう前に
マチュピチュの入場券を
ゲットしなければいけません。
世界有数の観光地とあって
ネット販売はすべて売り切れ、
現地で前日までに買う必要があります。
マチュピチュ観光って、実はかなり面倒くさいんです。
まず移動手段として、
クスコから列車で直行するのか。
一度途中の村までバスで向かってそこで列車に乗り換えるのか。
はたまたバスで近くまで行って最後ちょっと列車に乗るのか。
あるいは列車に乗らずに歩くのか。
やっと現地に着いたら
遺跡見学の中にも複数のルートがあって、
ルート1、ルート2、ルート3。
さらにルート1にもAとBがあって、ルート2にもAとBが…。
「はあぁ…、めんどくさ。早く自転車旅に戻りたい」と、
事前に調べる内にため息が漏れました。
ただお金さえ払えば
クスコの旅行会社がすべて手配してくれるんですけどね。
無事にチケットを購入し
予約していた宿に向かいました。
朝6時にクスコを出て、
この時点で夕方6時。
半日かけてやっと宿に到着。
車酔いもあって長い一日でした。
一夜明け、ついにマチュピチュ観光の日。
チケットには入場時間の指定があり
僕が買えたのは朝6時。
朝5時過ぎにバス乗り場に向かうと
すでにたくさんの人が並んでいます。
歩いて登ることもできるんですが
朝から1時間以上かけて
階段地獄を登る気になれず。
バスに乗って向かうことにしました。
ただ片道¥1,800と高額なので
帰りは歩きます。
小雨の降る中
6時を迎え、ついにご開門。
チケット管理もかなり厳格で
パスポートを提示して
本人確認を済ませなければいけません。
チケットの横流しは不可能。
入場ゲートから
ほんの少し歩けば
イメージしていた光景が目に入る。
写真やテレビでも幾度と見てきた
あの景色をついに
この目で見ることが出来る。
そして、姿を現してくれました「マチュピチュ」。
雨季ということもあり残念ながら快晴ではなく
空には雲が立ち込めていましたが、
周囲の山が雲を貫く様子も
まさに“空中都市”の呼び名通りの景色。
インカ帝国が1,500年前後に築いた
貴族の為の別荘地だとも言われております。
イギリスの研究家に発見されたのは
たったの100年前。
こんなにも大きな遺跡が
山の上に存在するなんて想像すらできない。
バスに乗車した麓の村からの
高さは400m。
太陽信仰をしていた
当時の人々は、
より高い場所を求め
この場所に街を作り上げました。
遺跡にはおよそ200の住居が
確認されていますが、
車輪を持たないインカの人々が
どのようにこれだけの石材を
運んで上がったのかは
今でも分からないそうです。
マヤ文明にもインカ文明にも共通するのが
“文字を持たない”という点。
そのおかげで解読できる情報も限られてしまう分
想像力も膨らみます。
もっと雨が降ると、遺跡の治水技術が
はっきりと確認できるのだとか。
熱帯雨林気候に属し
様々な動植物が確認される
マチュピチュ。
よく見ると
石の上に何かの動物の糞も
落ちていましたよ。
遺跡の周りは段々畑が囲みます。
頂上からかなり下まで続いたとされ
現在でもそのすべてが
発掘されてはいないのだとか。
高低差を利用して
色々な作物を収穫したようです。
淵に立つと急峻な山肌の果てに
渓谷の下を流れる川が見えます。
気候などの実生活的な面、
太陽信仰など宗教的な面。
何かの理由でこの場所を選んだろうけど
ただ眺めが良いからだったりして。
マチュピチュの観光を終えると
アグアカリエンテスの村にて
もう一泊。
そして、翌朝には駅に向かい
クスコへの帰路に着きます。
欧米の観光客の方がいっぱい。
道中辛い箇所もあったマチュピチュへの小旅行。
行きのバスとは大違いのこのゆったり感。
大きな窓の向こうに見えるアンデスの風景を楽しみながら
のんびり帰ることができました。