砂漠を渡る
【120日目 5,022km】
しばらくブハラでの滞在を楽しんでから、
ウズベキスタン最後の街“ヒヴァ”に向かって再びペダルを漕ぎだします。
ユーラシア大陸の中央に位置するウズベキスタンの領土ですが、
実はその多くを占めるのは砂漠。
なんと国土の80%ほどにも及ぶそうです。
山が少ないことからここまで自転車で進むことも容易でしたが、
ブハラからヒヴァの間には“キジルクム砂漠”という難関が待ち構えており、
400kmあまりの移動のうち約300kmは砂漠のなかを走ることとなります。
無事越えられるだろうかという不安の反面、少しワクワクもしつつ走りはじめました。
ブハラを離れ50kmほどすると家屋はほとんど無くなり、
乾いた砂の大地が広がりはじめました。
ただ砂漠といっても舗装された一本道が敷かれており、
かなり走行しやすくなっています。
向かう西のヒヴァが観光地ということもあって
10分に1台程度、車も通過するので
何かトラブルがあっても大丈夫だろうと安心して進みはじめました。
変わらぬ景色の中をひたすら走り続けるのですが、
実はこの砂漠まったく何も建物がないワケではないんです。
事前に走行計画を立てるため、Googleマップの衛星写真を拡大して見ていると…
砂のなかを突っ切る一筋の国道脇に集落らしきものが見えました!
「これが村ならば休めるはず!最悪、廃墟でもここでテントを張ろう」
と、この場所に目星を付けて期待しつつ走っていきます。
100km以上の距離を進み現地に辿り着くと、そこにはやはり村がありました。
周囲数十kmは何もない砂の中に突如現れた村。
500m四方ほどの土地に100軒にも満たない家が建っていました。
通りを散策していると、「コンニチワー」と日本語のあいさつで声を掛けられます。
声の主は家の前で作業をするお父さん。
家の床を固めるためワラと粘土を一生懸命こねています。
家の中を覗いてみると、床をペタペタと塗り固めるお母さん。
夫婦そろっての共同作業です。
聞くと、移り住むための家をつくっている最中だそうでした。
何もない砂漠のど真ん中にぽつんと佇む村でも、
新しい家が日々完成に近づいています。
テントを張れる場所がないか尋ねると、
「この家の前で寝ていいよ」とのことだったので、
人のいない建築中の家の前でありがたく寝床を確保させてもらいました。
一晩体を休めるとまた延々と続く砂漠の中を進んでいきました。
村と同じように、3~40kmおきに小さな食堂や休憩所のようなものが在り
そこで時おり身を休めます。
砂漠といえど9月も後半に差し掛かっていたからか、
気温は高くても28℃ほどにとどまり、猛暑というほどではありません。
キルギスでビザ待ちをして時期がズレ込んだことによる恩恵が
こんなところにあらわれます。
声を掛けてくれたり、手を振ってくれたりと
追い越していくドライバーたちに励まされながら漕いでいきました。
次の日の晩も、通りがかりの集落でしっかり休み
ブハラから進んだ距離が350km!
家や緑が見えはじめ、ついに砂漠が途切れたのが3日目の夕方近く、
無事に難所を渡り切ることができました。
道路わきのモーテルのベッドに倒れ込んで爆睡です。
砂漠の食堂で食べたウズベキスタン代表料理“シャシュリク”。
要は、牛や羊などの肉を串焼きにしたシンプルな料理ですが、
疲れた身体に肉の旨味がじわっと沁みわたるんです。
これは旨かったー!