さよなら、イラン
【173日目 7,305km】
イラン最後の都市タブリーズでしばらく休むこと3日間。
いざ北の隣国「アルメニア」に向かいます。
気合を入れて走りだしたその日ですが、ちょっと予想外のことが。
目指すはタブリーズから真北の方角に位置する
イラン-アルメニア国境だったのですが、
直進の最短ルートを行くと途中の山を1,000m登る必要があります。
これまでの経験からも十分越えられるはずと意気込み、
朝早く出発しました。
そして徐々に急になっていく勾配を登っていくこと
3時間、距離にして30kmほど。
小さな村の商店に寄るとそこには井戸端会議をする地元のおじさんたち。
これから山を越えてアルメニアに入国することを伝えると、
「無理だ、雪が積もって車でも行けないぞ。戻れ!」
なんとも浅はかでした。
イラン北部の気候と標高を考えれば、雪は想定できたはず。
タブリーズまで戻るというトラックの運ちゃんに乗せてもらい
その日はまた宿に戻って、ベッドでぬくぬくと休みました。
これから気候も地形も過酷になっていくため、
地元の人からの情報収集は非常に重要です。
今回の出来事はそれを学ぶための必要な失敗だったのです。
(絶対必要だったんです!)
気を取り直して翌日、山を迂回する国道ルートを走りはじめました。
若干の起伏はあるものの道も整備されていてなんとも走りやすい。
急がば回れとはよく言ったもの。
イラン北の果ての町「ジョルファ」で1晩休み、
国境である川に沿って走ります。
川の右手はイラン、左手は未承認国家「ナゴルノ・カラバフ」。
隣り合うアルメニアとアゼルバイジャンがその領土権を争っている地域です。
平坦だろうという予想に反してアップダウンの激しい川沿いを
東に走ることおよそ60km。
ついにイラン-アルメニア国境に到着しました!
両国を分ける川に架かる橋の向こう側に渡れば次の国アルメニア。
いよいよ1カ月以上に及ぶイランの旅は終わりです。
ユーラシア大陸の中央に位置する中東の大国イラン。
陽気で友好的で、
ふらっと訪れただけの旅人を優しく暖かく迎え入れてくれる人たち。
常にのんびりで、時にいい加減な彼らは
「厳格な生活習慣を持った排他的な国」という
ネガティブなイメージを拭ってくれました。
半ばその優しさにすがる様に旅をしてしまっていましたが、
それほどにこの国の魅力は「人そのもの」だったなぁと感じます。
寂しさを噛みしめつつ、これからも色んな人に出会っていかなければ。
ということで
さよなら、イラン。