Cycling The Earth ~自転車世界一周の旅~

日記

さよなら、宝石の道

2025.01.15 | ボリビア

【272日目 14,438km】

 

 

「宝石の道」5日目。

現地の方や同じ宿に泊まっていた

ヨーロッパのツーリスト達にとって

元日というのはさほど重要ではないので、

こちらも年を越したという事実すら半分忘れたまま

1月1日の走行を開始します。

 

 

 

このあたりから

宝石の道も後半戦に突入。

路面状況も徐々にマシになる

と聞いていたけれど

まだまだそんな気配はありません。

ところどころ苦戦しながら何とか前へ。

 

 

 

出発から1時間ほどのところで

フランスからの旅行者

“マヌエルさん”に声を掛けられる。

自転車で砂漠を渡ることに

大いに感激し

賞賛してくださいました。

 

 

 

そしてお菓子も頂く。

一人ぼっちの旅路において

誰かが関心を向けてくれ

さらに応援してくれる

ということが

とても大きな励みになる。

 

 

 

この日は600mも

標高をあげていく行程。

ただでさえ砂地に苦戦しているのに

傾斜もつくとなると

当然しんどい。

必死で呼吸を整え進んでいく。

 

 

 

 

 

 

急斜面を登った先には何もないだだっ広い平原があり

そこには一瞬たりとも吹き止まない強烈な風が吹き荒れていました。

 

実は、これまで路面の砂ばかりに言及しておりますが

もう一つ「宝石の道」でサイクリストを悩ませるのは

昼を過ぎて一気に吹き始める“風”。

 

横から、前から吹き付けられれば

当然走行の邪魔にもなるし、

テントが立てられないせいで

野宿場所を選ぶのにも一苦労。

 

 

 

この時、風を防いでくれる

丘や大きな岩などどこにもなく

あてもないままとにかく

前へと進み続けました。

歩き続けるのも辛く

早くどこかに身を落ち着けたい…。

 

 

 

さらに誰もいない広大な砂漠で

「ゴオォー」と耳に流れ込む轟音を聞き続けると

不安な気持ちが煽られ、焦りも生じる。

日没は19時過ぎでまだ余裕はあるはずだ。と

自分の心を自分でなだめる。

 

 

 

すると夕方18時頃、

路肩に1mにも満たない

石垣が組んであるのを発見。

ここしかない、と身をかがめ

かろうじて風を避ける。

なんとかこれで夜を越せそう。

 

 

 

夜9時を過ぎて星が輝き始める頃に

暴風がパタッと止んでしまうのも毎日のこと。

おかげで穏やかに眠れるのですが

もう少しのんびりと野営地を選ばせてもらいたい。

 

ちなみにこの平原の標高は実に4,885m。

おそらく旅において最高となるであろう

高所でのテント泊となりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

「宝石の道」6日目。

目を覚ますと昨日の夕方とは打って変わって

爽やかな朝日と透き通る青空。

 

この数十cmの石垣のおかげで

無事夜を過ごすことが出来ました。

これを組んでくれたどなたか、本当にありがとう。

 

 

 

この日も午後の風に悩まされる前に

目的地に近づいておきたいと、

荷物をまとめると

円滑に出発します。

砂が薄くて

安定してぺダルを漕げる。

 

 

 

出発から5kmほどのところで

間欠泉を発見。

火山活動も活発なようで

立ち込める硫黄のニオイ。

このニオイをかぐと

“アレ”が恋しくなる。

 

 

 

 

 

さらに数百m進んだところで

前日から登り始めた坂の峠に到達。

その高さは4,911m!

昨夜が最高地点のテント泊となったように、

ここも自転車走行における最高到達点となります。

 

ちなみにペルー後半からこの一か月程度

ずっと4,000m付近に滞在しているので、

高山病の症状はほとんどありません。

おそらく人生で最も心肺機能が強化されている状態です。

 

 

 

峠を過ぎると

一気に下り始めます。

所々ひどいガレ場もあって

手こずりつつも、

今日も目的地である

チャルビリ湖が見えてきました。

 

 

 

やがてたどり着いた湖の畔に沿って

走り続けると、

南端に近づいたところで

観光客が集まる一帯が。

そう、ここには

“アレ”があるんです。

 

 

 

 

 

午後3時、ランクルに乗ったツーリスト達が

去っていったのを見計らって

“アレ”を独り占め。

 

「宝石の道」終盤のご褒美として楽しみにしてたんです。

温度は39℃くらいでしょうか、

熱すぎないからこそいつまでも浸かっていられる。

 

 

 

そのまま湖の脇に立つ

レストランに許可をもらい、

裏手にテントを張らせてもらう。

“アレ”に浸かった後って

何もやる気が起きない

幸せなダルさがありますよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

「宝石の道」7日目。

砂に、風に、あらゆる砂漠の環境に苦しんできた

道のりもあとわずか。

 

おかげで大きなトラブルも無く、ここまで来れば

予定通りの日数で走り終えることが出来そう。

 

 

 

出口に近いこともあってか

ランクルの数がすごく多い。

そして、彼らが走り去った後に

立ち上る砂煙が視界を覆い

砂塵を避けるため顔を背ける。

早く普通の道を走りたい。

 

 

 

植物の生えない

砂だらけの景色が広がる瞬間は

まるで他の惑星に降り立ったようだ、

と感じることもある。

毎日こんな景色だけど

これも贅沢な一瞬。

 

 

 

結局この日も

深砂に苦しめられ、決して

最後まで楽な道のりではないみたい。

早く町に着いて

宿で王様の様に

だらりとくつろぎたい。

 

 

 

そして夕方4時過ぎ、

最後の湖となる

「ブランカ湖」に到着。

広大なのはいいんだけれど

強風をかわして

テントを張れるかしら。

 

 

 

すると湖を見下ろす

小さな丘のそばに

石の積まれた廃屋を発見。

四方を囲まれ

風を防ぐのにピッタリ。

最後の夜も無事に過ごせそうです。

 

 

 

 

 

 

そしてこの日は大きな標石へと達することが出来ました。

 

ちょうど野営地を見つけ今日の走行距離を確認したところで

ユーラシア・アフリカを含む旅の総距離が

なんとピッタリ40,000km!

赤道の長さ、つまり地球一周に相当する距離を

この自転車旅で走ったことになります。

 

“自転車で世界一周”を掲げ

走り始めてから合計3年足らず。

ついにここまでやってくることが出来ました。

ただ、今回の旅のゴールはアルゼンチンの南端。

もう少しだけ頑張って進んでいこうと思います。

 

しかし、今日か明日のどこかで、とは思っていたものの

まさか走り終えてちょうどのタイミングになるとは…。

 

 

 

 

 

 

 

「宝石の道」8日目。

テントを片付けいざ自転車を押し始めると

昨日は気づかなかったけど

廃屋の周りには複数の自転車のタイヤ痕が。

 

この数日で他の誰かもここで野営をしたのだろうと

想像を膨らませます。

ちなみに宝石の道突入以降、

別のサイクリストには出会っていません。

 

 

砂漠の出口までわずか数km。

「あぁ、この大自然の旅を

いつまでも味わっていたい」

なんて思いません。

早く町に着いて美味しいもの食べたい。

この時、頭を巡るのは何故か“巻き寿司”。

 

 

 

ただいつも以上に独りの時間が長く

厳しい砂漠の苦しさと向き合ったことに

どこか清々しさのようなものを

感じているのも事実。

果てしない砂漠、輝く星空は

確かに目に焼き付いています。

 

 

 

走り始めてから

10kmあまりのところで

食堂を発見。

朝食オートミールが物足りないので

ここでも

何か食べていくことに。

 

 

出てきたのはパスタ。

結局パスタばかりだった

宝石の道だけど、

生の玉ねぎとトマトが

乗っかっているだけでも

すごく嬉しい。

 

 

 

 

 

そして食堂からさらに5kmほど走った所で

国境のゲートが。

「宝石の道」の終わりは

そのままボリビア旅の終わりでもあります。

 

パスポートにスタンプだけ押されて

大げさでなく、本当に7秒くらいで出国処理完了。

 

 

 

国境の向こうに待っていたのは

実に8日ぶりとなる

アスファルト舗装の道。

あぁ、タイヤが埋まることなく

ちゃんと漕げるし

ちゃんと前にも進む。

 

 

 

 

 

ということで、

南米大陸最大級の難所「宝石の道」を走破しました!

 

自転車を押しまくったせいで

足の裏は水膨れ、そして犬のような臭い。

心も体も疲れ果ててはいますが、

最高標高や4万km達成を実現した記念すべき場所にもなり

充実感に溢れています。

 

先のことなど考えず

しばらく最初の街で“冬休み”を取ろうと思います。

 

 

 

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