猛吹雪
【231日目 8,638km】
カッパドキアでのんびりと年末年始の休みを過ごした後は、
再び自転車にまたがり西へと向かいます。
いよいよ2019年の走り始めと意気込んだこの日は
朝から強い風と雨。
出発を遅らせて
天気予報を確認しつつ空模様をうかがっても、
これから数日間天気は安定しないようなので
腹をくくって小雨のなかいよいよ出発しました。
道は決して過酷ではないものの
強い風のせいで
思うようにペダルを漕げません。
さらに時折強まる雨のため
休みを取りつつ
ゆっくり進みました。
予定の半分も走れなかったこの日は
「ハシベクタシュ」という
小さな田舎町で一泊。
通りを歩いても
誰一人すれ違わない淋しい町でした。
明くる日も曇天の下を走り始めます。
寒いし、気持ちのいい天気ではないですが
雪が降ってないのが救い。
走り始めてわずか3kmのところで
サドルに違和感を覚え、
自転車を確認してみると
およそ4カ月ぶりのパンク。
脇に建つ民家の軒下で
ささっと修理させてもらいました。
前日に到着予定だった
「クルシェヒル」に着きここで一泊。
トルコの田舎では1,000円前後で
割に良いホテルに泊まれるから
助かってます。
大変だったのが
カッパドキアを出発してから3日目のこと。
走り始めにパラパラと降っていた雨は
気がつくと雪に変わっていました。
この日走行予定の100kmをこなすために
急がねばとペダルを踏みしめますが
50kmを走った昼前ごろに状況は悪化。
猛吹雪に見舞われ、視界はほとんど奪われました。
みるみるうちに雪は積もっていき、
さすがに走行不可能と判断して
自転車を押しながら
助けを求めてたどり着いたのは小さな村「ハミット」。
ひと気のない村の通りを歩くと
ある建物に中年の男たちが集まっており
「ここで休んでけ」と、
声を掛けてもらいました。
建物の中に足を踏み入れると、
何やら無数の大人たちが
テーブルを囲んでおり
かなり活気が溢れています。
そこにいる人たちは皆
麻雀のような遊びに興じており、
どのテーブルも満席。
いわゆる“雀荘”のような所で
順番待ちの人もいるほどの
大賑わいでした。
キョトンと立ち尽くしていると、
「これに着替えろ」と
雪でびしょ濡れになった服の替わりを
用意してくれたり
昼ごはんまで食べさせてくれたりと
まさに至れり尽くせり。
ギャンブルに没頭する男たちの
ダーティな遊び場で出会ったのは、
トルコの心優しき
ジェントルマンたちでした。
平日の昼間から
ずっと遊んでたけど…。
そんな雀荘(らしき場所)で出会ったのは
近くに住む“トールガさん”。
「今夜はウチで泊まっていいよ」と、
優しく迎え入れてくれました。
同居する
おじいちゃん、おばあちゃん
との夕食。
思えばトルコで
地元の方の手料理をご馳走になるのは
はじめてのこと。
真ん中に座るのが
“トールガさん”。
雪に埋もれた小さな村で
ゆっくり穏やかな時間を
過ごすことがました。
経験したことのないような猛吹雪の中
1人ぽつんとたたずみ
一時はどうなることかと思いましたが、
そんな状況だからこそ与えられる
素晴らしい出会いってものがあります。
寒さはまだまだ厳しいけれど、
なんとか進んでいけそうです。