ゴールの地、ウシュアイア到着!

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【356日目 19,429km】

 

 

パタゴニアを吹き荒れる風に行く手を阻まれ

やむを得ずヒッチハイクをしてやってきた集落「セロ・ソンブレロ」。

 

車での移動中に渡った海はマゼラン海峡。

旅のステージは正真正銘の最終章「フエゴ島」へ。

 

 

 

滞在していたキャンプ場を出発すると

ここ数日続いている

何もないだだっ広い草原。

予報では弱いと言っていた

午前中の風も

漕ぎ始めると大きな障害に。

 

 

 

出発から1時間半も掛かって

走れたのはほんの10km。

バス停のような小屋を見つけ

しばし風をよけて休むことに。

ただ風は止むどころか

むしろ強まるばかり。

 

 

 

また通りすがるトラックに

載せてもらうのか…。

いやゴールまでたったの400km、

ここからは何が何でも

自走で進みたい。

最後まで走りぬきたい。

 

 

 

 

 

 

悩んだ挙げ句、けっきょく朝出発したばかりの

「セロ・ソンブレロ」の集落まで戻ることに。

逆方向となるので立ちはだかった風は追い風となり

あっという間に到着。

 

一度出発した場所に戻ってくるなんて今回の旅で初めてです。

すぐそこに迫ったゴールになかなか近づけない。

昨晩は無料のキャンプ場に滞在したけど、

時間を有効利用してパソコン作業に充てたいので

値段は高くてもネット環境のあるホテルへ。

 

 

 

実はすでに帰国便の航空券を

購入しているため、

いつまでも停滞するわけにいかない。

これから数日間の風向きを

入念にチェックし、

ゴールまでの計画を練る。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

予報では風向きが変わりむしろ背中を押してくれそう。

パタゴニアに広がるパンパの大草原、風が全てです。

 

 

 

停滞していたセロ・ソンブレロを

横目に眺めつつ、

いよいよ終幕の地へ

ペダルを漕ぎ始める。

無機質な建物が集まっただけの

侘しい雰囲気だったな。

 

 

 

強い風が吹かない代わりに

平原に深いもやがかかっています。

景色は似たような毎日だけど

気候は色んな表情を見せてくれる。

人がなかなか住み着かないのも

落ち着かない気象条件のせいだろうか。

 

 

 

あれだけ風に苦しんだ

ここ2日間が嘘のように

走りやすい道のりです。

起伏も無くどこまでも

原っぱが続くばかり。

進んでる気がしなくなるほどに。

 

 

 

 

 

 

本当に道中の景色に何の変化もないまま

110kmを走りきった夕方6時。

道路脇に

この日何度か見かけていた風よけのシェルターがあったので

ここで夜を越すことに。

 

 

 

現地の人からも

“何km地点にあるぞ”

と聞いてたので、あてにしてました。

サイクリストの為に設置されてるそうだけど

これが無かったらどこにテント張ろう、

というくらい辺りは何もない。

 

 

 

 

 

 

 

 

セロ・ソンブレロ出発2日目。

アルゼンチン入国以来

ほぼ毎朝拝むことが出来ている朝焼けが

1日の始まりを知らせます。

 

 

 

出発から25kmほどのところで

アルゼンチン側に再入国。

これまでにいくつも自転車で

国境を越えてきたけれど、

いよいよこれが最後の

国境越えとなります。

 

 

 

国境を越えてすぐのところに看板が。

ついにゴールの地・ウシュアイアまでの

距離が表示されました。

あと300km足らず、

どんな気持ちでその時を迎えるんだろう。

ドキドキしてきます。

 

 

 

永遠に続くのではと思うほど

限りなく続くパンパの草原。

でも間違いなく

距離は進んでいる。

漕いでも漕いでも道は続く。

そんな自転車の旅がもうすぐ終わる。

 

 

 

順調に100kmを進み

「リオ・グランデ」という街に

差し掛かった頃、視界の端に見えていた

大西洋が一気に近づきました。

吹き付ける風も南へ向かうほど

冷たくなってきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

リオ・グランデ付近で野宿のつもりが

気が付くと住宅地まで入り込んでいたので、

一応下調べをしておいたキャンプ場へ。

 

 

 

キャンプ場といっても

チリ以降よくある

自宅の庭にテント張ってください

というスタイル。

それでも温水シャワーがあって

風が避けられれば十分です。

 

 

 

他にもパタゴニア地方を走っている

サイクリストやバイカーがおりました。

皆さんヨーロッパからお越しです。

ここ2日寂しい時間が続いたので

人との交流が嬉しく

楽しい時間を過ごす。

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、リオグランデの街を出発。

ゴールまではおよそ200km。

あぁ、もうすぐそこだ…。

 

 

 

嬉しいことに今日も追い風。

ここまでくれば

もうヒッチハイクに頼ることなく

自分の力で走り切ることが出来そう。

ゆっくり眺めるほどの景色も無く

ただ前へと向け走る。

 

 

 

フエゴ島に入ってからは

かなり起伏の多い日。

なだらかで長い坂が多いかと思えば

周囲に木が増えてきました。

永遠に続くかと思えたパンパ地帯も

いよいよ終わりに差し掛かっている様。

 

 

 

110kmを走り切った夕方6時、

「トルウィン」という町に到着。

ゴール前最後の宿泊となる場所。

この町にはぜひ

寄っておきたいところが

あったんです。

 

 

 

 

 

 

それはこちらのパン屋さん「ラ・ウニオン」。

ガラス張りの綺麗なお店はとても評判で

特に世界をめぐるサイクリストの間でも有名なんです。

 

 

 

眩しいほどにライトアップされた

ショーケースに並ぶ

パンやスイーツ。

もはやヨーロッパ水準の

高級感あふれる店構えなのですが、

目的はパンだけではありません。

 

 

 

実は、このパン屋さん

向かいにある倉庫の地下で

旅するサイクリストを

無料で泊めさせてくれるんです。

数年前の火事での店舗焼失にもめげず

そのホスピタリティは健在。

 

 

 

美味しそうなパンも気になったので

夕食はお店で。

アルゼンチン名物

ミラネッサ(牛カツ)の

サンドウィッチはボリューム満点。

大きすぎて翌朝の朝食になりました。

 

 

 

寝室を案内してくれたりと

いろいろ気にかけてくれた

“ファブリシオくん”をはじめ

ラ・ウニオンのスタッフの皆さん

ありがとうございました!

これからもサイクリストをよろしく。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして迎えた翌朝、最後の走行日。

コーヒーを飲みながら毎日つけている旅の日記を読み返す。

その日の出来事を簡単にメモしてる程度だけど

目にした景色、出会った人がありありと脳裏によみがえる。

 

 

 

一緒に泊まっていた

地元アルゼンチンのアレックスさん。

「一緒に走りたいトコだけど

今日は一人で行きたいだろう」

気持ちを汲んでくれるのがありがたい。

思い出を振り返りつつ終わりへと向かいます。

 

 

 

 9時を少し過ぎたところで出発。

かなり南下してきていることもあって

気温は3℃。

手袋をして少し凍えながら

ペダルを漕ぎ始めます。

雪が降る前にゴールできそうで良かった。

 

 

 

昼前にはスカッと晴れて

気持ちの良い青空が広がりました。

それでも停まると寒く

ゆっくり休む気にはなれない。

まわりに山が増えたおかげで

風はそれほど強くありません。

 

 

 

荒涼とした大草原のまま

最後まで走り切るのかと思ったけど

気が付けばあたりは

綺麗に紅葉した木々に溢れてます。

針葉樹があまり見られないのが

アラスカとは違う。

 

 

 

 

 

 

お昼過ぎには上り坂に突入。

400mの峠で大したことは無いんだけど

寒さ対策で着込んでるので

じんわりと汗をかいてしまう。

 

 

 

1時間ほどで頂上に到達。

今日はのんびりかつしみじみ

漕げると思ってたけど

気付けば必死に漕いでました。

あとはここを下れば

もうじきゴールだ。

 

 

 

ゆるやかな起伏を越えつつ

周りの景色に目をやる。

雪を被った険しい山が増えました。

数千mの山々も越えてきたけど

このあたりはアンデスの端に

あたるそうです。

 

 

 

 

 

 

そして、ゴールまでの距離が10km足らずに迫ったところで

“ウシュアイア”と刻まれたモニュメントが現れました。

本当にここまで来たんだ、もう終わるんだ。

 

 

 

ここで声を掛けてくれたのが

地元アルゼンチンの旅行者の皆さん。

「アラスカから来たのか!?

おめでとう、本当にスゴイよ!」

褒められることで

ちょっとずつ実感が沸きます。

 

 

 

モニュメントを過ぎると

一気に景色が開けて

予想以上に発展している

ウシュアイアの街が一望できました。

ずっと目指してきた場所が

今、目の前にある。

 

 

 

“あぁ、もう終わる

走り続けた道がここで終わる”

嬉しいとも、悲しいとも表現できない

気持ちがグルグルと渦巻きながら

ゆっくりと街の中心部へと

近づいていきます。

 

 

 

そして、観光客の方々が行き交う一画に

ひっそりと木の看板が立っていました。

看板には「ウシュアイア」

という街の名の下に

はっきりとこう書かれています。

“フィン・デル・ムンド(世界の果て)”

 

 

 

 

 

 

遂にこの場所にたどり着きました、

南北アメリカ大陸を渡る自転車旅のゴール「ウシュアイア」!

 

356日間、19,429km。

1年前アラスカを出発した時には遠すぎて想像もしなかった場所に

無事到着することが出来ました!!

 

 

 

 

 

 

地図を見れば本当に先の先までやって来たのが分かります。

“到着しては、また出発して”

をずっと繰り返してきたので

正直まだ続きがあるように感じてしまいますが

確かにこれより南に目指す場所などありません。

 

旅で見てきたこと、感じたこと。

これらを自分の中で整理するには

しばらく時間がかかってしまいそうですが、

帰国の準備をしながら達成の余韻に浸りたいと思います。

 

ということで

“南北アメリカ大陸を巡る自転車の旅”

走破しました。