やさしさが止まらない

投稿日:

【157日目 6,461km】

 

 

無事イラン延長分のビザも取得し、

再び自転車に乗って進んでいきます。

 

イラン各所への観光旅行とビザ待ちもあって、荷物を積んで走るのが2週間ぶり。

漕ぎはじめは重みを感じてフラフラしてしまいました。

 

首都テヘランの混雑は相変わらずで、

すぐ横すれすれを追い抜いていく自動車たち。

都市部を抜けるのに2時間ほど掛かったでしょうか。

 

 

しっかり走行感覚を取り戻したこの日の終わりに

たどり着いたのは道端のサービスエリア。

 

食事を済ませ、広々した駐車場の隅にこっそりテントを張ることに。

無事設置を済ませて売店に水を買いに行くと

レジのおじちゃんが、

「あそこで寝るつもりなのか? 寒いし、野良犬もいるぞ」

 

そのままおじちゃんとレストランの店員さんたちの緊急会議開始。

結果的に「ここで寝な」と通されたのはレストラン横にある

イスラム圏お馴染みの礼拝部屋。

こんな神聖な場所で寝てもいいのかと思いつつ、お言葉に甘えました。

 

イランに入国して以来、

移動中は毎日と言っていいくらい好意を受け取っています。

こんなに人に親切にしてもらうばかりでいいのかと疑問を抱きつつも、

イラン人のやさしさは止まりません。

 

 

翌日も快調に走りはじめたのですが、

いつかやらかすのではと思っていた失敗をついにしでかします。

 

お昼過ぎに少し休憩をしようと自転車を停め、

スマホのGPSで場所を確認したところ真っすぐ西に向かっていたつもりが

気がつけば矢印は下向き、南に下っていました。

 

大きな街に入り、抜け出すときに間違った方向に出てしまった様子。

正しい道路には後方30km戻る必要があります。

 

時間にして2時間分ほどの走行が水の泡になったと嘆きつつも

できるのは自分を責めることだけ。仕方なく来た道を引き返します。

 

 

再び2時間かけて合計60kmの無駄な寄り道を済ませ、

本来の道に戻ってすぐのこと。

1台のセダンがのろのろと並走してきました。

 

「ヘイ、フレンド! どこから来たんだい?」

声を掛けられても、遅れを取り戻すために

いちいち止まってる場合じゃないとさらっと流して先を急ぎました。

 

すると、わざわざ路肩に停めた車から降りてくるドライバー。

「オレは警察官なんだ。何か君の力になりたい」

胸には確かに警察のバッジもあり、すでに夕方だったことから

言われるがままついていくことにしました。

 

たどり着いた先は彼の家。

あがるなり果物やチャイをごちそうになりました。

 

「ここを家だと思ってくれていいよ。」

優しい言葉のまま、シャワーを借りたり、車で町を案内してもらったり。

とにかく至れり尽くせりでした。

 

食事までごちそうになり、すっかり家でくつろがせて頂きました。

やはり布団でぐっすり眠るのはテントよりも快適なもの。

 

居間でくつろぎながら次々聞かれるのは日本のことや、旅のこと。

見知らぬ外国人に興味津々で接してくれました。

 

 

現地に住む人の優しい表情を見ているときは、

“他人の親切を食いつぶしているだけでは?”という疑問も吹き飛んで、

“出会えて良かった”という感謝の気持ちが沸いてきます。

 

その時間、その場所にいたからこその出会いに気づかされるのは、

間違えた道にも意味があるということ。

 

心優しき警察官、バーバイーさん一家。

素敵なひと時をありがとうございました!