師走にシワス
【212日目 8,190km】
エルジンジャンを出て
次の街を目指します。
予定ではここから3日間かけて
1,000mの峠を2つ超えるという
トルコ入国以来の過酷な道のりを行くつもりでした。
…つもりでした。
ところが、
出発から30kmほどのところで
上り坂を一生懸命漕いでいたときのこと。
後ろからやってきた大きなトラックの運転手が
クラクションを鳴らして合図をしてきました。
「ここからは坂がキツいし、ひどい寒さだ。」
それでも道路に雪はないし
何とか自力で進む意思を伝えると、
「やめとけ、街まで乗っけてやる。」
地元の人がやめろって言ってるし
人の優しさを無下にできないし
ということで、迷いながらも
お言葉に甘えることにしました。
厳冬の険しい道をゆけるのも
こうやって
いざという時の助けがあるからだと
感謝を抱きつつ車体に揺られました。
しかし、
トラックの助手席に座りながら
雪景色を眺めていると
胸の中にはモヤモヤが。
確かに寒そうだし、坂も急だけど
「これなら自転車でイケてた」とぼんやり思ったんです。
ここに来るまでに
2,000mの峠も越えてきたし、
氷点下のアイスバーンの道も走ってきたし。
現地の人の言うことをきくのも大事だけど、
それと同じくらい
自分を信じて突き進むのも大事だと強く実感しました。
ただ、
言葉も通じない見ず知らずの旅人を
放っておけない暖かい人情が
トルコの人々の心に
宿っているのを感じました。
“アルメットさん”本当にありがとう!
そんなことを考えつつ
気づけば泊まるつもりだった村を過ぎ
トラックはどんどん目的の街に近づきました。
3日間の行程をすっ飛ばしてやって来たのは
トルコ東部最大級の都市“シワス”。
「師走」に「シワス」です、ダジャレなんです。
街の中央通りには
ブティックや高級レストランも立ち並び
これまでのトルコの都市と比べても
かなり発展していて賑やかです。
近代的な建物がたち
自動車が行きかう景色の真ん中に
堂々たるモスクがそびえ立つのも
シワスの特徴。
“これぞトルコ”といった街並みです。
さらにこのシワスから100kmあまり離れた街に
「ディヴリーイの大モスクと病院」という、
イスラム建築の最高峰ともいわれ
世界遺産にも登録されている
800年前の遺跡があるんです。
ホテルのスタッフや街中で会った人も
「あの建築は素晴らしい」「ぜひ見ておくべきだ」
と口を揃えて絶賛するほど。
英語の通じない人が多いなか
何とか行き方を調べ、
2時間半バスに乗ってたどり着きました!
はい、改修工事中。
立ち入り禁止。
「日本からはるばる来たんだぞ!」
と、無理を言って
敷地内には入れてもらいましたが
鉄骨と屋根に覆われて
ほとんどなにも見えません。
帰り際に振り向いてみましたが
やはり何も見えません。
改修が終わるのは2年後だそう。
というか、バスの運ちゃんか誰かが
「今は見れないよ」って
教えてくれてもいいと思うんですけど。
そんなこんなで数日間過ごしているシワス。
あっという間に過ぎてしまう師走。
今年もあと少しですな。