2019.08.13
【441日目 18,089km】
西サハラも終盤に差し掛かり
一気に国境を目指して南へ下ってまいります。
滞在していたダフラは半島の先端に位置しており、
南下するためには
来た道を40kmも戻らなければなりません。
しかも向かい風。
この時
「一度走った道であれば
交通機関を使って戻っても良いものとする」
という都合のいいルールが制定されました。
ということで分岐点までヒッチハイク。
街の外れで待つこと30分ほど。
やっとつかまったのは
「¥2,000で乗っけてやる」という
おっちゃん。
少し高いけど、時間ももったいないし
お願いすることに。
車に自転車を積んだら
さっそく発車。
車に乗ってしまうと
風が吹ているかどうかすら
分かりません。
1時間足らずで
分岐点のガソリンスタンドに到着。
ここからサハラ縦断の本線に戻り
自力で漕いで進んでいきます。
やっぱりこの日も追い風。
勢いよく背中を押してくれる砂漠の風が
なんとも心地よい。
このままアフリカ最南端まで連れてってくれたら
どれだけいいだろう。
途中で水や食料を入手できない
いわゆる“無補給地帯”。
この日はサハラでの最長区間
150kmが待ち構えている予定。
風に身を任せ
少しでも早く行きたいところ。
ところが出発から100kmのところで
地図にはなかった
ガソリンスタンドを発見。
日陰を求めて休憩させてもらいました。
さらに走って、
この日は170km。
道の傍らにひっそりと建つ
食堂が見えてきました。
この時すでに18時ごろ。
店に入って少し話をすると
店主が、
「今日はもうここで寝ていくだろう」
前後数十kmに及んで
建物一つない砂漠のど真ん中。
これまで何人ものサイクリストを
泊めてきたというこの食堂。
旅人たちのオアシスです。
ダフラ出発2日目。
食堂を後にしてこの日も走ります。
西サハラの旅もぼちぼち終わり。
南に行くにつれ
どんどん交通量が減っています。
数十分に1台通るかどうか。
広大な砂漠の景色を独り占め。
80kmほど走ると昼頃には
小さな村に到着。
各町や村に着くたび
モロッコ警察や軍の検問が待ってます。
国境までもう少しという所で
この日は早めのチェックイン。
午後はのんびりとホテルで
休憩して過ごすことにします。
砂漠の数少ない宿ということで、
アフリカを縦断するバイカーに
ワゴンで世界を周る家族など
国籍や旅の手段も様々な
旅人と出会うことが出来ました。
(写真撮ってないけど…)
ダフラ出発3日目、
いよいよ国境越えの日です。
朝から風が強い。
これまでずっと平坦だったのに
この日はかなり起伏がありました。
砂漠にも色々な地形があるようです。
実質モロッコが支配する地域
“西サハラ”。
政治的には不安定らしいけど、
旅をしていて
特に物騒な様子はありませんでした。
というか人がほとんどいないし。
お昼前には国境到着。
出国しようとするトラックの行列が
見えてきました。
自転車も待たされるんだろうか。
越境の前に傍らにあった食堂で
腹ごしらえ。
西サハラ最後のタジンです。
肉はなんと“ラクダ”。
結構脂っこくて
豚肉に似ている印象です。
そしていよいよ西サハラを離れる時がやって来ました。
といってもここは領有権を主張する
モロッコの管理下なので、
モロッコの出国スタンプが押されます。
トラックの脇を抜けスイスイ行かせてもらいました。
パスポートチェックの後、
次なる国・モーリタニアのゲートまでは
3kmほど。
ここでもトラックの行列がすごかった。
この国境間のいわゆる“緩衝地帯”が
めちゃくちゃ。
アスファルトの道が途絶えた先は
深い砂の大地。
渋滞の理由はこれでした。
タイヤが砂に埋もれて進めないんです。
僕も自転車で大苦戦。
国家間を結ぶ大事な道がなんでこんなに
ぐだぐだなんだろう。
もはやこの世の終わりのような
荒涼とした大地が広がってます。
なんとか砂の上を押しきり
モーリタニア側の入国審査に到着。
事前申請の必要ないアライバルビザ(¥6,500)を
取得するとスムーズに入国。
モーリタニア旅の始まりです!
2019.08.10
【436日目 17,745km】
モロッコを抜け、
どこでもない国「西サハラ」に突入。
引き続き南下してまいります。
ラーユーンを発つと
あいかわらずの曇り空。
今はもう、こういう季節なんだろうな。
写真映えしないけど涼しいから良しとする。
サハラ走行直後に比べると
交通量が減ってきた気がします。
隣の町まで100km近く。
この地域は車で走ってても
疲れるような場所だろうな。
人のいない廃墟を見つけて
昼休憩。
このあたりから物凄い風が吹き始め
ものがどんどん飛ばされるので
おさえておくのに必死。
午後からも風は吹き止むことなく
強風にあおられ続けます。
そして、幸運なことに
常に追い風。
スピードに乗ってぐんぐん進む。
16時には110kmを走り切り
野宿を予定していた集落に到着。
でも風はまだまだ止みそうもないし、
日没は21時だし、
もうちょっとイケるかも。
とりあえず食堂でタジンを食べながら
考えることに。
このまま進むとすれば
隣の町は80km先。
「結構離れてるしどうしようか」と
沈思黙考…。
強く吹き続ける風の力を借りて
進み続けることにしました。
平坦なコンクリートを滑るように走った
この時の平均時速は28km/h!
(普段は大体18km/hくらい)
そして19時過ぎには
翌日着予定だった「ブーダー」に到着。
80kmを3時間余りで走るなんて
この旅始まって以来の
速さじゃないだろうか。
予想してたよりも割と大きな街。
自転車で旅してて、
予定より遅くなることはあっても
早まることなんて滅多にないので
すごく得した気分。
優雅なダブルの部屋が800円。
明け方ぐっと冷え込む西サハラ、
8月とはいえエアコン要らず。
寝るときは毛布必須。
色んな面で予想外が続いてます。
海沿いの町では肉よりも魚が
新鮮で美味しいともっぱらの評判。
海からあがったばかりであろう魚を
いただいてみることに。
いくつか食堂をのぞいたけど
ここの人たちどうやら
「油で揚げる」しか
知らないみたいです。
日本人なら手を変え品を変え
調理するのに…。
ブーダーの町で体を休めたら
再び海に沿って進んでいきます。
そしてこの日も朝から
非常に強い追い風。
止まると、立っているのがやっと
というような
ものすごい風を背中から受けて
スイスイ進んでいきました。
昼の時点で90km走破。
道ばたに食堂を発見。
予想以上の順調な走りに
笑顔ほくほくで休憩突入です。
そもそもこのあたり、建物が
存在していないと思ったので
用意していた食材でサンドウィッチ。
自炊って程じゃないけど、
自分でつくる美味しさって
ものがあります。
予定よりだいぶ早く進んでるので
食堂で昼寝させてもらうことに。
「あそこ気持ち良さそうだから
寝てもいい?」って
日本なら絶対
たずねることないだろうな。
午後からも追い風はやむ気配なし。
細かい砂が舞い上がる道を
颯爽と走っていきます。
ペダルは軽いし
このままどこまでも走れそう。
この日は175kmを走行。
上り坂もないし、
気が付けば
終日青空が広がったのも
サハラ突入後はじめてのこと。
家が数軒集まった集落に到着。
モロッコ警察の検問があり
「今日の夜どこで寝んの?」
と聞かれました。
「このあたりでキャンプしたいんだけど」
というと、
検問所のすぐ隣の
旧・食堂跡地で寝ていいとのこと。
なんとか風はしのげそうです。
寝るのにちょうど良さそうな
旧・キッチンを発見。
蚊も出ないし寝袋あれば十分なので
テントも張りません。
シャウエンの絨毯がいろんな場所で
役に立つ。
ラーユーン出発3日目。
サハラを走り始めて
500km以上移動してきましたが
道路状況は非常に良いです。
時にはラクダの群れに遭遇。
耳にタグがしてあるので
野放し状態の半野生家畜。
触りたいけど、臆病なのか
近づくと逃げていく彼ら。
この日も順調に進み
昼には80km到達。
人のいないモスクを発見し、
食事休憩を取ります。
久々のインスタントヌードル。
イスラム圏でも袋めん売ってました。
「出前一丁」や「チャルメラ」の
足元にも及ばない味だけれど。
この日の午前中弱まっていた追い風も
午後からはいつもの調子を
取り戻してくれました。
もはや追い風ありきで
走行計画立ててるので
吹いてくれなきゃ困るんです。
そしてこの日も180kmを走って
「ダフラ」の街に到着。
荘厳なゲートに掲げられているのは
モロッコ大統領像。
西サハラのバカンス地であるらしく
ゆったりとした海辺の町は
休暇を楽しむモロッコの人々で
賑わっているようでした。
ラーユーンから走った距離およそ550km。
本来6日間を予定していた行程を
3日で走り切ってしまいました。
決して自分の努力ではなく
海から大陸に吹きつける強い追い風のおかげ。
自然の恩恵に感謝しつつ、
ダフラの街でしばし休みたいと思います。
2019.08.4
【431日目 17,202km】
いよいよ始まったサハラ砂漠の旅。
これからしばらくは、
海に沿ってひたすら南を目指す日々です。
タンタン出発直後、
空は曇天。
朝方はおそらく雨が降っていたよう。
気温が上がらず涼しいのは良いけど、
空が曇っていると
いまいち気分がスカッとしないです。
でも、日が照ると
ものすごい暑さになりそうなので
わがまま言うのはやめとこ。
この日の行程は
とにかく平坦。
どこまでも続く地平線を
追いかけながら
気持ちよく走りつづけました。
1日で110km走っておきながら
上り坂はたったの4か所。
数少ない坂のガードレールが
ものすごい角度で
ひん曲がってます。
15時ごろには「アクフェニル」の町に到着。
サハラは砂漠でありながらも、
少なくとも100km置きくらいには町が点在しています。
小さな町でも大概ホテルや食堂はあるので
これらを利用しつつ、
町から町へと毎日移動を繰り返すスタイルで走っていきます。
早速、道路沿いにホテルを発見。
値段や清潔度など
モロッコはどこも似たり寄ったりなので
複数軒比べることもなく
ふらっと入ったところにチェックイン。
ここは1泊で¥600。
だいたい¥500前後が相場なので
もはや値切ることすらしてません。
お湯も出るし、WiFiもつながる。
非常に助かります。
モロッコ各地の路上で見られるのがコチラ。
屋台で売られている緑の物体。
正体は“サボテンの実”。
日本ではなじみ無いですが、
メキシコやスペインなどでも
定番のフルーツ。
7月ごろから収穫されるそうで
今がまさに旬。
屋台のおっちゃんに
ナイフでペロンと皮を剥いてもらうと
鮮やかな黄色い果肉。
ビタミン豊富で体にとても良いそう。
触感は違うけど、ほんのりした甘さが
サツマイモみたいで美味しいです。
タンタン出発2日目。
この日は曇りどころかほとんど霧。
すぐ右手が海なこともあり、
砂漠なのに湿気がすごいです。
しばらく進むと、
サラサラの砂が道路にまで
押し寄せていました。
これがもっと乾燥した日なら
砂埃すごいんだろうな。
この時期、風は北から南に吹くので
概ね追い風を受けるのですが
この時は突発的な向かい風。
坂を上るように
必死にペダルを踏みしめました。
出発から60km地点で
この日に初めて見た建物が
このガソリンスタンド。
ちょうど昼頃なので
休憩していくことに。
ただ南に下りてきて
タジンの質が下がってきたように
感じます。
美味しい食材が
手に入らないからなのか。
午後からもうひと踏ん張り。
起伏はほとんどなく
1日中、平坦な道を走るので
5時間ほどで100km
走り切れちゃいます。
そして15時ごろには
「タルファヤ」の町に到着。
腹をくくって
灼熱のサハラに来たつもりですが、
あまり汗をかいていません。
日本の方が絶対に暑いだろうな…。
この日もホテルを見つけてチェックイン。
過酷な砂漠の旅のつもりが
毎日ふかふかベッドで
寝させてもらってます。
ああ、気持ち良い。
1ヵ月ほど走行してきたモロッコですが、
“正式なモロッコ”としてはこの日が最終日。
というのも、これから向かう
西サハラと呼ばれる地域(黄色部分)は
1970年代に領主であったスペインの手を離れて以来、
“モロッコ”と
“サハラ・アラブ民主共和国”(国連未承認国家)が
互いに領有権を主張しているとても微妙な場所。
日本や欧米諸国はどちらの言い分も認めておらず
国連からも「非自治地域」として指定され、
“どこの国でもない世界地図上の空白”という
よく分からない所なんです。
よく分からないので
そのままこっそり進んでみることにします。
タンタン出発3日目。
この日もやっぱり曇り。
サハラ砂漠に来てから、太陽見てないです。
道路脇に工事中の“新・道路”を発見。
「もう完成しとるじゃん」ってことで
勝手に侵入してしまいます。
コンクリートは非常に滑らかで
とても走りやすい良い道路でした。
ありがとうございました。
さらにこの日は
心地良い追い風が
終始背中を押し続けてくれました。
風って嫌な時は最悪だけど、
良い時はホントに良いヤツです。
ありがとうございました。
そして気がつくと「西サハラ」に
該当する地域に入っていました。
検問もないし、ゲートもないし
本当に何もない。
モロッコはやはりしっかり
国旗でアピールしています。
小さな食堂でお昼休み。
ただ卵を潰して焼いただけのものを
“オムレツ”と呼ぶのは
やめてほしいんですけど…。
国連も認めないと思うんですけど…。
午後からも引き続き
良い風に乗りつづけることが出来ました。
暑くないし、風は吹いてくれるし
サハラって本当に良い所です。
そして100kmほど走ったこの日、
西サハラ地域最大の都市「ラーユーン」に到着。
サハラの真ん中に
20万もの人口を抱える都市が
あるんです。
世界は知らない場所だらけ。
複雑な状況に揺れる西サハラですが
実効支配しているのはモロッコ。
暮らしてる人、言語、通貨など
これまでのモロッコとなんら
変わりはありません。
赤い国旗がなびいてます。
連日100km以上漕ぐことなんて
いつ振りだろうか。
スイスイ進んでいく気持ち良さを
感じながらも
疲労は着実に溜まっています。
ベッドに倒れ込んでひと休み。