ミニ・グランドキャニオン
【57日目 2,596km】
無事カザフスタンに入国して、いよいよ2カ国目の走行開始です。
といってもすぐに南下して次の“キルギス”に向かうので、
とりあえずの滞在期間は1週間ほど。
キルギスを走った後で再入国する予定です。
中国の終盤戦が過酷だったことを言い訳に
カザフスタンに対する予習を全くしていませんでした。
通貨は“T(テンゲ)”。こんにちわは“サラム”。
基本情報をその場その場で調べつつ勢い任せに走りはじめます!
国境の町“ジャルケント”を抜けると建物の少ない荒野が広がります。
ロシア語に代表される「キリル文字」で書かれた看板を見れば、
間違いなくここは東アジアとは違う文化圏。
大地と空のほかに何も見えない道をひたすら数十km進んでいきます。
時折あらわれる道端の露店で
トラックのドライバーたちにケバブをごちそうになったり、
スイカ売りのおっちゃんにスイカを丸ごともらったり。
透明な瞳がどことなく冷淡なイメージを与えるカザフスタンの人々ですが、
訪れた外国人をやさしく受け入れてくれる心を感じました。
そして、90kmほど進んだ“チュンジャ”という小さな町で
中国で分かれたステファンさんと再合流することに。
二人ともこの先の目的地でそれぞれキャンプをする予定だったんですが、
事前に現地の人から、
「この地域ではオオカミが出るので一人でキャンプをしないように!」
との警告を受けていました。
オオカミなんて日本人には馴染みがないですが
ロシアや周辺国では死亡例も数多く出ているほど危険な動物です。
ということで、連絡を取って落ち合ったホテルでこの日は宿泊。
翌日、チュンジャの町からさらに荒野のど真ん中に突き進んでいきます。
緑も徐々に減っていき、ほとんど砂漠地帯のなか
オフロードに苦戦しながらも走り続けました。
そして、周囲数十kmに渡って何もない広大な荒野の中に
突如現れたのがこの日の目的地「チャリンキャニオン」。
チャリン川が削りだした渓谷は
“カザフスタンのグランドキャニオン”の異名を持ちます。
本家アメリカのグランドキャニオンのスケールには及びませんが
日に照らされた赤土の崖は圧巻の風景です。
カザフスタンからはもちろん、
アメリカやヨーロッパなどからも観光客が来ていました。
ちなみに1日目に上海で出会って以来、日本人には1人も会ってないです…。
別にいいんですけどね。…寂しいワケじゃないですし。
「お寿司食べたいね」とか、「W杯良かったね」とか話せたらいいですけども。
まあ、別にいいんですけどね…。
ぐるっと回ってくれば谷底に降りられるようになっています。
底から崖を見上げるのもなかなか素晴らしい景色。
谷底を流れるチャリン川のほとりには簡単なアウトドア設備が整っており
この日はここで1泊。
オオカミも現れることなく、
大自然に囲まれた静かな夜を過ごしました。