2024.07.27
【102日目 6,253km】

赤土の大地が織りなす絶景・アーチーズを堪能すると
モアブを後にして、次なる絶景を目指して進みます。
日中の酷暑を考慮して
「一人サマータイム」を導入しました。
朝5時には起きて7時までには走行開始。
涼しい午前中の内に
少しでも距離を稼ぐという作戦です。
夏には夏の走り方がある。

モアブを離れると
どこまでも砂の平地が
広がっていました。
観光案内の掲示板が
貴重な日陰をつくっており
お昼の休憩をとる。
暑さで食欲もわかないので
昼も夜もトルティーヤばっかり。
アボカド、玉ねぎ、ベーコンを刻んで
ソースをかけてクルクル。
巻き方がどんどん上手くなっていく。
メキシコに行く頃には飽きてないだろうか。
15時頃には目的の
「モンティセロ」の町に到着。
途中でにわか雨も降って
意外と涼しく、まだ走れそうだけど
無理をしない。
暑い時期は刻んで刻んで進みます。
商店にはドリンクバーのマシンがあって
自分で注いでレジに持っていくのですが
「ジュースだけ?なら払わなくていいよ」
とタダにしてもらうのは3回目。
サービス精神というより少額清算が
面倒くさいからではなかろうか、良い国…。
スーパーで割引のものを買って
夕食にする。
自炊を楽しもうという気持ちが
ひとかけらも無くなるユタの夏。
冷やしうどんをつるっと流し込んで
ちゃちゃっと済ませたいくらいです。
町はずれに湖を発見。
ほとりには大きめの東屋もあり
ここで寝させてもらうことに。
ユタ州に入って野宿場所の確保が
若干容易になったように感じます。
人気もないしゆっくり眠りに落ちます。

モアブ出発2日目。
湖の向こうから登る朝日を眺めつつパッキング。
空気がひんやりして気持ちいい5時起き生活。
悪くないです。
ここ数日続いていた熱波が去り
だいぶ涼しくなっているのを感じます。
適度に休憩を挟めば
熱中症の心配もなさそう。
一時はどうなるかと思った暑さも
なんとか乗り越えられそうな予感。

70kmほど走った所で
「ブラフ」という集落に到着。
このあたりからゴツゴツとした岩が
周囲に沢山見られるようになりました。
本当に不思議な形をしたものが
あちこちにあります。
町にはクーラーの効いた
ヴィジターセンターもありました。
ランチ休憩も兼ね暑い昼過ぎの時間帯を
ここでやり過ごさせてもらうことに。
「えっアラスカから!?」と
10回くらい聞かれる。
雲が厚くなったタイミングを見計らい
再び走り出す。
ブラフを離れるといよいよ
カラッカラに乾いた荒野が
広がり始めました。
そして緩やかな上り坂。
日が傾くと、あっという間に
表面の色が変わるのが
赤土の岩山の面白いところ。
影が差し込み立体感の出た
山肌を眺めつつ、下り坂を滑っていく。
思い描いたアメリカならではの景色。
“メキシカンハット”という集落に到着。
生鮮のほとんど置いてない小さな商店で
買い物をして、お菓子のような夕食に。
ドーナツばっかり食べてたら
すぐにアメリカ人のようにコロッコロの
体型になるんだろうな…。

集落の横を流れる川辺に
テントを張る。
テントなしで地べたでも
寝られる気温だけど
水辺だけに蚊がすごいんです。
日が暮れると数が増える。

モアブ出発3日目。
いよいよ目的としていた絶景まではわずか40km。
朝から雲一つない快晴に気分も高まります。

走り始めて10kmあまりの所。
岩山に向かってまっすぐ進む印象的な道は
映画のワンシーンでも知られる
「フォレストガンプ・ポイント」。
アメリカで走っておきたかった
道の一つです。
ただの道路なのですが
名所ということもあって、
写真を撮りたい人が順番待ち。
僕も旅情ある一枚を、と思ったけど
どうやら三脚立ててのんびりやってる
余裕もなさそうなのでやめとくことに。

ここで声を掛けてくれたご夫婦が。
アラスカから走ってきたことに
とても感心してくださり、
「ランチでも食べて」と
御心付($20)を頂いてしまいました。
大切に使わせて頂きます。

さらに15kmほど進んだところで
ついに目的の場所「モニュメントバレー」に着きました。
アメリカでも特に楽しみにしていた場所です。

公園内は自転車禁止の為
観光ツアーに申し込み(2万!)。
同じトラックに乗り合わせたのは
なんと日本からお越しのご夫婦。
よく考えればアメリカ入国以来
日本の方は初めてです。
お二人の旅行を邪魔して申し訳なさを感じつつも
久しぶりに交わす日本語での会話も嬉しく、
しばらくご一緒させてもらいました。
“モニュメント(記念碑)”のように
雨と風に浸食された岩山は
「ビュート」と呼ばれています。
こないだ見に行ったアーチーズとは
また違う形状につくり出された
自然の芸術。
西部劇のような風景ですが
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」
「イージー・ライダー」
「インディ・ジョーンズ」など
数多くの名作映画の撮影でも
使われてきています。

これまで世界各地の自然遺産を
訪ねてきましたが、
アメリカ南西部に広がる
赤土の台地が織りなす沢山の絶景は
特に深く心に刺さります。
波長が合うというか。
ネイティブアメリカンたちの信仰の対象
ともなっているこの地域の自然遺産ですが、
神とか宇宙といった大きな存在と
結び付けてしまうのもうなづけるほど
目の前に立った時の力強さは
すさまじいものがあります。
お昼に頂いたお金でディナーに
ハンバーガーを(¥3,200)。
振り返ると、幾度かマクドナルドで
ちょっとしたもの食べたくらいで
アメリカではレストランは
初めてかもしれない…。

朝日を迎えるモニュメントバレーは
さらに神々しい。
これを見るためには公園内のキャンプ場に
泊まらなくてはいけないのですが、
テントを張るだけでなんと¥9,000。
お昼の観光ツアーも含めると¥30,000。
今アメリカを旅行するとはこういうことでございます。
まぁ、良いものは見れたんだけど。
はぁ…。

2024.07.23
【98日目 6,001km】

ユタ州最初の街・ヴァーナルでひと休み。
こちらの写真は、お世話になっていたジャレドさんと
当初泊まらせてもらう予定だったカルヴィンさん。
出発の朝に郊外まで一緒に走り、お見送りをしてくれました。
南に下って次に目指すのは
「モアブ」という町。
ユタ州を代表する観光地の
拠点となる場所です。
ヴァーナルからは4日はかかる行程。
どんな景色が広がってるでしょう。
ジャレドさんから忠告も受けており
「ここからは一気に暑くなる。
ルート変更も考えておいた方がいい」
とのこと。
本格的な荒野が広がるようで
覚悟を決めて進んでいく。
70kmばかり走ったこの日。
“ダイナソー”という小さな町に着きました。
町役場には名の通り恐竜のモニュメント。
様々な種類の恐竜の化石が
この地域で発見されているそうです。
子供たちが喜びそうな町。
容赦のない暑さに対処するために
ここからは1日の走行距離を
短くしていきます。
日々の疲労をちょっとでも軽くして
ダウンしないように、ゆっくりでも
確実に前に進んでいきたい。

ヴァーナル出発2日目。
ここから「ダグラス・パス」という
2,500mの峠を目指していきます。

緩やかだけども
地味に高度をあげていく。
ユタ州に入ってから2,000m越えの
峠がかなり続いているので
上り坂には慣れているものの
暑さのせいでやっぱり辛い。
あたりに集落はないものの
こうした東屋が所々にあるので
日陰を求めて
頻繁に休憩をはさみます。
背の高い木がないので
走行中は影がまったくありません。

スタートのダイナソーから
700mほど高度を上げ
峠の手前の道端にて野宿。
標高が2,000m近いこともあり
日が暮れると一気に気温が下がります。
涼しいので夜はよく寝られる。
暑いと料理をする気も失せてしまう。
これまでストーブで
クスクスを調理してたけど、
適当に食材をトルティーヤで巻いて
お腹を満たす。
栄養だけはとっておかねば。

ヴァーナル出発3日目。
前日に登り切れなかった峠を上り始める。
頂上付近は傾斜が急なこともあり
ほとんどペダルを漕がず押していきます。
1時間ほど登ったところで
ダグラス・パスの頂上に到達しました。
2,500mの峠から見上げる
青空はとても爽快。
まだ朝9時ということもあり
涼しい風を受けてしばらく景色を眺める。
眼下にはこれから
下っていく道が蛇のように
うねりながら続いています。
反対に登っていくことを考えると
ゾッとするけど、実際同じだけ
登ってきたんだよな、と感慨に耽る。

限りなく広がる荒野を
突っ切る真っすぐな道を
スピードに乗って滑走していく。
昼前にもなると気温も上がり始め
じわっと汗をかき始めます。
余裕にあるうちにちょっとでも進みたい。
“ロマ”という小さな集落で休むと
大きな幹線道路に沿って走り始めます。
午後からはさらに気温が上がるので
休みをとりつつ、
疲れ切ってしまわないよう
慎重に。

この日を境に気温が確実に
一段階ほど上がったのを体感します。
乾燥しているとはいえ
日陰のない道を走り続ければ
焦がされた体からは徐々に
体力が無くなっていく…。
高架下に貴重な影を発見。
自転車を置いてひと休み。
太陽にさらされ熱くなってしまった
ペットボトルの水を喉に流し込む。
美味しくはないけど
とにかく水分を摂取しておかねば。
さらに1時間ほど漕ぐと休憩所を発見。
日陰に入ると極端に涼しくなる点は
湿気の多い日本との違いだろうか。
だらぁっと横になって休む。
すると暑さでダウンしてると思ったのか
ドライバーさんたちがちらほら集まりました。
聞けば周辺に熱波がやってきており
この時間40℃にも達しているのだとか。
さらに今後何日も酷暑が続くそう。
そりゃ、どうにも暑いわけだ。
沢山の方から
水やスポーツドリンクなどを頂く。

フラフラになりながらも
“シスコ”という集落に到着。
集落というより廃屋がいくつか
集まっただけで本当になにもない。
荒野のど真ん中に虚しさだけを
取り残した空間が広がっています。

そんな中、一つだけ商店がありました。
事前に調べた情報によると
敷地内にテントを張らせてくれる
とのことだったけれども、
到着が遅すぎて閉まっていました。
もう誰もいない…。
誰もいないので日陰を求めて
裏で寝させてもらうことに。
勝手に敷地に入るのも良くないけれど、
暑さにやられて考える余裕もなく。
おかげで無事に疲れた体を
休めることが出来ました。

ヴァーナル出発4日目。
目的の町・モアブまでは80km。
早く着いて休みたい。
幹線道路を離れ128号線という
コロラド川に沿った道に入ると、
大きな赤い岩が削れた
豪快な景色が広がっていました。
横切る車も少なく
ゆっくり眺めながら進んでいく。
これぞ思い描いていたアメリカ、
というような景色がどこまでも続く。
眺めるだけで喉乾くし
日差しが今日も暑いけれど、
この場所はうだるほどの暑さも含めての
風景だろうな。
モアブの町が近づいたあたりで
自転車道が現れます。
ただこの時すでに
40℃近いであろう午後2時。
自転車に乗って走っている人など
一人もいません。

そして、ついに到着しました「モアブ」。
小さいながらも観光客に溢れ
活気のある町なようです。
ヴァーナルから走ること4日。
クタクタになった体を
ここでしっかり癒しておきたい。

まずは商店で冷たいドリンクを飲み干し、
この町でもWarmshowerの
ホストの方にお世話になります。
今回はどんな方だろう、
と地図を見ながら郊外にある
お宅に向かったのですが…

たどり着いたお家の門がこれ。
“え?ここなの?
呪い人形みたいなの気になりすぎるんですけど。
てか、もう嫌なんですけど…。”

「あんたがリョウスケね。
まずどうしたいの、シャワー?洗濯?
忙しい時に来たわね。タイミング悪いわ」
60歳前後であろう女性の“テリアンさん”
からまともな挨拶もなく
まくしたてられました。

「あたし日焼け止めクリーム嫌いだから
すぐシャワーで洗い流して。
二階で寝てもらうけど足音立てないで。
荷物運ぶとき、砂持ち込まないで。
Wi-Fiあるけど
変なものダウンロードしないで。」
これまでのホストさんのパターンだと、
「全部君のものだと思って好きに使ってくれよ!」
というお家が多かったのですが、
こちらは禁止事項が多く、あたりも強め。
数泊とはいえ大丈夫だろうか…。

ただテリアンさん、とても器用な方でもあり
家の水道や電気配線などの施工を
ご自身でされたそう。
とても芸術家肌なようで
古着屋さんのような匂いのするお家も
雰囲気があって良い感じ。
話してみると、冗談も言うしよく笑うし
口は悪いけど、根は悪い人ではなさそう。
ジブリ映画に出てくる魔女みたいなものだと思って
数日お世話になります。(超失礼)
到着翌日、「パーティーあるから
あんたも行くのよ」と
お友達の家に連れてきてもらいました。
誕生日会とのことで
予想以上の人に溢れています。
年齢もホントばらばら。
アメリカ大陸を旅してるということで
興味を持ってくれる人がいたり、
日本に縁のある人もいたりで、
パーティ嫌いな僕も
すごく楽しい時間を
過ごすことが出来ました。

モアブ滞在中に観光にやってきたのは
町から10kmほど北にある
「アーチーズ国立公園」。
ユタ州きっての観光地であり
モアブはここに向かう人たちの
拠点となる場所というわけ。
砂漠の観光地とあってこの日も暑い。
朝7時には公園に入り、
散策を始めました。
多くの観光客同様
水をたっぷり持って
トレッキングルートを進みます。

最初にやってきたのが公園内1番の見どころともいえる
「デリケートアーチ」。
“アーチーズ”とは、名の通り
雨や風によってアーチ状に浸食された芸術的な岩が
2,000も点在する場所なんです。
ちなみにこのデリケートアーチは
州のナンバープレートにも描かれるほどで、
アーチーズ国立公園のみならずユタ州の象徴ともいえる風景です。
数億年前、あたりに
流れ込んだ海水によって
岩が塩分を多く含むらしく、
特有の地質がこの土地ならではの
光景を生み出しているのだとか。
中には歩いてくぐれるものも。
2つのアーチが重なった「ダブルアーチ」。
圧倒されるのは
魅力的な造形のみでなく、その大きさ。
こればかりは写真で伝えきれず
ふもとに立って見上げるしかありません。
とにかくデカい。

名前の通り、絶妙なバランスで
そびえるのは“バランスロック”。
中には浸食がすすみ
数年後には崩壊が予想される
岩もあるそう。
今しか見られない地球の芸術。

“悪魔の庭”、“エデンの園”など
仰々しい名を冠したものも多い
アーチーズ国立公園。
確かにどこか超常的なものを感じさせる
強烈な景色が広がる場所です。
暑さも忘れて見とれてしまう。

アーチーズの観光含め、
暑さからくる疲れをとるためにも
モアブの町にはたっぷり3日滞在。
どれだけ静かに歩いても
「足音うるさいわよ」と言ってくるテリアンさんに
すっかり愛しさすら感じ始めてしまいました。

2024.07.19
【91日目 5,642km】

ワイオミング州ジャクソンにて
チャック&カレンさんに提供して頂いた宿で休むこと3日。
疲れもとれた出発の朝。
「なあリョウスケ、わしの充電器のコードとったじゃろ。返しなさい」
とチャックさん。
僕「いや、荷物確認したけどないよ。」
C「いやいや、3日も滞在してるし絶対わしのヤツ使ったはず…。」
僕「でも持ってないよ。てかチャックのタイプBじゃん。Bなんか使いませーん」
C「え?タイプBとかCとかあんの?」
僕「あるよ!もっかい身の回り見てよ」
そんなやり取りをして1時間後。
「ごめんごめん、車の中にあったわ」とニコニコ顔のチャックさん。
こんなやりとりは世界中でおこなわれてるんだろうなとしみじみ感じつつ、
二人に別れを告げて出発しました。
ジャクソンから目指すのは
「ヴァーナル」という街。
5日ほどかかるだろうか。
イエローストーンとは打って変わり
途中に見どころも特に無いようで
走るばかりの日々が続きそうです。
ランチは昨日の残りのチャーシュー。
ゆで卵もたんぱく源になるけど
気温がどんどん上がってきており
持ち運びには向かない。
これからは夏仕様の
キャンプ飯も考えねば。
遠くに見えるロッキー山脈。
カナダ北端からのお付き合いだけど
そろそろ見納め。
自転車で走るとよく分かるけど
途切れず延々と山嶺が続く
大陸ならではのスケールに圧倒されます。
この日悩まされたのが野営地探し。
住宅が密集した街にテントは張れず
平原広がる郊外はフェンスが敷かれ
寝る場所が見つからない。
“どこでも寝れるでしょ”と下調べを
していないのがあだとなる。
21時まで走り続け
やっとキャンプ場を発見。
1泊¥4,000ほどと高額。
貧乏旅において
まず節約したいのが宿泊費。
これが続くとやってられないです。

ジャクソン出発2日目。
起伏の少ない平坦な道を今日も漕ぎ進めます。
モンタナから続く大平原が
乾いた荒野へと変化しつつあり
耕作地も減ってきています。
見てるだけで喉が渇くような風景。
こんな景色が海のように
どこまでも続いています。
夕方、“ファーソン”という集落に到着。
後々知ったのですが右の建物が
地域で大評判の
アイスクリーム屋さんとのこと。
¥600と高額なのでやめたけど
食べとけばよかった…。
この日も野営地探しに苦労。
公園を見つけて
まずは食事をしていると
警察がじろじろ見てくるので
退散することに。
ワイオミングの野宿は難しい。
教会の敷地の隅で
テントの許可を頂きました。
日が長いことも野宿が難しい原因です。
もっと早く暗くなれば
どこかに隠れてできるのに、
と犯罪者になったような気分。

ジャクソン出発3日目。
お世話になった教会の方が、
「キリスト教に興味はあるかい?」と分厚い聖書を渡そうとしてくれます。
「いや、ちょっと荷物になるし、うーん」
「こっちのちっちゃいヴァージョンもあるよ」
「いや、僕は信心深い方じゃないし…、うん大丈夫」と言葉を濁し退散しました。
お世話になったのになんだか申し訳ない気分でございます。
イエローストーン以降、文字通り
雲一つない快晴が続いております。
天気を気にしなくていいのは
旅において本当に楽。
ただこれからは気温が気になるけど…。
すでに日中かなり暑い。
写真では見えにくいですが、
道路脇には数百kmに渡って
フェンスが延々と敷かれています。
これだけ広大なのに土地にこだわるのは
不法侵入・占有が多いからだろうか。
ヨーロッパより野宿難しいかも。
昼過ぎには「ロック・スプリング」に到着。
このあたりでは大きな街で
当然野宿もできそうにないのですが、
この日はここでゆっくり過ごそうという
狙いがありました。
というのも…
今日は7月4日の独立記念日。
至る場所で国旗が掲げられ、
夜には街中で花火が上がるとのこと。
ただ思ったほどお祭りムードでもなく
パレードもやってないよう。
普通の祝日といった印象です。
せっかくだから現地の人と過ごそうと思い
キャンプ場に向かうと、
なんとテントを張るだけで1泊¥9,000。
聞き間違えかと思い
「え?パードゥン?」と疑ってしまう。
これが通常価格なようです。
「いいもん、独立記念日なんか関係ないもん」
と行くあてもなく公園で時間を潰します。
街の規模にもよるそうですが
地方の小さなところでは
さほど大きなイベントはないのだとか。
ちょっと拍子抜け。
綺麗な公園で野宿もできそうになく
街のはずれの自動車修理工の方の
敷地にてなんとかテントを張ることに。
毎日人頼みでキャンプ地を探すのも
精神的に疲れるし、
なにより迷惑な気もしてくる。
とっぷり日も暮れた22時。
さぁ花火があがるぞ、とカメラを構えるも
「…、…。……。…、パーン。…パン」
いや、玉数少な!そして低っ!
写真すら撮れず、期待外れの
7月4日が終わりました。

ジャクソン出発4日目。
ロックスプリングを出ると、延々と続く長い上り坂が待っていました。

「フレーミング渓谷」というこの地域。
家屋は全くなく、見晴らしの良い
谷間の景色を眺めつつ
緩やかな坂を進みます。
追い越していく車も少なく
ストレスなく走れる。
日を避ける影など何一つない一本道。
真っ正面から走ってきたドライバーさんに
水をもらいました。
しかも、クーラーボックスで
キンキンに冷えたもの。
火照った体を気持ち良くクールダウン。
見下ろす渓谷にははじめて
赤土の大地を拝めました。
イメージ通りのアメリカの荒野です。
遠目から見ると
層になっているのがよく分かる。
北米ならではの自然の景観です。
そして夕方17時頃。
アメリカ中部のユタ州に突入。
モンタナ、ワイオミングに続く
3つ目の州です。
恐竜の化石がたくさん
発掘されることでも有名だそう。
「ダッチ・ジョン」という小さな町の
外れにて、人目を忍ぶ場所を発見。
日の入りは21時半ごろでしょうか、
夏至は過ぎたけれど
まだまだ日は長いようです。
暗くなる前に眠る。

ジャクソン出発5日目。
この日も朝から上り坂で標高2,500mの峠を目指します。
前日の上り坂がキツかったこともあり
ほとんど漕ぐことが出来ない…。
そんなに急な坂じゃないのに
時速4kmで押して歩く。
暑さもこたえて
もうクタクタ。
昼過ぎにようやく峠の頂上へ。
途中でクラシックカーの
イベントをやっていたようで
おしゃれな車がいっぱい走ったのに
そんなの写真撮る余裕がないほど
疲れ切ってました。
峠から一気に坂を下り
標高1,500mの地点にやってきます。
ユタ州に入って一気に気温が上がったのか
空気がもわっと暑苦しい…。
下り坂でも爽やかな
涼しい風は吹きません。
そしてついに「ヴァーナル」到着。
するとちょっとしたトラブルが。
マクドナルドでWi-Fiをつなぐと
事前連絡していたホストさんからメール。
「ごめん!家族の急用で街を出なきゃ。
今夜泊められないわ!」とのこと。
あてにしていたWarmshowerの宿泊先が無くなり焦っていたところに、
再度連絡が入ります。
「友達が泊めてくれるからそっち向かってくれ」

ということでやってきたのが
「ジャレドさん」のお宅。
急なお願いにも関わらず
庭先のRV車に水と電気を通して
泊まれるようにしてくださいました。
素晴らしいホスピタリティ。
5日間走行が続いたので
到着翌日はお休み。
涼しいお家で
のんびり休ませてもらいました。
アメリカ入ってから
街をじっくり見てない気がする…。

貴重な週末にお邪魔させてくださった
ジャレドさんご一家。
仲良く明るい皆さんでした。
自転車乗りのコミュニティサイト“Warmshower”。
ほどほどに使っていこうと思っていましたが、
時にキャンプ場ですら¥5,000を超えるアメリカでは
大いに頼ってしまっています。

2024.07.15
【86日目 5,163km】

イエローストーン公園内で2つ目の夜が明け、
キャンプ場を後にして南へと向かいます。

公園自体が2,000mを越える高所に
あるとあって、傾斜が急な箇所もしばしば。
そのぶん自然豊かな景観を
楽しむこともできます。
しばらく乾いた大平原が続いたので
水辺に心が潤う。
お昼過ぎには国立公園のゲートを
通過して、イエローストーンの
サイクリングも終了。
ここしばらくランチは
トルティーヤばっかり。
アボカドが美味しいんですよね。
気温はお昼で20℃前後でしょうか。
夜も涼しくて寝やすいです。
南に下りるにつれ猛暑が予想されるので
おそらく今が一番過ごしやすい。
というかこないだまですごく寒かったし
快適な期間短いんですけど…。
“ジャクソンレイク”という湖のほとりに
キャンプ場を発見。
ここもサイクリスト用の場所が
用意されており
¥1,500ほどで泊まれます。
シャワーも浴びれてほんと快適。

夏休みに突入して溢れかえった
周りの観光客の皆さんにつられて
アイスを食べてしまう。
3段で¥900と
日本なら定食食べられる値段。
でも食べたかったんだもの…。

翌日。
引き続き南下しますがイエローストーンに隣り合った
「グランドティトン国立公園」をなかを進むことになります。
ロッキー山脈の景色が見どころ。
湖の向こうに見える尖った山々。
このエリアをサイクリングしたり
トレッキングする人が多く、
イエローストーンとセットで
観光するのが定番だそう。
家族連れが沢山います。

整ったサイクリングロードを
気持ち良く走ることが出来ます。
観光地ではe-バイクをよく見かけます。
スイスイ楽に走れて楽しそう。
あれで旅が出来たらどんなにいいか。
充電が大変だけども…。
グランドティトンを走り抜け
20kmほど南下すると
イエローストーン観光拠点の町
“ジャクソン”に到着しました。
冬場はスキー客でも賑わうらしく
山肌がスッキリ刈られています。

ジャクソンの町から3kmほど南にやってきたのがこちらのお家。
いつもおなじみのサイクリストコミュニティサイト
“Warm shower”で連絡を取り合っていた
ホストファミリーさんのお宅なのですが、
この時はちょっとおかしな状況。
すでに退職された悠々自適のご夫婦いわく
「週末ちょっとキャンプ行ってくるから
家泊まってていいよ、鍵開けとくね」
とのこと。

「ようこそリョウスケ、この家だよ!」
と紙が貼られた玄関を開けると、
素敵な居住空間が広がっていました。
“ウソでしょ、ここ一人で使っていいの?”
予想を超える最高の宿に出会えたようです。
もう、幸せ…。
滞在に先立ち食材も調達済み。
何が食べたいかって
新鮮な野菜と肉でございます。
自分で調理できるのも
休日の楽しみ。
(自転車漕がない日を“休日”と呼びます。)

YouTube見ながらのんびり料理するのが
もう楽しくて楽しくて。
こんな時に日本での日常が恋しくなります。
欲しいものが手に入って
体が欲しがるものを摂取する、
これだけのことがすごく嬉しい。

テント泊ばかりが続いており
屋根の下、ふかふかベッドで
寝られるのは
カルガリー以来2週間ぶり。
布団って久し振りだと
姿勢が落ち着かないですよね。
朝食を済ませコーヒーを飲みながら
日が差し込むテーブルで
パソコンに向かい作業をする。
全てを手に入れた成功者の気分です。
フリーターのくせに…。
ちょっとしたことで喜びを感じる旅人。
羽を伸ばしきって2泊、ご夫婦帰宅の日。
お礼にチャーシューを作る。
お世話になった家では振る舞うのは
決まってチャーシュー。
こっちの食材で作りやすいし
皆さんに喜んでもらいやすいんです。

滞在3日目にしてついに
“チャックさん&カレンさん”ご夫婦にお会いできました。
「快適に滞在できたかしら?」とカレンさん。
いや、もう骨の髄が溶けてしまいそうなぐらい
快適でございました。
やっとお会いできた二人にお礼を伝え
楽しく食卓を囲みます。
見知らぬ旅人の為に
家まであけてくれる人が
この世にはいる、という事実。
自分は人のためにどこまでできるだろう。
チャーシューなんかでは決して返せない恩を
また一つ受けてしまいました。

2024.07.11
【82日目 5,087km】

“自転車はここで止まれ”の看板の通り足を止め、
“リーさん&ジーニーさん”宅にてお世話になった朝。
ジーニーさんの作ってくれたサンドイッチを受け取ると
「イエローストーン」を目指してさらに南へ。
天気の良さは相変わらず。
暑さも若干和らいで
かなり過ごしやすい気候です。
南の方向に山々が見えてきた。
カナダのバンフ以来となる
ロッキー山脈地域に突入していきます。
昼には“リヴィングストン”
という町に到着。
古い雰囲気を醸すダウンタウン。
ここから西に40kmの“ボーズマン”
という町にジョニー・デップが
住んでるそうですよ。
街を出るとまっすぐ南に下りる
一本道を進みます。
リーさんに教えてもらった
交通量の少ない道路がすごく走りやすい。
地元の人の情報に頼ることが
旅においてとても大事です。

ジーニーさんが作ってくれた
サンドウィッチでランチ。
ゆっくり座って休憩することが
気持ち良くなったのは
ホントここ最近です。
こないだまでもう寒くて寒くて…。
110kmを走った夕方に
国立公園の玄関口「ガードナー」
という町に到着。
観光客で溢れかえる
とても賑やかな場所です。
欧米だけでなくアジア系の人もたくさん。
立ち寄ったスーパーで
牛肉が安く(¥400)、
夕食はステーキに。
前の旅含めても初めてじゃなろうか。
焼くだけで意外と調理も簡単だし。
走り切った日に食べる肉、最高です。
町のはずれに図書館を発見。
誰もいないようなので裏で
テントを張らせてもらうことに。
観光地なのでどうかなと思ったけれど、
ぐっすり眠って
無事に朝を迎えることが出来ました。

翌朝。ガードナーの町の南側に料金所があります。
ここからいよいよ「イエローストーン国立公園」へ。
入場料$35と聞いてたけど、自転車は$20とのこと。
嬉しい。

標高2,400mにあるイエローストーン。
ゲートの向こうはかなりの急坂でした。
「傾斜キツイし、路肩もないから
トラックにでも乗せてもらったら…?」
と言われたけど、これまで通り
自力で行きたい。

まず1時間ほど坂をのぼると
“マンモス”というエリアへ。
大自然が広がっていると思いきや
高級なホテルが立ち並んでいました。
イエローストーンは全米屈指の観光地。
人も車も凄い数です。

最初にやってきたのは「マンモス・ホットスプリングス」。
そもそも“イエローストーン国立公園”とは
大きな火山地帯です。
地中深くに世界最大とも言われるマグマだまりがあり、
その地表ではガスや熱水が噴き出す間欠泉など
特有の火山活動が見られるのが国立公園の魅力。
熱水が湧きだす泉を見てみると
複雑な結晶のようなものが見えます。
これらはバクテリアが
層を成しているらしく、
場所によっていろいろな
模様を見せてくれます。
ここマンモス・ホットスプリングスは
棚田のように傾斜した
石灰岩が特徴で、
白い岩肌と
茶色いバクテリアが
独特な景色をつくっています。

ひと通り見終えるとまた坂を上ります。
南北には200kmにも及ぶほど広い国立公園。
その中に間欠泉などの見どころが点在しており
ひとつ見たらまた次へ、と移動を繰り返して観光していきます。
昼頃に高低差800mにもなる
坂を全て上り切りました。
その先は平らな台地になっており
分かりやすいほどに平坦。
高所だけに涼しく、ジャケットを
羽織って漕いでいきます。
何やら車が渋滞しており
合間を縫うように追い越して進むと、
森の奥になんと「グリズリー」が!
“黒いパンダ”ことブラックベアとは違い
グリズリーは本物の猛獣です。
おしりをこちらに向け去っていきました。

15時頃には「ナリス・ガイザー・ベイスン」へ。
開けた土地にいくつもの間欠泉(ガイザー)があり、
そこら中から湯気やガスが立ち上っています。
特に激しくガスを噴出している場所では
「シュー、シュー!」と轟音が
聞こえます。
まさに地球の鼓動とも思えるような
日常ではまず聞くことのない
生々しく存在感のある音。
てくてく歩いていると
一気に雨雲がかかり、
やがて激しく降り始めてしまいました。
観光どころではないと
諦めて退散。
せっかくだから隅々までみたいのに。

雨の中しぶしぶ漕いでいると
やがて晴れ間も見えてきました。
2,000mを越える高山とあって
天気も気温も変わりやすい。
道をのんびり走っていると
湯気が上る場所がちらほら。
数十kmにもなる巨大なマグマが
地中にあるので、
いたるところで温泉が湧いているよう。
なかなかここまでの景色がお目にかかれない。
源泉に触れてみると
45℃ほどでしょうか、
足湯できるような湯加減ではなく
すごく熱いです。
川を眺めながら
お湯に浸かれたら気持ちいいのに。
公園内は野宿厳禁だそうでキャンプ場へ。
高額を覚悟したものの
サイクリスト価格が用意されており
$10とかなり安い。
売店まであり、観光地らしい
整い切ったキャンプ場でした。

イエローストーン観光2日目。
今日も平坦な道をたくさんの車に追い越されながら進みます。
漕ぎ始めてすぐに
間欠泉がありました。
前日よりも天気が良く
青々とした泉が綺麗に映えます。
飛び込みたくなるような色だけど
離れても熱気を感じるほど熱いです。
じっくり見れば見るほど
宝石のように鮮やかな
色と模様。
まさに自然が生み出す芸術。
風がつくりだす水面の波紋が
また美しい。

さらに進んだ場所にあるのは
「ブランド・プリスマティック・スプリング」。
公園内でも特に人気な見所です。
高台からの景色は圧巻。

泉の中心から外側に向かって
温度が変わるのですが、
それによって棲むバクテリアが異なり
青とオレンジのコントラストを
生んでいるのだとか。
舞い上がる湯気がまた荘厳さを増す。

そんな美しい景色の広がるイエローストーンですが、
とにかく人が多い。
平日でしたが、そんなの関係なく人気スポットの周りは大渋滞。
駐車場に入りきらない車が道路にはみ出しています。
こちらはトイレの大行列。
僕は自転車なので
道路脇で適当に済ませますが
これはちょっと嫌だな。
そういう僕自身も観光客の一人なので
何とも言えないですが。

最後にやってきたのが、イエローストーンのみならず
世界でも最も有名な間欠泉である
「オールド・フェイスフル」。
90分おきに30mもの高さまで豪快に熱水を噴出します。
時間なんて全く気にしてなかったのに、
僕が着いてほんの1分後に噴き出してくれました。
ただ、イエローストーン1番の目玉ともいえる
このオールドフェイスフル。
若干、興ざめしてしまったというのも本音でして…。
間欠泉の周りにはぐるりと
人、人、人。
千人は軽く超えるでしょうか。
敷設されたベンチには
収まらないほど溢れかえっています。
皆で中央の間欠泉を見るというわけ。
駐車場から歩いてくる間にも
ホテルやスーパーまであるんですよ。
ただただテーマパークで大きな噴水を見た
という風に感じてしまいました。
「間欠泉も水道水だったりして」
とか思っちゃうくらいです…。

人の多い観光地に来ると
自転車旅の魅力に気づかされます。
誰もいない何でもない景色の方が
いつまでも心に残っていたりして。
でも独特の火山活動の風景は圧巻でしたよ。
(誰に向けてのフォローなのか。)
北米大陸を東西に分断する
ロッキー山脈にあるイエローストーン。
こちらの分水嶺は
太平洋と大西洋それぞれに下っていく
水流の境目となっています。
まさに大陸の分け目。

前日に引き続いてキャンプ場へ。
公園内を自転車で移動する人などほとんどおらず
たくさんの車に追い抜かれながら進みました。
すると間欠泉を見学中に
「お前、さっき見たぞ。頑張れよ!」
「もうここまで来たのか!早いな」
など沢山声をかけてもらい、お菓子をもらったりします。
そんな、いつも以上にちやほやされた
2日間のイエローストーン観光でした。

2024.07.7
【79日目 4,833km】

アメリカに入国して、“ダットン”という小さな集落でひと休み。
ここから有名観光地である
「イエローストーン国立公園」を目指して進み始めます。

お昼ごろにはモンタナ州有数の都市
「グレイトフォールズ」に到着。
ミズーリ川の沿岸に
快適な自転車道が敷設されています。
車を気にすることなく
のんびりと走っていく。

しばらく進むと
都市名の由来にもなっている
大きな滝がありました。
今はダムになっていますが、
一部ゴツゴツとした岩場が
スケールの大きさを物語ります。
街を出る前に大型スーパー
「ウォルマート」にて
アメリカ本土で初のお買い物。
バナナ5本¥130、リンゴ1つ¥250。
ソフトドリンク1缶¥270。
もちろん高いけど予想ほどではない。
グレイトフォールズを出ると
また大平原を進みます。
気温は20℃を越え、
一気に暖かくなりました。
アラスカ出発以降
初めて終日半袖で走った日となります。
“ビッグ・スカイ”と称される
モンタナ大平原の大空。
綺麗なのは何も夕焼けだけでなく、
昼の時間でも立体感のある雲と
突き抜ける青空が最高に美しい
画を見せてくれます。
90kmほど走って
「ベルト」という町の公園にて
テントを張ります。
芝生がきれいなだけに
スプリンクラーに要注意。
あの悲劇を繰り返してはいけない…。

ダットン出発2日目。
ルークさん宅で頂いた“アップルバター”がすごく美味しい。
最近はパンではなく、もっぱらトルティーヤ。
かさばらないし、日持ちもするし、
どんな味付けもできる便利食材です。
さらにどこかで落としてしまっていた
コーヒーフィルターまで
頂いちゃいました。
楽しく旅をすすめるために
朝のコーヒーは欠かせません。
あぁ、やっと飲める。

この日は標高1,000mのスタート地から
2,400mの峠を越えるコース。
つまり1,400mも登るということ。
イエローストーンを目指すには最短だそうで
通らないわけにはいかない。
気合を入れて進み始める。
朝からクラクラするほどの暑さです。
たった4日前は息も白く
手袋してたのに。
今日は汗が止まらず
上半身裸で
せっせと坂を漕いでゆく。
標高が上がるにつれ
岩山の合間をぬうような
道へと変わっていきます。
幸い吹き下ろす向かい風が
ないのが嬉しい。
時速10kmでゆっくり前へ。
午後からは小川の傍らを上ります。
涼しげな水面に反して
気温は上がるばかり。
太陽に照らされて
ぬるくなった水で喉を潤す。
車が少ないのもありがたい。
そして夕方6時過ぎ、
やっとのことで標高2,400m、
峠の頂上へとたどり着けました。
疲れて“手前で野宿を”とも
思ったけれど、一日で上り切ると
達成感があります。
峠を下り15kmほど
進んだところでキャンプ場を発見。
有料と聞いていたけど
誰もおらず何もないので
しれっと泊まらせてもらうことに。
オンシーズンのはずなんだけども。

ダットン出発3日目。
前日にさんざん上った坂を今日は一気に下る。
下り坂から始まる1日なんてホント最高です。
アメリカに入国してから
天気はほとんど晴れ。
気まぐれな通り雨が降る以外は
どこまでも青空が広がっています。
やっと理想のサイクリングシーズンが
やってきたようだ。
40kmほど走った昼前に
“ホワイト・サルファー・スプリング”
という小さな集落に到着。
イメージ通りのアメリカの田舎
といった雰囲気です。
落ち着いた良い場所だ。

商店にてレジ横にピザが置いてあるので
つい買ってしまう。
1枚¥300で割とオッケーな値段。
美味しい誘惑がいっぱいのアメリカ。
カナダからアメリカに入って
肥満体型の人が明らかに増えた気がする。
まだお昼だけどキャンプ場にチェックイン。
前日が大きな峠越えだったので
半休日にします。
急な気温上昇に体も疲れている。
自転車って前に向かって頑張りすぎるので
時には「休むぞ!」って決心が必要。
近くにスーパーがあったので
夕食には、野宿中は食べない
ソーセージや野菜など。
ここしばらく食べることが
一番の幸せになっている。
ちょっとでも美味しいものを。

ダットン出発4日目。
今日も青空の下、平原の道を進んでいく。
中央アジアにも通じるような
どこまでも果てのない原っぱ。
日本の国土と同じほど広いモンタナ州。
でも、人口は全体で100万人ほど。
地元の広島市とか今住んでる湘南エリアと
同じくらいだから人口密度はかなり低い。

ランチはトルティーヤ。
カナダで1週間前に買った
アボカドがやっと柔らかく
なり始めました。
早く本場メキシコで食べたい。
美味しいんだろうなあ…。

夕方4時ごろ、「クライドパーク」という町を過ぎたあたりで
道端に“The Bike Stops Here(自転車はここで止まれ)”
という看板を発見。
トルーマン大統領の格言をもじっていると思われる文言に従い
立ち寄ってみることに。
奥に進むと平屋があり、ただ家主は不在のよう。
“でも止まれって言われてるしなぁ”ということで
20分ほど木陰で休んでいると
車に乗ったご夫婦が帰宅されました。

聞けば、自転車が大好きなご夫婦は
ここを通るサイクリストを
よく泊めてあげているそう。
裏庭にテントを張って良いということで
遠慮なくここで一泊させてもらいます。
スプリンクラーの心配も無し。
涼しくなった夕方に裏庭でのディナー。
BBQポークがとても美味しい。
食欲爆発で「ねぇ、これも食べていい?」
って聞くのが恥ずかしいけどやめられない。
太ってる人ってこんな感じなんだろうな。
永遠に食べられそう。
「自転車のことで困ってないかい?」
ということで緩んだうえに
錆び付いていたバッグのネジを
つけ直してもらいました。
アメリカの家庭はみな
お店が出来そうなほど工具が揃ってます。

実はこちらの“リーさん&ジーニーさん”、
昼間は遠くから来た友達と会っていたそう。
「このまま夜は映画行く?ディナーはどう?」
と誘ったところ、その友達に“疲れたからホテル戻る”と断られたのだとか。
「それで家に帰るとあなたがいたのよ」とのこと。
出会いって小さな奇跡の末に生まれてるんです。
断ってくれたお友達、心からありがとう。

2024.07.2
【75日目 4,520km】

ふらっと立ち寄っただけの旅人を歓迎してくれた
アイラさん宅にて過ごしたカナダ最後の夜。
朝にはコーヒーとパンまで用意してくれました。
朝からパラパラと止まない雨。
空を見上げても晴れる様子はなく
諦めて濡れながら
進むことを覚悟します。
どうやら青空のもとの
国境越えとはならないようだ。
大都市・カルガリーを出て4日。
太陽を見ることはなく
常に厚い雲が
空に立ち込めています。
それに加えて
日に日に寒さが増している。
この日、日中の気温はなんと6℃。
南に下っているというのに
日本の冬並みの寒さです。
休憩に立ち寄った集落でも
店が開いておらず。
あまりの寒さに外で食べることもできず。
午後から晴れる予報だったけれど
どうやら、そんな様子もなく。
6月の終わりに
手袋をして走ることになるとは
思ってもいません。
息も白いし、体が震える。
14時ごろに“ミルクリバー”
という集落に到着。
カナダ最後の食事はレストランの
ハンバーガー(¥2,000)でした。
最後の記念だからではなく、
寒くて外で自炊する元気がなかったんです。
さらに走ること1時間。
“クーツ”という集落の国境に
たどり着きました。
山火事という思わぬ
トラブルもあり2カ月の旅となった
カナダの道はここで終わり。
パスポートを見せると
簡単な質問をされます。
色んな国へ行ったけど
口座の預金額を聞かれたのは
アメリカ、カナダだけではなかろうか。
貧乏なんだから聞かないで…。

ということで、やってきました
31ヵ国目・アメリカ合衆国。
すでにアラスカ州を走っているので一度入国済みですが、
いよいよ本土の走行が始まります。
多くの人が観光に訪れる東西の両海岸ではなく、
中央部の田舎地域を中心に走ることになります。
果たしてどんな旅が待っているだろうか…。
国境を越えてやってきたのは
モンタナ州。
大平原グレートプレーンズが
広くを占める州で
「あそこ走ってもホント退屈だぞ」
と出会う人が口を揃えます。
国境を越えてもすぐに町はなく
変わらない平原がどこまでも
目の前に広がります。
これが何日も続くのだろうか…。
遠くの方にポツンと
何軒かの家が見える。
入国からわずか15kmほどで
「サンバースト」という
何とも暑そうな名前の
集落に到着。
キャンプ場ではなく
タダで野宿できるところを探したい。
町のはずれに静かな公園を発見。
人もいないようだし
芝生は綺麗だし
ここなら落ち着いて眠れそうと
安心してテントを張ることが出来ました。
あんなことが起こるとも知らずに…。
すやすやと気持ち良く眠っていた深夜2時。
突然「ザアー、ザア」と激しい水が
テントを打つ音で目を覚ましました。
“雨か…”と思い、再び眠ろうとするもやけに激しい。
一度止んだかと思うと、また降りはじめる。
というかこの雨には変なリズムがある。
そして、雨に強いはずのテントが下の方から濡れている。
ん? なんかおかしい…。
眠い目をこすり外に出ると
顔に「びしゃぁっ」としぶきが当たる。
どうやら水は地面から吹き上げられている。
スプリンクラーだ。
そして、テントが思いっきり狙い撃ちされているではないか。
「ヤバいヤバい」と眠たい頭で思考し、
なんとかタオルで噴射口を結んでふさぐ。
近くにある二つの噴射口をやっとふさいだ瞬間、
時間が来たようで全体のスプリンクラーが稼働終了。
ムカつく…。

朝目が覚めると、思った以上に
テントが降れていることが判明。
アメリカで過ごす最初の夜が大切な教訓を与えてくれました。
「公園野宿はスプリンクラーに気をつけろ」
荷物をまとめて走り始めると
青空が広がっていました。
ここ数日拝めていなかった
太陽に感動。
日光が降り注ぐ平原の景色、
まったく退屈ではありません。
ハイウェイを進んでいるけれど
交通量はさほど多くなく
路肩もかなり余裕がある。
昨日までとうって変わり
とても気持ち良く
晴天のサイクリングを楽しめます。
午後からはやはり厚い雲が
空を覆う。
カナダの針葉樹林もそうだったけど
こんな大平原で降られても
まったく逃げ場がございません。
お願い、やめて…。

わずか10分後の写真。
この10分間に、
まず無数の雹が体に降り注ぎ、
やがて大粒の雨に変わったかと
思うと、すぐに晴れ渡りました。
モンタナの天気めちゃくちゃです。
休憩に止まれるような場所すらなく
120kmを走破。
どうやらモンタナ州は
ただただ走ってばかりになりそう。
大平原の小さな村
「ダットン」に到着しました。

「ダットン」の集落でお世話になるのは、
Warmshowerのホスト“ルークさん”ご一家。
緑色の可愛らしいお家です。

到着翌日は休養日。
奥さんの“メーガンさん”お手製の
アップルバターが絶品で
パンを何枚も食べちゃいました。
レシピも教えてもらったので、
日本に帰ってつくるのが楽しみ。

この日は1年で最も日の長い夏至の日。
夜10時を過ぎてもまだ明るく
子ども達も外で遊びます。
焚き火であぶるマシュマロが美味しい。
一人キャンプの時は
やらないからこそ楽しい。

明るく楽しい家族の
夏休みを1日だけ
ご一緒させてもらいました。
こうして色んなご家庭の日常を
のぞき見させてもらえるのも
自転車旅の良いところ。

僕はもっと日の長いカナダから南下してきたので
夏至の特別感を感じないけども、
麦畑に沈む夕日がとても綺麗でした。
広大なモンタナの空は色んな表情を見せてくれる。
一番近い道を進みたいがために
退屈な景色が続くだろう、と覚悟したモンタナ州。
似たような景色が続くのは間違えないけれど、
決して退屈な道なんかではありません。

2024.06.29
【72日目 4,520km】

カルガリーではのんびりと4泊もお休み。
モノもそろって、体力も回復したら
南の国境を目指してまた走り始めます。
お世話になったマークさんに別れを告げて、走り出そうとすると
向かいのお家から可愛らしい兄弟が出てきてくれました。
実は、カナダ人のお父さんが日本企業にお勤めな上に
奥さんも日本の方ということで、滞在中に話は盛り上がり。
いよいよ出発というとき、
見送りの品におにぎりなどを持たせてくれたんです。
一人ぼっちで異国を旅する身として“誰かが関心を寄せてくれている”
という事実だけで、心から嬉しい気持ちになります。

出発から懸念していたものの
カルガリーの街を抜け出すのが一苦労。
都市の道路は複雑で、ただ真っすぐ
進めばいいというものではありません。
右に行きたければ、一度左に進め
という具合でとても分かりづらい。

やっと数十km進んでも
街が続くものだから
ゆっくり休む場所もなく。
分かったうえで早めに出発したけど
走りながら
徐々にイライラしてしまう。
頂いたおにぎりでランチ。
梅干しやおかかなど
こちらではまず出会えない
日本の味が美味しく、体に染み込む。
腹持ちの良さという点でも
おにぎりって最高の食べ物です。
天気はあいにくの曇天。
予報から分かってはいたものの
これから進む方向に
どんより暗い空が広がるのは
気が重い…。
すかっと晴れてくれ。
カルガリー中心部から50kmほど
離れても、まだ住宅が広がります。
これまで見ることのなかった二階の戸建てや
アパートが沢山あることからも
人口の多さがうかがい知れます。
日本の住宅地となんら変わらない。
夕方17時にようやくカルガリー脱出。
雨にも降られたことで
予定の100kmには到底及ばず。
なるべく大都市を避けたい
理由がここにあります。
とにかく都市部は走りにくい。

18時を過ぎて“オコトクス”の町に到着。
再び降り出した雨は止まず
考える間もなくキャンプ場に直行。
受付を済ませてびっくり、
テントを張るだけで¥4,000。
この時、どこか気持ちがプツリと切れました。
アラスカから続く針葉樹林とカナディアンロッキーの山々。
寒さに耐えてこれらの地域を走り切り、
カルガリーで一度リセットしたのちは
しばらく穏やかな気候のもと進めるものと想定してたんです。
ところがカルガリー出発初日から
寒さが戻り、降っては止んでを繰り返すにわか雨も相変わらず。
野宿場所を探す時間や体力もなく
やっとたどり着いたキャンプ場で高額を払わされる。
「嫌だ。もう円安下の北米旅が嫌だ。早くメキシコに抜けたい」
そんな思いが溢れ、ルートを簡略化し
1日も早くアメリカを走り去ることを決意。

カルガリー出発2日目。
朝から降り続ける雨の下、濡れながらも走り始めます。
ルートを変更したことで
大平原グレートプレーンズの
真っ只中を進むことになります。
景色が変わらず退屈になってしまうけど
一番早く南下できる道でもあります。
「いいから、早くメキシコへ」

太陽が顔を見せる様子はなく
どこまでもどんより。
そして寒い…。
日本出発してからずっと寒い。
先週までこの地域は20℃あったはずなのに
なんで…。
小さな集落の公園にてお昼休憩。
近くに泊まっていたキャンピングカーから
「寒いから、中にはいりなさいよ」と
お招きを受けました。
暖房も効いて暖かい車内。
ごちそうになるトルティーヤが旨い。
旅に大いに感心してくれた
“リックさん&グレナンさん”。
この先に進むルートの
アドバイスもくれました。
悪天候と寒さなどでイライラしていた
気持ちが少しほぐれていく。
午後からも気温は上がらず。
追い風なのはいいけれど、
時々強く吹けば身を切る寒さ。
カナディアンロッキーですら
もう少し暖かかったのに。
あぁ、太陽。
“クレアズホーム”という集落についた夕方。
「私たちも去年、自転車で
カナダを横断したのよ!」と
車から声を掛けてくれたのは
“ケヴィンさん&リサさん”。
「何かごちそうさせてちょうだい!」
「自転車にはカロリーよ!
カロリー高いもの選ぶのよ!」
とリサさん。
ハンバーガーをごちそうになりました。
お昼に続いて人の優しさに触れ
穏やかな気持ちで1日が終わる。
小さな集落に野宿できそうな場所が見つからず
昨日に続きキャンプ場へ。
少しは安いけど、
野宿ならタダで済ませられるのに。
大平原の野営地探し
簡単ではなさそうです。

カルガリー出発3日目。
引き続き麦の穂が揺れる平原を進んでいきます。
大陸名物“巨大水やり機”。
このあたりは麦やアルファルファ(牧草)
が主な作物だそう。
ジャガイモやとうもろこしには
少し寒すぎるようです。
少しというかだいぶ寒いですけど…。
お昼には“レスブリッジ”
という街に到着。
国境までは残り100kmほど。
スーパーもあるので
休憩がてら立ち寄って
補充をしておきます。

街の中に「日加友好庭園」を発見。
地図では事前に見てたのですが
“ニッカ・ユウコさん”という偉人を
記念したものかと思ってました。
日本とカナダの友好ってことね。
入場料かかったので今回は見送りです。
街を抜けると再び大平原。
海のように広がる麦畑に
浮かぶ島ように小さな集落が点在してます。
つまりあらゆる土地が管理されており
野宿がとても難しい。
でも今日はさすがにキャンプ場は厳しい。

「このままではどこにも泊まれない」と彷徨うように
20時までふらふら走り続けてしまいました。
疲れ果てたまますがるように
あるお家の前に立っていた男性に声を掛けると
「家の庭にテント張りなよ」
と、あっさり快く受け入れてくださいました。
「旅の話、聞かせてくれよ」と
焚火を起こしたアイラさん。
寒空のもと
暖かい火に手をかざしながら、
100km以上を走った疲れも忘れて
夜遅くまで話をしました。

季節外れの寒さが押し寄せ、
いつまでも暖かくならない旅路にイライラしながらも
進みはじめたカルガリーから国境へと向かう道。
大平原の景色は変わり映えせず単調だけど、
出国直前まで地元の人たちの暖かさに触れ
結局は充実した旅になってる、
としみじみ感じたカナダ最後の夜でした。

2024.06.25
【69日目 4,248km】

ロッキー山脈の観光地“バンフ”でひと休みすると、
北へと向かう日本人サイクリスト・中野さんともお別れ。
アルバータ州最大の都市・カルガリーを目指します。
朝から天気が良く、
鋭くとがった山々を望みながら
緩い下り坂を心地よく
進んでいきます。
自転車道が整備されており
車を気にする必要もない。
出発から1時間ほどで
“キャンモア”という町に到着。
こちらも観光客の多く訪れる場所で
安宿さえあるなら
1泊したいくらいのんびりと
良い空気が漂っていました。
キャンモアからは都市間を繋ぐ
大きなハイウェイを進みます。
車との接近が怖かったけど
路肩がとても広いうえに
意外と交通量も少ない。
時速25kmで快適に進んでいきます。
14時過ぎには120kmを走破。
予想以上の早さで
カルガリー郊外に到着。
ハイウェイというのは車だけでなく
サイクリストにとっても
スピーディに走れる道路です。

西側の郊外には、1988年に開催された
冬季オリンピック会場の跡地がありました。
リフトやジャンプ台が遠くからでも見えます。
映画「クールランニング」の題材となった
ボブスレー・ジャマイカ代表も
この大会なんですね。

現在は公園一帯が
ウィンタースポーツの
トレーニング施設となっております。
調べると、僕はカルガリーオリンピック
大会期間中に生まれてました。
なので、記憶も何もないです。

ということで、今回のルートにおいて
カナダ最後にして最大の都市となる“カルガリー”に到着です。
アラスカ出発以降、見たこともないほど
高層ビルが乱立する都市空間が広がっている。

人口100万人を超えるカルガリーに
もはやブラックベアの気配はありません。
ずっと大自然に身を置いていたので
暖かい日差しを反射した
ガラス窓がいくつも並ぶ景色が
とても新鮮。

「カルガリーに着いたら何をすればいい?」
と到着する前から沢山の人に聞いていました。
するとすべての人が苦笑いとともに
「ナッシング」と答えます。
カルガリーの唯一の魅力は
バンフやジャスパーが近いことだそう。

カルガリー滞在中にお世話になったのは
北側の住宅街にお住いの“マークさん”ご一家。
旅のスタート地・アンカレッジを出て最初にお世話になった
“ジェイソンさん”のお友達です。
人の移動が活発な北米では
「〇〇に行ったら、オレの友達紹介するぜ!」という
数珠繋ぎがとても容易く、その気になれば
ずっと人の家に泊まりながらの旅もできそうなほどです。
友達の友達は皆友達。
裏庭のテント泊でも全然問題ないのに
わざわざ部屋までご用意いただきました。
屋根の下、布団で寝られるなんて
この世の全てを手に入れたような
幸せな気分でございます。
他に何を望もうか…。

最後の街・カルガリーでの
ミッションはお買い物。
サイクルグローブやドリンクホルダーなど、
国境を越えアメリカの円安ドル高地獄に
再突入する前に、何としても
手に入れておきたかったんです。
特に欲しかったが荷台に積む
ボストンバック。
日本で買った安いバッグに気に食わず…。
日本国内で1万5千円ほどのものが
9千円で買えました!
こちらでお買い得と感じた唯一の買い物です。

カナダ出国が近づいたこの時点であることに気づきました。
“カナダならではの名産品を食べてない…。
このままではカナダのベストフードは味噌ラーメンになってしまう!”
そこで色々な人に尋ねて食べにやって来たのが
上の写真の“プーティーン”。
これが何かというと、
フライドポテトにチーズや豚肉を散らして
グレイビーソースをかけたもの。
例えるならば、
フライドポテトにチーズと豚肉を散らして
グレイビーソースをかけたような味がします。
これまでの道中も、
「ここの名産何なの?」と町ごとに聞いてきたのですが
「うーん…」と困ってしまうのがカナダの食文化だそうで。
歴史も浅く、農作物も限られる北の大国では
胸を張って差し出せる料理はなかなか無いのかもしれません。
ということでカナダのベストフードは味噌ラーメンでした。

2024.06.21
【65日目 4,124km】

ジャスパーでの滞在を終えると、引き続き東へ。
カナディアンロッキーもう一つの観光地
“バンフ”を目指します。

ジャスパーとバンフを繋ぐ道路は
“アイスフィールド・パークウェイ”
と呼ばれ、カナディアンロッキーの
絶景を楽しみながら走ることが出来ます。
通行する車のほとんどが観光目的のため
皆、焦らず運転ものんびりモード。

出発から間もなく道路脇の休憩所にて。
「え!?アルゼンチンまで走るの?」
と驚いたご夫婦から
お金を頂いてしまいました。
しかも25米ドルとそれなりの値段。
お金をもらうことはかなり珍しいです。
これが特別嬉しかったのは、理由がありまして。
ジャスパーにて渓谷へハイキングに行った際
少しでも荷物を減らすため、財布を持たず
現金紙幣(¥4,500ほど)をポケットに突っ込んで歩いておりました。
町に戻ってふとポケットを探ると、お札がなく
どこかで落としてしまったようです。
決して安くはないお金を不注意で失くし
ショックを受けていたところでこのご夫婦からのご支援金。
何かを失うと、まわりまわって何か得られるようになってるんです。
だって地球は丸いから…。
自転車を停めて横に目をやると
山々の絶景が。
上り坂でかいた汗の嫌らしさも
吹き飛ぶような
さわやかな光景。
これをずっと眺めながら走れるのは贅沢。
午後の休憩中に悲劇が…。
少し自転車から離れた間に、
ナップサックに入れてた
10本あったはずのシリアルバーが
2本に減っているではないか。
犯人はまだ遠くないはず。
あたりを見回すと
頭上に「カァ、カァー!」と黒いカラスが2羽。
せっかく安くまとめ買いしたのに。
せっかく朝お金を頂いて良いことがあったのに。
何かを得ると、まわりまわって何か失うようになってるんです。
だって地球は丸いから…。
夕方からかなり急な上り坂へ。
きょう出発したジャスパーの
標高は1,400m。
バンフに向けては2,000mに達する
峠を2つ越えなければいけません。
まさに1つ目の峠に差し掛かったところ。
せっせと漕いでいると
羊の大群が道をふさぐ。
観光目的で来てるドライバー
ばかりなので、動物が現れると
みんなスマホでパシャパシャ。
たちまち渋滞が起こります。
坂を上り始めて1時間半。
ようやく頂上に近づき
道も平らになりました。
すぐそこに迫った雪の壁の迫力。
自分の足で来たからこそ感慨深く
じっと見とれてしまいます。
予定していたキャンプ場が
まだ開業しておらず。
けど誰もいないのでしれっと侵入。
後から聞くと、今年は冬が長く
開業時期がずれ込んでいるようです。
2,000mで過ごす夜は寒い。

ジャスパー出発2日目。
スタートから一気に峠を下ります。
曇り空と標高のせいで空気が冷たい。
手袋をしてしっかりブレーキを握る。

昨日さんざん上ったぶん
高所から見下ろす谷間の景色が
最高に美しい。
“ロッキー山脈”の名の通り
無骨な岩肌が見渡す限り
どこまでも広がっている。
今日はリレーマラソンの大会だそうで、
たくさんのランナーが汗をたらし
激坂を上っていました。
対向車線側の路肩を走ってるんですが
そっちの方が安全なのだろうか。
この景色の中走るのは楽しいだろうな。

ちょうどお昼頃、
坂を下り切るとレストランを発見。
観光客でにぎわっております。
「ちょっと飲み物を」
と売店に向かうと、
ジュースが1缶¥550。
“だろうね、観光地だもんね”と
手ぶらで外へ。
ただでさえ円安で苦しいのに
こんなとこじゃ買い物できません。
レストランの良い匂いを嗅ぎつつ
インスタントラーメンをすする。
そして午後からは
昨日に続いてまたも
2,000mの峠越え。
傾斜は緩やかなものの
上り坂が30kmも
続いています。
午前中、空を覆っていた雲が流れ去り
太陽がさんさんと背中に照り付ける。
朝の出発時はあんなに寒かったのに…。
寒暖差が激しいだけでなく
標高も絶えず変わるので
どの服装が正しいのか分からない。
そして午後4時、峠の頂上へ。
標高2,069mは
カナディアンロッキーにおいて、
そしてカナダの旅路においての
最高到達点です。
あとはここから下るだけ。
夜寒いから少しでも標高を下げようと、
20kmほど進んだ先にキャンプ場を発見。
かなり混んでおり“どこか空いてないかな”
とキョロキョロしてると、
一人のおじさんが「ここに張れよ」と
招いてくれました。ラッキー。

ジャスパー出発3日目。
すでに山場となる2つの峠を越えており
ウイニングランの気分でのんびり漕ぎだします。
久しぶりのクマちゃん、13頭目。
かなり道路に近いですが
無心でタンポポを
頬張っているようです。
獣というにはあまりに可愛く
もはや黒いパンダ。
バンフまで50kmほどの所、
これまで走ってきたハイウェイと並行して
この時期限定の自転車専用道が
敷設されていました。
車もおらず静かな道を
気持ち良く進んでゆく。
バンフの町が近づくほどに
サイクリストが増えてきます。
ちょうど週末でもあり
数えきれないほどの人に
追い越されていく。
荷物なしでまた走りたいほど良い道。
ちょっと休憩していると
隣のほうから日本語が聞こえるではないか。
「日本の方ですか?」と
尋ねたのをきっかけに会話は盛り上がります。
“ジョンさん&ヒロミさん”ご夫婦はバンフ在住20年以上。
かつて日本人向けのツアーガイドをしていた夫のジョンさんも日本語ペラペラ。
なんやかんやと気づけば1時間近く道端で話し込みました。
(※ご本人の希望もあり写真は控えます)

夕食のお誘いを受けて、ご夫婦とは一度お別れ。
バンフの町に到着するとキャンプ場に向かいました。
テキパキとキャンプの準備をしますが、写真の通りテントが二つ。
実はバンフではある方と会う約束をしてたんです。

それが日本人サイクリストの中野亘さん。
過去にヨーロッパやアフリカを走破しており、
今回はカルガリーから北極海へ、
つまり僕のきたルートを逆へと旅されるそう。
偶然、時期も場所も近いということで
連絡を取り合っておりました。
一通りテントを整えると、中野さんと共に
中心部にお住まいの
“ジョンさん&ヒロミさん”宅へ。
晩御飯をごちそうになります。
久しぶりに話す日本語の会話が心地よく
楽しいひと時を過ごしました。

バンフ到着翌日は自転車を置いて
ゆっくり休むことに。
“トンネルマウンテン”に登れば町を一望できます。
午後からは町を散策。
ロッキー山脈のど真ん中に
バーやレストランなど賑やかな
お店が立ち並んでいます。
こないだまで一人ぼっちだったのに
周囲には人だらけ。
どうやら町にはラーメン屋さんまで
あるらしいとのことで
喜々としてやってきました。
その名も“ラーメン 嵐”。
日本人の方が経営されてるようです。
期待が高まる、よだれが垂れる。
看板メニューの“ブラック嵐ラーメン”。
とんこつをベースに黒ゴマのペースト
を加えることで濃厚さを増したスープ。
替え玉込みで24カナダドル。
美味しく食べるコツは
日本円に換算しないこと。

一日の終わりにはキャンプ場で
中野さんと遅くまで話し込みました。
海外を大陸規模で旅する
日本人サイクリストというのは
貴重な存在で、「そうそう!」と
互いの経験に激しく共感します。

偶然の出会いも含め、日本人の方々と
たっぷり時間を共にしたバンフでの滞在となりました。
カナディアンロッキーの景色をしっかりと心に焼き付けたら
いよいよカナダ最後の町・カルガリーに向かいます。
<訂正とお詫び>
前回のブログ“雨にうたれてジャスパーへ”にて、
「オスのムースを目撃した」と記述いたしました。
しかし、正しくは『ムース』ではなく『エルク』であることが判明しました。
混同してしまったムース様、エルク様および不快な思いをされた皆様に
心よりお詫び申し上げます。

2024.06.18
【61日目 3,830km】

現在、プリンスジョージを出発して
カナダ最後の都市・カルガリーを目指しています。
ただ平坦な道をのんびり進むわけではなく、
その途中に立ちはだかるのはロッキー山脈。

特に“ジャスパー”と“バンフ”
という二つの町は、
カナディアンロッキーの観光名所
として知られており
それらの町に立ち寄るのも楽しみにしつつ、
ペダルを漕ぎ始めました。
山脈の核心部に向かうにつれ
当然、標高も上がってきます。
斜度はそれほど急ではないけど
朝晩がまた一段と
冷え込むようになっています。
いつまでもジャケットが手放せない。
また1日のどこかで必ず
突然のにわか雨に降られています。
どしゃ降りとまでいかずとも
荷物は濡れるし、視界は悪いしで
とても大きなストレス。
今年はやはり降水量が多いそう。
夕方には付近で唯一の町
“マクブライド”に到着。
人口千人にも満たない
小さな町ですが、
最低限の補給はできるようで
助かります。

町のはずれに公園をみつけ
テントを張ることに。
“宿泊禁止”と書いてありましたが
地元の人曰く、
「誰も気にしないから寝ていいよ」
とのこと。

スーパーの品ぞろえが充実しており
なんやかんやと買ってしまいました。
南下してきたことで
新鮮な野菜も手に入りやすくなった。
ブロッコリーが¥200、
みかんが7個で¥400と悪くない。
アラスカ、ユーコンで
悩まされた食料調達も
ここからは大きく改善されそうです。
やはり北の大地で暮らすということは
何かと困難が付きまとうよう。
住むには南のあったかいトコが良い。

翌朝。
テントを片付けながら嫌な予感はしていたものの、
この日は旅立ち以来最悪といっていいほどの向かい風。
真正面から吹き付ける風は
ほとんど止む瞬間すらありません。
これから向かう山脈の方から
吹き下ろしているようなので
おそらく弱まることを望んでもムダ。
時速10kmでゆっくりと進んでいく。
加えて、やはり今日も
雨が降り始める。
もう漕ぐのやめようかなと
思っても、
雨風をしのげる場所すらない。
いやいやながら漕ぐしかない。
と思いきや、
次の瞬間には気持ち良く
青空が広がります。
雨が降ると気温も下がり
服の脱ぎ着が本当に面倒。
自然環境に翻弄されまくりです。
そして、また降り始める。
風だけでも辛いのに
体を濡らす雨が心から憎い。
たまたまロッジがあったので
しばし雨宿りをさせてもらうことに。
手が震えるほど、寒い…。

結局、予定の距離は走れず
70kmのあたりで
道路わきの休憩所にテントを
張ることに。
ここまで天候に悩まされることも
珍しい。
この休憩所、芝生がフカフカで
トイレもすごくきれいで
どこからかWi-Fiが飛んでくる、
という謎の最高キャンプスポットでした。
向かい風と雨に苦しんだ一日も、
最後には良いことが待っている。

そして、次の日。
前日の向かい風はどこへやら
穏やかな天候のもと朝から下り坂を気持ちよく
滑り降りていきます。
走りながら左手に見えるのは
“ロブソン山”。
多くの登山家が目指す名峰だそう。
雲がかかっているのは残念だけど
頂上付近の雪がかかった岸壁に
風格を感じます。
山脈の中へと入りこむにつれ
遠くに見えた雪山も
徐々にすぐそこまで
近づいてきています。
大きな坂もなく
割と平坦な道を気持ちよく進ます。
曇り空も、午後からは
気持ち良く晴れて
気温も上がってきました。
天気が良ければロッキー山脈の
美しさもより映えます。
空気も水も美味しく感じる。
よく見かけるのが
ビーバーの作ったダム。
周辺には前歯でガシガシ削った
木もたくさんあります。
でも肝心のビーバー本体を見ていない。
カナダを象徴する動物なのに。
そして午後3時頃、
ブリティッシュコロンビア州から
州境をまたいで“アルバータ州”へ。
ユーコン、BCに続く3つ目の州です。
時間も変わって時計を1時間進める。
日本との時差は15時間です。
ふと目の前に料金所が現れました。
ここからは国立公園内のため
滞在1日に着き¥1,200とのこと。
公園を抜けるのに6日は掛かるので
¥7,000あまり。
全く事前調査しておらずかなりショック。

そしてやってきました、
カナディアンロッキー1つ目の観光地“ジャスパー”。
建物も綺麗で、色んな国籍の人が練り歩いている
典型的な観光地でございます。

当然、町で野宿は禁止。
Warmshowerのホスト
“グレッグさん”宅にお世話になります。
娯楽としての自転車文化が根付く
北米ではオンラインコミュニティ
“Warmshower”が活発でとても助かる。

裏庭にテントを張らせてもらいます。
ただ、ホストのグレッグさん
多忙な方で外出も多く
滞在中ほとんどゆっくり話もできず。
ホント無料で泊めてもらうだけで
申し訳ない。

到着翌日は休養日にしてのんびり観光へ。
町から10kmほどの場所にある
“マリーンキャニオン”へ散策に出かけました。
数万年にわたって
川が削り出した渓谷は
深く鋭いゴツゴツとした
岩の彫刻作品のよう。
流れる水も澄み切って
傍を歩いていると癒されます。
野生動物の住処でもある
ジャスパー国立公園。
渓谷への道ではついに初めて
オスのムースを見ることが出来ました。
やはり普通のシカとは違う
神々しさがあります。
帰り道には
“ビッグホーンシープ”現る。
その名の通り
大きな角が印象的な羊です。
この辺りの個体は人に慣れてるのか
近づいても全然逃げない。
ジャスパーの町に戻ると中心部を散策。
ここに来るまで多くの人に
勧められたのが
“ベアパウズ(熊の手)・ベーカリー”。
「ジャスパー行ったら絶対食べて!」
と皆が言うので気になってました。
持ち帰って食べると
噂に違わぬ美味しさで、
シナモンロール(¥450)が
なかなかの絶品。
近くにあるとリピートしたくなる
一品でございます。

そしてついに、このジャスパーで
山火事前からの走行プランに復帰することができました!
かなりの遠回りでしたが、
その分違う景色も眺められたと満足しております。
カナディアンロッキーの綺麗な空気を吸って
疲れを癒したら、
さらに東へとペダルを漕ぎ始めます。

2024.06.14
【57日目 3,564km】

ガソリンスタンドでばったり会った
シャノンさんの歓迎を受けてひと晩。
朝起きると、手作りのグラノーラバーを用意してくれていました。
また一つ優しさを受け取って目的の街・プリンスジョージを目指します。

緩やかな起伏の続く16号線を
数日にわたって走ってきましたが、
やっとプリンスジョージに到着の日。
心地いい追い風を背中に受けて
青空のもと
快適に進んでいきます。

そして出発から4時間ほど、
お昼過ぎに70kmを走り切り
プリンスジョージ郊外にやってきました。
実はこの街には
何日も前から楽しみにしていた
場所があるんです。

それがこちら、「らぁめん屋 船頭」さん。
レネイさん宅で山火事避難生活を送っていた時に
Googleマップで見つけ、ずっと目をつけていました。
ついに、この時がやってきた…。

目の前に現れたるは“味噌ラーメン”。
深い大地の色をしたスープ。
触れずともその弾力を
感じさせるチャーシュー。
果てしない旅路のごとく細長い麵。
待ちに待ったふるさとの味、頂きます。
「走ってるときなに考えてるんですか?」
ってよく聞かれます。
そこで、“人はなぜ生きるのか”とか“本当の幸せとは何か”とか
そういう哲学的な答えを提供できるといいのですが、
実際は“ラーメン食べたい”と“牛丼食べたい”が日替わりで頭を駆け巡っています。
和食に限らずとも、そもそもまともなレストランすら無かったので
飢えに飢えて、よだれはダラダラ。
ここ数日はラーメンの事ばかり考えて走っていました。
“本当の幸せ”ってラーメンのことですよ。

会計時、日本人のご主人が
「がんばってね」と手渡してくれたのは
おにぎり。
一口かじるとおかかの旨味が
ほわっと広がりました。
異国で味わう日本の味は最高です。

満ち足りた心と胃袋に最高の満足を感じながら
プリンスジョージの中心部へ。
特段、見どころはないらしいのですが
ずっと森を走ってたので街の景色にほっとします。

まず向かったのは自転車屋さん。
アフリカ大陸を走り切った
前輪のタイヤにガタンガタンと
違和感を感じていたんです。
内側のワイヤーが切れているらしく
新品と交換してもらいました。

プリンスジョージでお世話になったのは
Warmshowerのホストファミリー、“ロブさん”ご一家。
この辺りによく見る平屋の可愛らしいお家。
ロブさん宅もそうですが、大体地下に広い部屋があるんですけどね。

奥さんの“ナタリーさん”と、
言葉はまだほとんど話せないけど
“ノー”だけははっきり言う
一歳半の“アーサーちゃん”。
ほのぼの家族タイムを
ご一緒させてもらいました。

ご飯もお世話になりました。
走行中はなかなか食べない
肉と野菜が嬉しい。
お刺身とかも大好きですけど
意外と食べたくならないです。
体が味の濃いものを求めている。

滞在中はほとんど雨で屋内で
パソコン作業するばかりでしたが、ゆっくり疲れを癒すことができました。
ロブさんご一家(※真ん中はお友達)、素敵な時間をありがとう。

プリンスジョージでひと休みすると、
東に向かって大都市・カルガリーを目指します。
カナダの旅路もあと2週間ほどだろうか。
引き続き16号線を真っすぐ。
プリンスジョージを少し離れると
交通量がぐっと減りました。
僕が走っているルートがそうなのか
カナダって本当に
人も車も少ないです。
シャロンさんがくれた
手作りシリアルバーが美味しい。
ていうか手作りできるものなんだ…。
北米旅はゲストハウスに泊まってないので
料理をする機会が少ないです。
たまには自分で思うように料理がしたい。

100kmほど走って道路わきにあったのは
原生林の保護地区。
ロブさんから聞いており、立ち寄ってみることにしました。

遊歩道を歩くと
背の高いスプルース(マツ)が
うっそうと広がっています。
さんざん森を眺めてきたけど
ここまでしっかり中に
踏み込むのは初めて。
あまり街らしい街をたくさん
通過しないまま
出国してしまいそうだけど、
この原始林こそがカナダらしい風景
なのかもしれない。
雄大な自然に圧倒されます。

原生林の入り口に東屋があったので、
そのままテントを
張らせてもらうことに。
水も手に入るし
いい野宿場所になりそうです。
屋根があるので雨でも安心。
プリンスジョージのスーパーにて
たっぷり買い物を済ませました。
どんどん充実していく調味料たち。
ただ食べて終わりでなく、
楽しく美味しいキャンプ飯が
長旅の秘訣です。

ターメリックなどの香辛料を加えることで
クスクスが、より本場・北アフリカに味に近づきつつあります。
昔から大っ嫌いだったレーズンもクスクスに入れると
美味しく食べられることが判明。
至高のクスクスを求める旅、まだまだ続きます。

2024.06.11
【53日目 3,341km】

スミザーズを出発すると、16号線を東に走り始めます。
ここからひとまず目標にするのは“プリンスジョージ”という大きな街。
郊外には自転車専用道もあり、
このあたりが
しっかりと管理された街であることがわかります。
道路脇には初めてビニールハウスが。
ここまで畑も何もありませんでした。
玉ねぎが1玉¥300もしたのは
円安だけでなく、
作物のできない地理的な要因も
かなり大きいように感じます。
ランチはヨーロッパあたりでも
お世話になった
インスタントマッシュポテト。
1袋¥150ほど。
香辛料で味整えれば
飽きずに美味しく食べられます。
町が増え便利になったぶん
景色は一層退屈になりました。
動物注意の看板も見るけど
出てきそうな雰囲気はありません。
道路わきで草を食べる
ブラックベアが恋しい。
途中の町ではじめて
セブンイレブンを発見。
マツダ車まで停まってると
まるで日本と変わらない風景。
というか、もともとこっちの店なので
日本がアメリカナイズされてるだけか。
最近、胃袋が大きくなっているのか
食欲が爆発して困っております。
そこに町があればつい何か買ってしまう。
ホットドッグとジュースで¥800、高い。
経済的にも健康的にも宜しくない。
自粛せねば…。
100kmほど走って
「トップリー」の町に到着。
野宿できるところはないかと
きょろきょろ探すと、
道路わきに休憩スペースを見つけ
テント泊をすることに。
スミザーズで買い物したので食料は充実。
モロッコでよく食べた“クスクス”を入手。
今までなんで作ってこなかったんだろう、
というほど簡単で美味しい。
キャンプ飯のレギュラーメンバーに抜擢です。
これは日本帰っても食べ続けたい。

スミザーズ出発2日目。
明け方からポツポツ降っていた雨がいつまでも
止む気配がない。
はぁ、と重い腰を上げて出発準備をします。
雨の勢いが収まらない上に
割と長めの上り坂。
地面から跳ね上がる泥に汚れながら
無心でペダルを漕いでいく。
プリンスジョージまでは
あと3日ほどか。

昼頃にやっと
気持ち良く晴れてくれました。
ちょうど上り坂も走り終え
快適な気分で坂を下り始める。
地元の人曰く、これからしばらくは
毎日雨模様とのこと。
昼過ぎに“バーンズレイク”という
町に到着。
町に着くと油断して
つい何か食べようとしてしまうので
我慢、我慢。
無駄使い禁止。
朝とうって変わって
午後からはスカっと晴れた青空のもと
平坦な道をスムーズに駆け抜けていきます。
調子がいい時は平均速度25km/hほど。
スピードに乗って走り抜けると
やっぱり気持ちがいい。
行動食にとスーパーで買った
バナナチップとダークチョコ。
美味しすぎて一気に食べてしまい
行動食として適さないことが発覚。
安くてお腹膨れて
あまり美味しくないことが大事です。
勢いにのり120kmをはしり
“フレーザーレイク”に到着。
毎日のように町があると
本当に気持ちに余裕ができます。
ただ、これが続くと
旅が退屈になる気がする。
湖のほとりに
とてもきれいに管理された
無料のキャンプ場がありました。
青々とした芝生もあり
間違いなく
気持ち良く寝られるはず。
前日に引き続きクスクス。
パスタの一種なので
どんな味付けも合います。
調味料を充実させて
バリエーションを増やすのが楽しみ。
いやぁ、良いものに出会えた。

スミザーズ出発3日目。
朝から天気が良く、道も穏やかな様子。
50kmほど走り
昼には「バンダーフーフ」という
小さな町に到着。
プリンスジョージまでは
150kmほどでしょうか、
順調に進んでいます。
町をまっすぐ抜けて
15kmほど進んだところ。
時間的にはまだまだ走れますが
今日は約束があって
寄らなきゃいけない
所があるんです。
国道を横にそれると
森の奥へと続く小道が。
本当にここであってるのか、
と不安になりつつも
ゆっくりペダルを
漕ぎ進めてみることに。

小道を1kmほど進むと三角形の可愛らしいお家を発見。
「ワン、ワン」と元気の良い犬の鳴き声が聞こえていました。
ガチャっと、玄関を開けて出てきた女性は
“シャノンさん”。
4日前、スミザーズの手前の
ガソリンスタンドでの休憩中に
声をかけてくれたシャノンさん。
「何日か走ったら私の家の前を
通るはずだから、ぜひ泊まってって!」
とお誘い頂いておりました。
二人そろって公立高校の
先生だというシャノンさんご夫婦。
自転車がお好きだそうで
僕を見て声を掛けずに
いられなくなったのだとか。
本当にありがたいです。
晩御飯は旦那さんが狩ってきた
鹿肉のトルティーヤ。
新鮮なシャキシャキ野菜の食感も最高で、
遠慮もなく食べまくってしまいました。
がっついてしまって
ホント、お恥ずかしい…。

野宿時が質素な食事ばかりということもあってか、
高たんぱくで栄養価の高いものをたくさん食べると
夜眠れないということが、貧乏旅において多々あります。
多分、胃がビックリしてるんでしょうけど
「年のせいかな…?」
とか考えながら、悶々としたままベッドで起きてました。
年かな…。

2024.06.6
【50日目 3,042km】

山火事を避けやってきた「ハイウェイ37」も、いよいよ終盤。
ここを走り切り、別の国道に合流すると
いっきに人も町も増えるとのこと。
メジアディンのモーテルを出発し、今日も走り始めます。
ここ数日全く雨の降らない日が
ほとんどなく、
一日のどこかで雨に濡れています。
道が湿るとゆっくり腰を
落ち着けるところが
なくなるから嫌だ。

休憩中に前方からやってきたのはベルギー人
サイクリスト「フランソワ」さん。
10年近く世界を自転車で旅しているそう。
今回はメキシコから北上しており
僕とは真逆に走っているとのこと。
ルートの情報共有をします。
生粋の自転車好きであるフランソワさんは
毎日140kmも走るそう。
僕は大体100km前後ですが、
ここしばらく刺激が少ないので
今日はちょっと長めに
走ってみることにする。

15時頃、またもや向こうから
やってきたのはスペイン人サイクリスト
「セルジ」さん。
僕が旅のゴールとしている
アルゼンチン・ウシュアイアから
16ヵ月かけてやってきたのだとか。
北米旅においては
ほとんどサイクリストと会ってなかったのに
ここに来て連続で遭遇しております。
珍しい存在だけに
言葉以上に分かり合える気がする。
たまには誰かとキャンプもしてみたいな。
ベルギーのフランソワさんに触発され
予定以上の130kmを走破した19時頃。
ギタンヨーという小さな集落に到着。
当初は森の中でのテント泊を
予定してたので、
小さな商店があるのがとても嬉しい。

自転車でアンカレッジから来たことに
感心してくれた店のお兄さんが
「何か注文しなよ。ごちそうするから」
と嬉しい一言。
チキンフライとポテト…。茶色い。
深い森の集落に新鮮な野菜などありません。
そのままお店の横に
テントを張らせてもらいます。
Wi-Fiも届くし、
トイレ使って良いらしいし、
地味に最高なキャンプスポット
となりました。

翌朝。
今日はここ数日走ってきたハイウェイ37の最終日。
8時過ぎに少しウキウキして走り始めます。
そしてスタートから
20kmばかり走った所、
16号線との合流地点。
ひとつの節目としていた場所に
たどり着くことができました。
「やっとここまで来れたんだ」

この地点はただ道路が合流すること
以上の意味を持っていました。
16号線を東に向かうのですが
ここから先は
多くの町があり
多くの人が暮らしているんです。
つまりアラスカから永遠とも思われるほどに
続いてきた針葉樹林帯の終わり。
国としての“カナダ”が味わえるのはこれからなのかもしれません。
缶詰とポテトチップスしか手に入らない集落や
目の前に川があるのに凍って水が手に入らない
なんてこともおそらく無くなるはず。
北の大自然も素晴らしいのですが、来る時期が早かったばかりに
モノが手に入らない日々が苦しかったんです…。
町が続くとまた大自然が恋しくなるんだろうけども。

お祝いに
曲がり角のガソリンスタンドにて
ピザとコーラ。(¥500)
円安の影響も
カナダにいる内は若干マイルドです。
またアメリカに入るのが怖くて怖くて…。
写真では伝わりにくいかも知れませんが
道路が広くきれいに、
そして交通量も増えました。
起伏はあるもののこれまでに比べて
急なアップダウンは少ないです。
のんびりと気持ちにも余裕が出てくる。
数百kmにひとつしか集落がなかったのに
ちょっと走るだけで
いくつもの町を通り抜けます。
残りの食料もさほど気にしなくて
いいので嬉しい。
どこにでもスーパーがあります。
100kmほど走ったこの日、
ウィットセットという町で
キャンプ場に泊まりました。
値段は¥2500。
町に来ると野宿場所を探すのが
大変になりそう。

続いて翌日。
本当は休養日に充てようと思っていたのですが、
少し進んだ先に大きな街があるようなので
ちょっとだけ進むことにします。
本来は1週間に1~2日ほど
走らない日をもうけて
写真整理したり本読んだりしたいですが
何もない深い森が続いていたので
進むしかないという状況でした。
旅はのんびりがいいに決まってる。

30kmほど走って着いたのは「スミザーズ」。
お店もいっぱいあって
ここで色々なものが揃えられそうです。

町に着いてすぐ向かったのは
インド料理屋さん。
とにかくハンバーガーと揚げ物以外で
お腹を満たしたい。
和食じゃなくてもアジアの食べ物は
血管まで深く浸みわたる。
町の外れに、綺麗で
雰囲気の良いキャンプ場を発見。
まだお昼過ぎだけど
ゆっくり休むことにします。
これでもうちょっと暖かくなったら
最高なんだけどな。

隣にテントを張っていた皆さんと一緒にディナー。
なんと彼ら消防士で、僕も大きな影響を受けた
フォートネルソンの山火事の応援に行っていたそう。
ちなみにまだ道路は封鎖中らしいです。
大自然から少しずつ文明の中へ、
引き続き進んでいきます。

2024.06.2
【47日目 2,762km】

ただ今、山火事を迂回して“ハイウェイ37”を走行中。
地域で一番大きな町「ディーズレイク」を出発します。
町にはスーパーがあるので、出発前にここで買い物をしておく。
アラスカ出発から一か月余り。
道中どんなモノを食べているのかご紹介してみます。
主食のミニットライス(アルファ米)。
熱湯を注いで5分待つだけの
要はインスタントライスです。
700g(7日分程度)で¥900。
次のアメリカまでは
お世話になりそうな予感。
たんぱく源のツナ缶。
パスタでもライスでも
入れておけば食べ応えが増します。
1缶¥350ほど。
味のバリエーション豊富なので
日替わりで試してます。
お昼に食べがちなのは“サッポロ一番”。
1袋¥150くらい。
どこにでも置いています。
基本、具は玉ねぎだけ。
大きい街に着いたら
本当に美味しいラーメン食べてやる。

走行中につまむ行動食は
その都度あるものを買いますが
この時はバナナとデーツ(ナツメグ)。
デーツはユーラシア、アフリカと
どこでもお世話になってきました。
375gで¥600。
物価が高いからこそ、
安く実現可能なレシピを探そうと張り切っていましたが、
ここまでしっかりしたスーパー自体が少なく
あまりバリエーションは増えておりません。
カナダ南部~アメリカにかけてはもっと
美味しく安いレシピを見つけてみせる。

買い物を済ませると「ディーズレイク」を出発。
この日は大きな峠を二つ越える行程。
気合を入れて走り出します。
ドライバー達が
「この先はすごい上りだぞ」
というからビビってましたが、
いざ上るとそうでもない。
車と自転車では
道の見え方がちょっと違うんです。
思いのほか順調に
峠を越えることが出来ました。
休む町がなく毎日漕いでると
脚が強くなっていってしまう。
本当はもっと観光もしつつ
のんびり進みたいのに。

二つの峠を越えた夕方
「イスカット」という集落に到着。
小さな商店がありました。
ただ、今朝しっかり買い物を
済ませているので買うものが無い。
のぞくだけのぞいてみる。
中に入るとレストランまでありました。
今朝たっぷり買い物を済ませたのに
結局贅沢をしてしまう。
ポークの煮物が¥2,000あまり。
高いけど、どこで何を食べても
これくらいです。
さらに10kmほど走って
湖のほとりにテントを張る。
そういえばハイウェイ37に入って
熊を見ていません。
このあたりはいないのだろうか、
安心して眠らせてもらいます。

やけに冷え込むと思っていたら
雹が降り始めました。
とにかく日毎の寒暖差が激しい。
もう凍えて眠ることはないと
思っていたのに。
おそらく氷点下であろう…。

ディーズレイク出発2日目。
朝から身を切るような寒さです。
バッグの奥にしまった手袋をまた取り出して走り始める。

山や湖の間をつっきる
ハイウェイ37。
平坦な道が続くことは少なく、
常に上るか下るか。
なかなかスピードに
乗ることが出来ない。
休憩中に出会ったご夫婦。
「私、地元に日本人の友達がいるのよ。
彼女と英会話の練習をしたりするの」
と嬉しそうに話す奥さん。
“あぁ、そうなんだね”と
ここまではホントによくある会話でした…
ただ、続く奥さんの言葉にビックリ。
「その友達、日本で歌手活動してるのよ。“UA”っていうんだけど、あなた知ってる?」
いやいや知ってるも何も、とんでもないビッグネームでございます。
UAさん、カナダに家を買って日本と往復しながら暮らされているそうです。
(※ご本人も公表されています。)
久しぶりにクマちゃん登場。
休憩所のトイレを覗いておられます。
トイレから出てきてこの距離で
クマいたら心臓止まるだろうな。
向こうが逃げることが圧倒的に
多いみたいですが。
少し走るとまたクマちゃん。
足元の草を食みながら
こちらをじっと見てきます。
冬眠明けだし、新芽出てるしで
とにかく遭遇率高いです。
8頭目。

夕方、道路わきの休憩所にて
テントを張る。
風を避けるために
キャンピングカーの横で寝ます。
交通量もさほど多くないので
音も気になりません。
夕食はミニットライス。
野菜ブイヨンにツナと玉ねぎ、
すっかり体が旅モードになってるので
食欲がとても旺盛でございます。
常に何か食べてたいほど
いっつも腹ペコ。

ディーズレイク出発3日目。
写真の真ん中の黒い点がお分かりでしょうか。
ブラックベアは本当に毛並みが真っ黒なので、
遠くからでもすぐに発見できます。
さらに近くにも出現、10頭目。
というか自転車に鈴ぶら下げて
チリンチリン鳴らしてるんですが
全然逃げないではないか。
カナダ北部ではクマを避けて
旅することはできないようです。
天気は良いけども景色は変わらない。
カナダの針葉樹林帯は
世界の森林面積の10%を占めるそう。
自転車で走るとよくわかるそのスケール。
アラスカから一か月以上走り続けても
とにかく森が途切れることが無いんです。
100kmを走ってこの日も
道路わきの休憩所にてテント泊。
芝生もあって良い場所じゃんと
スヤスヤ眠りましたが、
後に知らない所で他人に迷惑を
かけていたことを知ります。

ディーズレイク出発4日目。
朝から緩やかな上り坂をゆっくりゆっくり
進んでいきます。
そして2時間ほど走り30km進んだ地点でのことでした。

後ろからやってきたパトカーに
停められました。
「キミひょっとして昨夜、
道路横の休憩所で野宿してた?」
警察に話しかけられるとヒヤリとします。
「うん、してたけども…。」
聞けば、昨夜未明
置いてある自転車を目撃したあるドライバーが
“何もない森のなかに自転車がポツンとあるのはおかしい、事件だ!”
と通報したのだとか。
(暗くて、横に張ってあるテントが見えなかったそう。)
駆け付けたお巡りさんが、自転車の持ち主を探して
この辺りを何往復もしたのだとか。
「何事も無いなら良かったよ。では気を付けて!」と
パトカーは去っていきました。
なんか、ごめんなさい…。

昼前には“メジアディン”という
集落に到着。
延々と続く深い森を走ることで
心も疲れています。
この日はモーテルに泊ることに、
束の間の休息。

¥10,000くらいだけど、この辺りでは安い方。
部屋を見てみるとすごく簡易的。
観光客よりも、道路工事の作業員たちのための施設のようです。
早く森を走り切って人の住むところに行きたい…。

2024.05.30
【43日目 2,422km】

レネイさん宅でお世話になること1週間。
再び彼らのトラックの後部座席に揺られています。
山火事は収まる様子を見せず、どうやら道路は
1~2週間の内には開きそうもないことが分かりました。
僕が2週間前に通過したワトソンレイクに夫妻が買い出しに行くというので、
一緒に乗っけてもらい遠回りして
ワトソンレイクから自転車を漕いで南下することに決めたのです。
自転車乗りとして一番嫌なのが“来た道を戻る”という行為。
これまでの努力が水の泡になった気がするし、
「一度見た景色なんか見たかねぇやい」って気分です。
ひょっとしたら道路が開くかもなんて期待もあり
ひとつのギャンブルではありましたが、
せっかく海外まで旅に出たのにただ待つだけの日々を送る
というのも気が進まず、決心しました。
道中にはやはりブラックベアが。
遠くから見ると可愛らしいですが
車で近くから見ると
やはり迫力があります。
でも、彼ら見た目に似合わず
タンポポとか草を食べるんですよ。
300kmあまり走って
ワトソンレイクに到着。
二番目に近い街が300kmって
どんだけ町が無いのか…。
さんざん一緒にご飯を食べたけど
このランチがいよいよ最後です。

買い物を済ませると、ついに彼らと別れ
走り出す時が来ました。
偶然通りかかっただけなのに、本当に優しくもてなして頂きました。
今回の旅でこんなにも長い時間を共にする人は
ひょっとしてもういないかもしれません。
レネイさん、クリスティーナさん、本当にありがとう。

手を振りながら去る二人を見送ると
一気に寂しくなりました。
これから走るのは“ハイウェイ37”という道路。
平常時は交通量が少なく、道も狭くあまり整備されてないそう。
曇り空だし、なんか心細いんですけど。
しばらく進むと、
辺りは焼け焦げた森でした。
今回の火事とは別に
数年前にこの辺りも
ひどく燃えたそうです。
かなり広い範囲が焼け野原。

60km走った夕方。
川辺に無料のキャンプサイトを
発見し、テントを張る。
しばらくベッドで寝てたのに
テント張るとすぐアウトドアモード
入れちゃうから不思議です。
レネイさんおすすめの
インスタントライスが絶品。
もう少し南下したら
スーパーが増えるので
キャンプ飯のバリエーションを
増やしていこう。

再出発2日目、この日は朝から雨。
基本ネットも通じないし、
天気予報をチェックする習慣がありません。
そういえばこんなもの持ってた
とバッグ用のレインカバーを初使用。
小屋の一つもあれば
雨宿りしたいけど、
何もない森が続けば
ただ前進するしかありません。

昼に小さな集落に到着。
郵便局の前で
ラーメン休憩です。
体も濡れて、雲もかかって
一気に冷え込む。
春はまだなのか…。

すると、午後から噓のように
綺麗に晴れ渡りました。
思えば今のところ
カナダでは終日雨というのは
経験していません。
日本が雨多いのか…。

午後4時頃。道路わきに
カフェを見つけ休んでいると、
あっという間に雲がかかり
今度は雹(ひょう)が。
なんだか今日は
情緒不安定な空模様。

そして数十分で
また綺麗に晴れ渡る。
もう全く予想ができません。
ただ、どんな悪天候も
どうやら一時的なので
あまり気にせずに進んでいこう。

今日も川辺に丁度いい場所を
見つけてテントを張る。
人が少なくて良いのは
どこでもキャンプができるということ。
アメリカ入ったらどこでもって
ワケにはいかないだろうな。

再出発3日目。
今日はどうやら天気が良いみたい。
何日も変わらない景色をまた走り出す。

寒暖差が激しく
なんとも言えないですが、
暖かい日は暖かいです(当たり前)。
まっすぐ南に下りているので
1日でも早く半袖で走れる日が
来ることに期待。
100kmばかり走って
「ディーズレイク」に到着。
ハイウェイ37では最も大きい町
らしいけど、大したことはありません。
無限に続く森が若干
ストレスになりつつある…。

シャワーを浴びたかったので
初めてキャンプ場に泊まりました。
¥2,000ほどで
ヨーロッパと同じくらいかな。
熊の心配をせずに
夜中ぐっすり眠れるだけでメリット。
フォートネルソンの山火事を受け、
一時はどうなることかと思いましたが
何とか再び前に進み始めることができました。
遠回りするのが億劫だったけど、
やっぱり走ってる日々の方が楽しい。
少し時間はロスしたけど焦らず進んでいきます。

2024.05.26
【38日目 2,178km】

火事に燃えるフォートネルソンの手前で
レネイさん&クリスティーナさん夫婦に救助され、
火災現場から200km離れた田舎の集落“トードリバー”に滞在中。
当初、「翌朝には多少落ち着いて通過できるようになるでしょ」と
思っていたものの、
随時更新される情報をチェックしていても
被害状況は広まるばかり。
火の手は徐々に町の中心部へと近づき
住民避難の最後通告がなされるなど、まさに非常事態の様相。

レネイさん達もご近所さんと朝からそわそわ話をしており、
この地域の人も決して慣れているわけではないご様子。
多くの方の日常が脅かされており、
旅が滞っている僕のモヤモヤなんてちっぽけなものです。
レナイさん達と色々お話をする中で衝撃的だったのは
「ゾンビ・ファイア」なるものの存在。
BBQ後の木炭が消えたと見えて実はくすぶっているように、
消火したとされる火事が雪の下で微かに燃え残ったまま冬を越し、
湿度が下がり気温の上がる春の時期に再び大きく燃え始めることがあるそう。
乾燥がひどく自然火災の多い北米大陸西部に起こりうる現象だそうです。
今回のフォートネルソンの件も、
もともと2か所で“ゾンビ・ファイア”が確認されており
そこに人間の過失が加わり一気に燃え出した可能性が高いとのこと。
そもそも“一つの町が燃える”なんてことが
日本人の感覚からすると想像を超えてるわけですが、
「へぇ、まだまだ知らないことがあるんだねぇ」と呑気に感心しております。

“一つ町が封鎖されたなら
ちょっと避けて通ればいいじゃん”という話なのですが、
ここもだいぶ日本と事情が違うところでして。
世界第二位の面積を誇りながらも、人口は3000万人ほどのカナダ。
特に北部は人口密度がとても低いんです。
となると町の数が少なく、そのぶん道路もシンプル。
日本のように網目状にはなっておらず
一か所が閉じるともうほとんど動けない。
さらに先に目指している南の町に向かって遠回りするとなれば
1,500km、つまり日本の本州ほどの距離を
進む必要があるわけでございます。
それで、どうにも困っているわけでございます。

“ひょっとしたら1週間近く道路が封鎖されたままかも…”
ということで、
庭に停めてあったRV(キャンピングカー)を開放してもらいました。
庭もデカいし、車もデカい。

電源、Wi-Fiもバッチリ、
写真整理やブログの更新も
のんびりできそう。
ご夫婦は引退したら
このキャンピングカーで
ヨーロッパを旅するのが夢だそう。

もちろんベッドも完備。
クリスティーナさんが丁寧に
ベッドメイキングまでしてくれました。
下手なホテルよりずっと良い。
避難生活が長引くと
テント生活が嫌になっちゃいそう…。

夫のゴリ…、レナイさんは大工で
週末は家の周りで色々とDIYをしています。
クリスティーナさんは先生で、
家のすぐ隣にある全児童6人の小学校で授業をしています。

「1週間も一緒にいたら
俺たち大親友になれるな!」
とレナイさん。
大親友どころか大恩人でございます。
本当に素敵な人に
助けてもらうことができました。

家庭の食事は料理好きの
レナイさんが担当。
お礼に何か僕からも
ごちそうをと思いつつも
町が封鎖されて
買い出しに行けないのがもどかしい…。
せっかくここまで調子よく走ってきたのに…。
乾燥がひどくて顔パリッパリになるし。
何日も経てば、やることも無くなるし。
毎晩ベッドは気持ち良いし。
レナイさんの作ったチーズケーキ美味しいし。
2匹の大型犬めちゃめちゃ可愛いし。
Wi-Fi調子良くて動画見放題だし。
読めてなかった本たっぷり読めるし。
避難生活さいこ…、
いや、一日も早く火事が収まりますように。

2024.05.24
【35日目 2,178km】

温泉で心も体もリフレッシュした翌朝。
次に目指す町“フォートネルソン”までは320km、
ここから3日あれば着けるはず。
のんびりと朝食を済ませるとまたペダルを漕ぎ始めます。
リアドホットスプリングスを出発すると
ほどなく山岳地帯に突入。
このあたりは“カナディアンロッキー”
とも言われ、
北米大陸を5,000kmにも渡って貫く
ロッキー山脈の北部の起点です。
この日、朝から悩まされたのは
真正面から吹き付ける向かい風。
ペダルを踏みこむ足がすごく重たい…。
この強風が結果として、
翌日に訪れる“予想だにしない展開”の
一因となります。

道の両側を山が挟んでおり
風向きが変わることがありません。
南から吹き上げる風は絶え間なく、
休憩中も吹きさらされながら
バーナーでインスタントラーメンを
作ります。
標高400mほどの温泉地から
最高1,200mまで上る行程。
勾配がキツくはないですが、
アップダウンを繰り返すのが
精神的に答えます。
上っては下りを繰り返すのが辛い。

標高1,000mに近づくと景勝地でもある
“マンチョレイク”を通過。
湖面は凍っており、
脇の道路を走ると寒いです。
疲労と曇り空も相まって
心細い気持ちになる…。
ふと道に現れたのは、この地域にしか
生息しない「ストーンシープ」。
くるんと曲がった角が特徴です。
自転車のハンドルもくるんと
曲がってるので仲間だと思ったのか、
全く逃げるそぶりを見せない。
19時頃、やっと
この日の最高地点1,200mに到達。
結局向かい風が止むことは
ほとんどなく、
終日必死にペダルを踏みこんでいました。
そして下り坂を一気に下る。
坂をひと通り下って、
茂みの中にテントを張る。
あまり良い場所でもないけど、
疲れ果てたこの日は
もっといい場所なんて
探す余力もありません。

温泉を出発して2日目。
明日には“フォートネルソン”に着けるはず。
町には中華レストランもあるらしく、
「グフフ…」と妄想しヨダレを垂らしながら走り始めます。

平坦な道を2時間ほど走ったあたりで
“トードリバー”という集落に到着。
ロッジ兼レストランがあり
クラブハウスサンドを注文してしまう。
この“トードリバー”、思わぬ形で
忘れられない場所になります。
昨日、南に向いていた道路が
大きく曲がり今日は東向きに。
おかげで前日から吹き続ける
強風が追い風になってくれました。
誰かに背中を押してもらっていると
感じるほど力強い風です。
立ちはだかるのは前日を越える
標高1300mの峠。
ただ、やはり傾斜は緩やかで
時間さえかければ着実に上っていけます。
頂上付近の景色は本当に美しい。
写真を撮りつつ、のんびり進む。
夕方17時にサミットレイクという
峠を越えると、20kmにも及ぶ
長い下り坂が待っていました。
対向車もほとんどおらず
気持ち良く風を切って下ります。
峠の後のご褒美が最高。

そして、坂を下り切った夕方18時前。
僕は地元の方の運転する車の後部座席にちょこんと座っておりました。
実はこの数分前、僕は予想すらしていない出来事に
巻き込まれ始めていたんです。
標高1300mの峠を下り切り、「このあたりでテント張ろうかしら」と
道端できょろきょろしていた時のこと。
60代のご夫婦が乗った1台の車が前方からやってきました。
そして、僕のそばで停まった車からご主人が顔を出してひと言。
「フォートネルソン・イズ・オン・ファイア」(フォートネルソンが燃えてる)
町が燃えてる?ん?ん?どゆこと?
まさに言葉通りなのですが、理解が追い付きません。
落ち着いて彼らとやり取りをすると、
町の付近で発生した山火事が原因で道路が封鎖され、これ以上は進めないということ。
そして町へと買い出しに向っていた彼らも引き返しているところでした。
「もう先へは進めない。ここでキャンプは熊が出るからダメだ。
キミの選択肢は引き返す以外にない」
急に言われても、せっかく今日走った100kmの道のりを引き返すなんて
すぐには決心できません。
「いいから乗るんだ。俺たちの家の近くまで送るから」
ということで、荷台に自転車と荷物を載せると
彼らの家のある“トードリバー”、
つまり朝クラブハウスサンドを食べた集落まで引き返すことに。
レネイさん&クリスティーナさんご夫婦は
町へ向かう道中で僕のことを見かけており、火事だと分かったとたんに
“あのサイクリストを助けなきゃ”と思ってくれたそう。
「でも、これからどうすりゃいいのか」と
答えが出ないまま後部座席で揺られます。
そして、6時間かけて走った道のりをたったの1時間で戻ってしまいました。
「また明日、道路が通れそうなら送るから」ということで
彼らの庭にテントを張らせていただくことに。

ところがレナイさん宅でニュースをチェックすると、
強風の影響で火事は発生からものすごい早さで燃え広がり、
全住人3,000人あまりに避難指示が出ていることが分かりました。
「こりゃぁ、すぐには道路開かないな」とレネイさん。
どうやら火事からの避難生活、ちょっとのあいだ続いてしまいそうです。
はぁ、どうしよう…。

2024.05.19
【32日目 1,986km】

ワトソンレイクにて1日休養を挟み、
次なる町“フォートネルソン”を目指します。
1番の楽しみは道中に待つ“アレ”。
せっかくのモーテル泊なのでギリギリまで部屋で休んで、
お昼過ぎに出発です。
走り始めてすぐにユーコン準州から
“ブリティッシュコロンビア州”に突入。
道路脇にでかでかと
“バイソン”に注意の看板。
こんなに大きな看板は初めて。
といっても、
ここまでの道のりほぼ動物はいません。
どうせ何も出てこないんでしょ。
と思った矢先、前方にて
黒い物体がモゾモゾ…。
ついに出た!
バイソンではなくブラックベア!
「えっ!?どうしよう、どうしよう」
どう振る舞うべきか分かりません。
距離を置いて、じーっと眺めていると
ひょこっと立ち上がるではないか。
デカい、離れていても分かるそのデカさ。
2mはあるだろうか。
凶暴とされるブラウンベア(グリズリー)ほどではないにせよ
やっぱりデカい。
と、向こうも若干驚いた様子で茂みの中へと逃げ込んでいきました。
初めての遭遇にビビりまくったけれど、何とか事なきを得た…。
気を取り直して走り始めると
わずか100mのところで
バイソン登場!
いやいや、「初めまして」が多い!
もっと間をおいて出てきてください。
こっちもビックリするから。
巨体におののきつつも、
やはり牛なので動きはおっとり系。
しばらく互いに見つめあいながら
そぉっと身を引かせて頂きます。

50kmほど走った夕方4時頃。
曇り空からポツポツと水滴が落ち、すぐに大雨へと変わりました。
カナダに入国して2週間あまり、
思えばずっと晴天で天気など気にしていませんでした。
雨宿りをする場所などなく、どうしようと考えながらも
とにかく必死で走り続けます。

濡れながら1時間ほど走って
道路わきに見つけたのはロッジ。
営業してるようには見えないけど
人の気配を感じ、
「ちょっと雨宿りだけさせて」
と立ち寄ることに。
笑顔で応じてくれた女性は“ザナ”さん。
「しばらく止まないから、
休んでいきな」と迎えてくれました。
ほら、と出してくれたのは
お皿に盛られた
フライドライスとチキン。
聞けば、廃業したロッジを
別の施設に作り替える最中らしく
建物には5人の作業員さん。
「一緒に食べよう」と
テーブルに並んで
食事をさせていただくきます。

雨が止む様子はなく
「ここで寝ていきな」との提案に
甘えることに。
びしょびしょになった服を乾かし、
落ち着いて屋根の下で
眠りにつくことが出来ました。

前日の雨から一転、気持ち良く晴れた
ワトソンレイク出発2日目。
皆さんに別れを告げ、また走り始めます。
出発から1時間ほど
出たー!また出たー!
黒いモサモサがすっごい
こちらを見てきます。
でも近寄ってくる様子もなく
そのまま去っていきました。
さらに、この日たくさん見たのは
トゲトゲした大きなねずみ、
“ヤマアラシ”です。
北米の種はトゲが短め。
のっそのっそとわりと
どんくさそうに動き回ります。
動物に気をとられがちですが
かなり起伏も激しい
この日の行程。
緩やかだけども
絶え間なくアップダウンが続き
体力を奪われていきます。
バッファローの大群にも遭遇。
群れで生活する彼ら、
1頭見ると必ず近くに数頭
いるとのこと。
ゴ〇ブリじゃないんだから。
奥に小さな子供もいましたよ。
100kmあまりを走り、
夕方に開業シーズン前の
キャンプ場を発見。
実はもうオープンしてて
ジュースなんか飲めちゃったりして、
という淡い期待を砕かれる。
カナダ入国以来、
似たような景色が続いてましたが、
ここ2日は動物との出会いもあり
旅ならではのワクワクを
取り戻せています。
適度な刺激が無いと走ってられないので。

ワトソンレイク出発3日目。
出発と同時にパンクが発覚、このやるせなさをどう例えようか…。
ただ、今日は待ちにまった“アレ”の日。
修理完了したらすぐに走り始めます。
はい、朝一番すぐ出ました黒いモサモサ。
向こうもリラックスして草を
食べてるし、こっちもなんか
慣れてきてしまいました。
撮影できなかった個体も含め
目撃するの5頭目です。

キャンピングカーから
声をかけてくれたウルフさん夫妻。
カリフォルニアの家を売り払って
4年間北米を旅しながら
過ごしているそう。
自由に旅する余生、最高ですな。
ちょうど無くなりかけていた
飲み水に加えて、
プロテインバーなどの行動食を
頂きました。
無補給が続いているので
こうした差し入れがすごく嬉しい。
そして、60km足らずを走り
昼過ぎには目的地に到着。
看板には、
「リアドリバーホットスプリングス」。
ずっと楽しみにしてたのは
まさにこの場所…。

アラスカハイウェイを走る旅行者たちの
癒しの場となっている温泉です!
もうここに来るのが楽しみで楽しみで。

自然の泉をそのまま施設にしており
緑に囲まれた最高のロケーション。
端にある源泉へと近づくと
お湯が熱すぎるほど。
程よい場所を見つけて
ゆっくりと腰を下ろしました。

欧米の方々って、広い温泉だと
すぐ泳ぎたがるという偏見がありましたが
みんなじっくりと肩まで
お湯に浸かっています。
「あ゛ぁぁ…」って感じで、
まぁ、言ってはないですけど。

各所からやってくる旅行者の社交場ともなっている
リアドホットスプリングス。
多くの方と話に花が咲き、気が付けば2時間も浸かってしまいました。
ここまでの長時間入浴はおそらく人生初。
熊と遭遇しまくりのベアカントリーのど真ん中で
待っていたのは最高の癒し。
付属のキャンプ場にテントを張って
気持ち良く眠りにつくことが出来ました。
この2日後、とんでもない展開が待っていることも知らずに…。

2024.05.15
【28日目 1,768km】

ホワイトホース出発4日目。
なだらかながらも傾斜が続く道を
せっせと走っています。

走り始めて1時間少々。
「やってるはず」と聞いていた商店が
未だ冬季休業であることが発覚。
ここで食料を補給する予定だったのに…。
前にお店のあったテスリンから
ワトソンレイクまで250km無補給決定。
ここまでの経験上、店の休業は
考慮しておくべきなんだけど、
物価高が影響してどうしても
買い控えをしてしまっています。
残りのわずかな食料で
なんとか2日間、乗り越えよう…。
とぼとぼと走っていた昼過ぎ、
1台の対向車が突然停車しました。
「俺たちも自転車乗りなんだよ!
水や食べ物は足りてるか?」
ウソでしょ、とこの時は
ちょっと泣きそうになりました。
昨年まで日本で英語教師をしていた
彼氏のマイクさん。
「来年二人で日本へ
自転車旅に行くつもりなんだよ」
その時はまた会おう、と
約束をして別れました。
カナダのドライバーさん達はほとんどの方が
手を振ってくれたりサムズアップしてくれたり、
とにかくサイクリストに好意的。
とはいえ、わざわざ停車までしてくれたのは
このカップルが初めてでした。
それも僕がお腹をすかせて困り果てているタイミングで…。
「カナダやアメリカにいる内はなんでも相談してくれよ。
どこにでも友達がいるし、何か役に立てるだろうから」
知り合いなんて誰もいない北の大地で出会った
マイク&ルーさんカップル。
人に優しくできるってなんて素敵なんだろうか。
あぁ、私もそうでありたい…。

と、とりあえず食料問題が解決し
ホクホクした気持ちで
漕ぎ進めることができました。
食料にしろ、時間にしろ、体力にしろ。
余裕が無いと気持ちが焦ってしまいます。
もっとゆとりをもって旅をしよう。

100kmを走ったこの日。
キャンプ場を発見。
「えっ、勝手に泊っていいの?」と
誰もいないのをいいことに
タダで泊まらせてもらいます。
運がいい日だ。
とはいえ、何があるわけでもなく
そのへんで野宿するのと
変わらないですが…。
開業後のキャンプ場は
Wi-Fiネットワークやシャワーがあれば
利用していきたい意向でございます。

ホワイトホース出発5日目。
前日、食料を頂戴したことで
朝からしっかり食事をすることができます。
この日も上り坂と向かい風が
結構しんどい…。
だだっ広い土地は
平らなイメージがありますが
かなり上りもあります。
ギアを軽くして、ペダルを回す。
道端の商店はやっぱりお休み。
“5月15日オープン”とのこと。
惜しい…、ちょっと早かった。
オンシーズンで商店が営業してたら
これまでの道も
相当楽になっただろうにな。
午後2時頃、
ついに「ワトソンレイク」到着!
小さな村ですがスーパーもあり
最低限のものは揃うよう。
ここしばらく、ちょっとした町でも
着いた時の感動がとても大きい。

このワトソンレイクには少し変わった見所がありまして、
それがこちらの“サイン・ポスト・フォレスト”。
世界各地の地名を記載した標識が無数に掲げられています。
これが何かというと、第二次世界大戦中
ケガを負いワトソンレイクで療養していた
アメリカ兵がすべてのきっかけ。

付近の町への距離を示す
標識が壊れていたので、
「キミこれ直すくらいできるでしょ、
やっといて」と指示を受けたそう。
その兵士はただ標識を直すだけなく
ちょっとおふざけをします。
4,000km以上も離れた故郷イリノイ州ダンヴィルを
指し示す標識も並べて取り付けたんです。
それから「じゃあ、俺ん家も書くぅ」と増えに増えて
現在はなんとその数、9万枚!
今でもここを訪れる観光客によって増え続けているそうですよ。

そんなワトソンレイクですが、ミッションが一つ。
アラスカ走行初日に折れた荷物取り付けのキャリア。
エポキシ樹脂で修理していましたが、
取り付けが甘かったようでまたパイプが分離していました。
食料をくれたカップル“マイク&ルーさん”がアドバイスをくれており、
修理できそうなところを紹介してくれていました。

快く引き受けてくれた“ダンさん”。
手際よく溶接して
壊れた部分をくっつけてくれました。
「気を付けて旅をしろよ」と、
お礼のビールを渡したときの
素敵な笑顔も忘れられません。

まだキャンプ場がオープンしていないのでモーテルに宿泊。
日中は10℃を超えることもあり、道中かなり温かくなっています。
人ともかかわりも増え、旅の厳しさと同時に
楽しさも徐々に増しているような。
ワトソンレイクを離れると、いよいよ楽しみにしていたアレが待ってる!

2024.05.12
【26日目 1,603km】

よほど疲れていたのか、
ホワイトホースのウィリアムズさん宅には
予定よりも多い4泊もお世話になっちゃいました。
しっかり回復したら再び走り始めます。
目指すは“ワトソンレイク”。
ホワイトホースから450km
ほど離れた小さな村です。
また景色の変わらないなかを
ひたすら走っていくことに
なるんだろうな…。

開業シーズン前の
キャンプ場を発見しランチ。
このテーブルがあるだけで
なんかすごく落ち着きます。
ベーグルサンドが
とても作りやすいし。
キャンプ場には
熊に関する注意書き。
とにかくテントの周りを
綺麗にしておくことだそう。
野生の熊なんて見たことないし、
目の前にしたら動けないだろうな。
さらに走って夕方5時ごろ。
やってないガソリンスタンドにて夕食。
熊対策として、
「野営地に着く数km手前で
食事を済ませておけ」
とウィリアムさんからのアドバイスです。
とうことでそのまま
テントを張るのではなく
しばらく走ってから野宿場所を
探すことに。
色んな国走ってきたけど、
そんなアドバイスは初めてだ。
夕食を済ませてから
13kmほど走ったところで
川辺に良い場所を見つけました。
サイクリストはもちろん
他の旅行者と一緒になることは
ありません。寂しい…。

ホワイトホース出発2日目。
だいぶ温かくなってきたとはいえ、朝方は氷点下。
テントには霜が降りるし、水もまだまだ凍ります。
走り始めると、予想に反して
起伏が激しいことが発覚。
450kmを4日間で、
と思っていましたが
どうやら無理な様子。
焦るのは止めよう。
と、1日の予定距離を縮めると
気持ちに余裕が出て
写真ものんびり撮るようになります。
一人っきりの自転車旅。
焦ったり、落ち着いたり
心のバランスをとるのが大切。
80kmを走ったこの日、
“テスリン”という小さな集落に到着。
誘惑に勝てずレストランに入店。
大した料理じゃないのに海外だと美味しい
「フィッシュ&チップス」を注文。
ただの揚げ物なんですけどね。

集落の外れに東屋を発見。
テント張れるじゃん、と近づくと
どうやら先客が。
愛犬を連れてヒッチハイクで
ユーコンを旅する「マークさん」。
怪しい人ではありません。

「一緒にキャンプしようぜ」
ということでテントを並べます。
アラスカからずっとですけど
移動中は人との関りが少なく
話をすることに飢えております。
北の果てには人がいないんです。

ホワイトホース出発3日目。
“テスリン”を出るといきなりの急こう配。
おかげで朝から体があったまるじゃないか。
路肩に動物の足跡を発見。
ホワイトホースから先は
とにかく動物が増えるぞ、と聞いてますが
なかなか近くでお目にかかれていません。
ちょっと怖いけど
やっぱり近くで見たいなぁ。
道の傍らでランチ休憩をしていると
ドライバーの方から差し入れが。
カナダではサイクリストに対する敬意を
とても良く感じます。
広大で自然豊かな国だけに
みんなアウトドアに憧れるよう。

丸い物体はチーズ。
カナダでは定番の一品らしく、
子供の頃弁当に入ってると
「いいなぁ、いいなぁ」と
羨望のまなざしにさらされるそう。
確かにこれは美味しかった。

この日から勾配に加えて
向かい風が強く吹くようになりました。
思えば、アラスカから風を
気にすることはなかったのに。
大陸の風ってずっと同じ方向に
吹くから、向かい風はホントにつらい。
100kmほど走ったこの日、
道端に廃業したガソリンスタンドを発見。
なかなか良い場所も見つからないので、
「もうここでいいや」とテントを張る。
夕食も済ませてないし。
疲れてると判断が雑になってしまう…。

カナダ北西部のユーコン準州。
人の少ない広大な土地がまだまだ続くようです。
同じ景色が目に焼き付いて、正直飽きるんだけど
でもそれが体験として濃く刻まれるというのも
自転車旅の魅力だったりして。

2024.05.8
【22日目 1,303km】

映画撮影組のニコラス達と共にやってきた
“ヘインズジャンクション”。
互いに二手に分かれる道を別の方へと向かうということで
今度こそ本当にお別れ。
ホワイトホースを目指し、東へと向かいます。
この日は本当に退屈な道でした。
景色が特段キレイなわけじゃなく
起伏もなく平坦。
どれだけ進んでも何も起こらないし
人も建物もホントに
何もない。
唯一の出来事といえば
野生の馬に出会ったくらい。
「このへん出るんだぞ」とは
聞いてたけど、まぁ馬です。
牧場から脱走したんでしょ、って感じ。
たてがみボサボサなのが野生っぽいけど。
人のいない地域って
その分絶景が広がってたりしますが
そんなこともなく、
ホントに作業として
ペダルを漕いでいる
気分になってきました。
夕方、川辺にテントを張って
野宿をすることに。
毎日書いてる日記にも
“過去一退屈な日だった”
と書き留め、こんな日もあるかと
眠りに落ちました。
そして深夜未明。ふっと何気なく目が覚め
ついでに「おしっこしよ」とテントの外に出ました。
そして、用を足しながら何気なく空を仰ぐと…

空一面のオーロラが!
「うわぁ、出とる出とる」と一人で大興奮。
頭上を覆う神秘の光景にしばらく見とれてしまいました。
アラスカについたばっかりの頃は「ねぇ、オーロラ見れる?」
なんて出会う人にしょっちゅう聞いてました。
でも確実に見られるわけではないし、深夜は大体疲れ果てて眠りこけてるので
チャンスをうかがうことすら忘れてたんです。
本当に偶然目が覚めただけなのに、
最も退屈な日が最後の最後に挽回してくれました。

オーロラを満喫した翌朝、
ユーコン準州の街ホワイトホースまで60kmちょっと。
休養日もなく連続で走り続けましたがようやく到着できそうです。

街に近づくと
やたらと工事中の箇所が増えました。
この砂利が厄介で
まともに漕ぐことが出来ず
押しながらなんとか進む。
車も苦戦してました。
そして、郊外から
街の中心部へ。
交通量もかなり増え
路肩を申し訳なさそうに走ります。
カナダのドライバーは
運転がさほど荒くない印象。

そしてついにたどり着きました
「ホワイトホース」。
アンカレッジから1,000kmあまり。
寒さに苦しみながら目指していた
最初の都市です。
ここでひと休み。

ホワイトホースはユーコン準州の州都。
といっても人口は2万人あまりで、
とても大都市というほどではありません。
中心のダウンタウンも全長2kmほどですぐに歩き終わるほど。
街そのものよりも
オーロラ観察やユーコンの自然を満喫する人々の
活動拠点となっているそうです。
川沿いにはサイクリングロードが
敷設され、
とても穏やかで雰囲気の良い街です。
移住地としても人気で
毎年1,000人もの人が
移り住みにやってくるのだとか。

ホワイトホース滞在中にお世話になったのは
“Warm shower”のホスト、ウィリアムさんご一家。
ダウンタウンから河を挟んだ向かいの住宅街にあるお家です。

夫婦ともどもお医者さんということで
お家はとても“いい感じ”。
3人のお子さんと仲良く暮らす
とても雰囲気の良い
ご家族でございます。
これ吹き抜けから見下ろしたリビング。

到着翌日の夜は
ピザパーティー。
夜っていっても22時過ぎまで
明るいので、
小さな子供も含め
大勢の人が集まります。
筋金入りの自転車好きの
ウィリアムさんご一家。
自転車仲間が総勢20人ほど。
庭先でピザ焼いて
ホームパーティーなんて、
ちゃんと欧米してます。

お世話になりっぱなしも
悪いので、
御礼に料理をふるまうことに。
翌朝、近所で豚肉を仕入れ
チャーシューを煮込みます。
グツグツ。
特に子供たちが
大喜びしてくれました。
「ワンモア、ポーク!」って。
あぁ、いけない。
また女子大生の
留学日記みたいになってしまった。

ということでひとまず目標にしていた
「ホワイトホース」に着き、ちょっとの間お休みです。
疲れが取れたら、だだっ広いカナダを南へと下っていきます。

2024.05.5
【19日目 1,137km】

国境(カナダ側)の町ビーバークリークを出発し、
いよいよカナダの旅が始まります。

極端に変わるはずもないのですが
景色が開けたように感じます。
遠くに見えるほんのり雪をかぶった
山々がとても美しい。
寒い時期のメリットは空気が澄んで
遠くまで綺麗に見えること、
暖かくはなってきているものの
まだまだ河の水は凍っています。
地図を見る限り河いっぱいあるし
水には困らないでしょ、と思ってたけど
今のところほとんど汲みに行けるような
場所はありません。

80kmを走った夕方、
道路わきになんとサイクリストのカップルを発見!
向こうも少し興奮した様子ですぐに意気投合しました。
良い人そう。

“ニコラス”と“キャサリン”は
前日、国境から走り始めたらしく
しばらく僕と同じように
南へ下りていくルートをとるそう。
速くてついていくの大変だけど
ずっと一人だったのでちょっと嬉しい。

「せっかくだし一緒にキャンプしよう」
ということで、
川辺に良い場所を見つけ
夜を過ごすことに。
寒くて寂しいばっかりが
雪国の旅じゃないんだ…。

彼らが食事をしていると何やらカメラで撮影している人が…。
実は「ニコラス&キャサリン」カップルすごい人でした!
2021年にカナダの最北地点からアメリカ国境付近まで
スキー、カヌー、自転車で縦断する旅をしているのですが、
その様子を収めたドキュメンタリー映画「Canada Vertical」が
国内外の映画祭で大絶賛されたそう。
そしてこの度、カナダを西から東へと自転車やカヌーなどで旅しているのですが
次回作として完成させるため2名の撮影スタッフが同行しているんです。
走行中も機材を積んだ車が並走していました。
「君も思っきり映ってるから
映画にも出ちゃうかも。
問題なかったら承諾書に
サインもらっていい?」
ということで、
もしかしたら出られたりして。

カナダ走行2日目。
ずっと一緒に走るのもしんどいので
カップルとは、抜きつ抜かれつ
それぞれのペースで走っていきます。
起伏も少なく
穏やかでいい道が続きます。
夕方には「デストラクションベイ」
という地域に到着。
ガソリンスタンドを見つけ、ここで
テントを張らせてもらうことに。
「僕らはもうちょっと進むよ」と
カップルとはここでお別れです。

カナダ走行3日目。
天気の良い日が続いています。
風もそんなに強くないし、日中は気持ちいいくらいの気候。
大きな湖のほとりを走る
この日。
向こう岸の山がはっきりと見えて
最高の風景がずっと続いています。
湖の水面はぎっしりと氷に覆われ
真っ白な平原のよう。
前を向いても
絶景が広がっています。
はやく街に着きたいって思うけど、
こんな景色の中を走れることが
贅沢だよなぁ、なんて
考えながらペダルを漕ぐ。
午後からは緩やかながらも
長い長い上り坂が始まりました。
背中にびっしょり汗をかくほどで
初めてジャケットも抜いて
下着のシャツ1枚で走ったくらい。
でも風が吹くとまた寒い…。

上り坂の途中、また彼らに遭遇。
彼氏“ニコラス”の膝が悪く
なかなか進めていなかったそう。
もう会えないと思っていたので
こちらとしては
ちょっと嬉しいです。
夕方4時に
長い上り坂の頂上に到着。
600mしか上ってないけど
今回の旅でここまで一気に上がる
坂は初めてかもしれない。
徐々に足も鍛えていこう。
冷たい風を切って一気に坂を下ると
「ヘインズ・ジャンクション」という
町に到着。
町っていっても
ガソリンスタンドとモーテルが
数軒あるだけですが…。

ニコラスたち撮影部隊も泊まるというので
同じモーテルに泊まっていくことに。
寒い野宿の後で寝るベッドが最高に気持ち良い。
この時期じゃなかったらモーテルなんて絶対泊まってないけど、
寒い季節ならではの喜びがあります。
ホワイトホースまで、あと少し。

2024.05.1
【15日目 741km】

“トック”の町を出て東に目指すのは
アラスカ=カナダ間の国境。
アンカレッジから出発したばかりではありますが、
今回の旅で初めての国境越えです。
前日までよりも景色が開けた分
起伏も多くなってしまいました。
上り坂が多いので汗もかきやすく
少しずつジャケットを脱いで走ることが
増えてきています。
早く半袖で走りたい…。
トックの町でクルミを購入。
何か物足りないと感じていた
サンドウィッチが遂に完成しました!
マヨネーズをベースに、ピクルスの酸味。
シャキシャキ玉ねぎとクリスピーなクルミ。
食感の対比が旨味を引き出します。
遠くに見える山の向こうに
カナダの大地が広がっているのだろうか。
ここまで景色が変わらないと
ずっとアラスカが
続くような気すらしてきます。
早く違う景色が見たい。
90km走ったところで
道端にガソリンスタンドを発見。
北米のスタンドには大抵、
ちょっとした商店がついてます。
ただ18時を迎えたこの時は
既に閉まっていました。
閉店とわかりうなだれる僕を
遠くで見ていたドライバーのおじちゃんが
辛ラーメンをくれました。
人からもらう辛ラーメンは暖かく、
そして辛い。
そのままガソリンスタンド前にテント泊。

トック出発2日目。
この日も縦に横にうねる道を国境目指して進んでいきます。
日中の気温は8度ほど、だいぶ暖かいです。

朝いち、ガソリンスタンドで
汲んでもらった水を飲もうとすると
すんごい濁ってました。
アフリカの井戸水でも
もっとキレイだったんですけど。
なぜ入れたときに気づかないのか…。
国境まであと少しのところで
モーテルを発見。
汚い水を全て入れ替えてもらうことに。
結果的にこれが
アラスカ最後の建物となりました。
ちょっと名残惜しい…。
さらに5kmほど進んだところに
入国審査の建物を発見。
ドキドキしながら行ったけど、
審査対象はカナダ側から
アラスカに入る人だけでした。
反対方向の僕はあっさりアラスカ出国。

そして、やってきました北米の大国・カナダ。
国境を越えてすぐ広がるのは北の大地・ユーコン準州。
まずはここから州の最大都市ホワイトホースを目指します。
入国後すぐは変わらない道が
しばらく続きます。
距離の単位が“マイル”から“キロ”へ。
暗算が苦手なのでとても助かります。
毎度1,6倍して考えるのが大変で大変で。
お隣同士なんだから共通にすればいいのに。

国境を越えてから
やたらと白鳥を見るようになりました。
「クワッ、クワッ」とちょっと間の抜けた
鳴き声がなんとも可愛い。
写真撮れなかったけど
ワシも見かけるんですよ。
国境から30km地点で
ようやくカナダ側への入国審査へ。
「入国目的は?」「どこ走るの?」
「仕事は何してたの?」「貯金は?」
など割と細かく聞かれます。
陸路の場合ビザなどの事前申請は必要なし。

審査後すぐに“ビーバークリーク”
という町に到着。
トックから200km弱。
ここで新鮮な野菜や果物を
仕入れておきたいところ。
栄養なさ過ぎて唇カッサカサなんですけど。
ところがやはりオフシーズンの為
商店やレストランはほぼ休業。
前後数百kmにわたって補給地点ないのに
どうやって食いつなげというのか…。
「あんた来る時期早すぎよ」って
地元の人にしょっちゅう言われてます。
開いてるけど
シェフが長期休暇で料理が提供できない、
という謎のレストランの前に
テントを張らせてもらうことに。
もう開けてる意味が分かりません。
いや、ホントどういうこと?

ということで通算32ヵ国目となるカナダの旅が始まりました。
人口は3600万と日本の3分の1にすぎないけれど、
国土はロシアに次ぐ世界第二位。
文字通りの大国はどんな旅となるでしょうか。
期待を胸に引き続きペダルを漕ぎます!

2024.04.28
【13日目 555km】

“グレナレン”の高価な宿で体を休めると
また走り始めます。
アンカレッジからまっすぐ漕いできたグレンハイウェイが
ここで南北に分かれます。
目指すは北の方向、国境前最後の町“トック”。
3日かけて到着する予定。
針葉樹林帯を
まっすぐ突っ切る道を
ひたすら走っていきます。
結果的になんですが
この景色がこれから3日間
ほぼ変わりません。
この針葉樹は“スプルース”といって
要は松です。
僕はギターが好きなので
とても馴染みがある木なのですが
こればっかり続くので退屈。
朝から晩までずっとこの景色。
自転車の荷台は
ヒモで何でもくくりつけられる
便利スペースとなっています。
食べ物から服にゴミまで。
見た目を損なうトイレットペーパーも
ここにくくると便利なんです。

ランチに定着しつつあるベーグル。
刻みピクルスとマヨネーズを塗って
コショウをパッパ。
まだまだこれだけでは
物足りないので新たな仲間を
加えたいところ。
80kmを走ったこの日の夕方、
道端の商店に到着。
3日かけて走る250kmの区間に
お店はここたった1軒だけ。
とても貴重な補給地点です。
サハラ砂漠よりモノも人も少ない…。
お店の人の許可をもらい
建物裏の林にテントを張りました。
やはり熊やムースが怖いので
少しでも人の気配のするところが
安心します。
寒さも若干和らいで-5℃ほど。

グレンナレン出発2日目。
前日とほとんど、というか
全く分からない道を進みます。
前日の商店で買った
玉ねぎ(1玉¥300)が
ベーグルに仲間入り。
シャキシャキの触感と
ちょっとした辛みが
いいスパイスになります。
ランチを済ませよっこらせと立ち上がると
30m後方に動物の影が…。
馬か、牛かと目を凝らして見ると
ムースではないか!
遠くではあるけど
ついにムースと遭遇できました。

食料はあるものの
水が無くなってしまった夕方。
民家を発見し「あのぅ…」と
声をかけさせてもらいました。
出てきたおじいちゃんは“ジーンさん”。
「もう遅いしここでテント張りなよ」
どこかの川辺でキャンプと
思ってたけど
お言葉に甘えて
庭で寝かせてもらいます。
ゆっくりのんびり
パスタを茹でる。

グレナレン出発3日目。
ジーンさんと記念に写真撮りたかったのに
なかなか起きてこないのでそのままこっそり出発させてもらいます。
出発地のアンカレッジから
ずっと降り積もっていた雪が
この日を境にぐっと減りました。
山の岩肌が見えるのが
とても新鮮。
アラスカってずっと真っ白と思ってた。

そして道端にヒラヒラと舞う蝶を発見。
確かに春が訪れているのを感じます。
人も少ないし、寒いしで
どこか寂しさが漂う景色でしたが
こんなことですごく感動します。
もう寒いのやだ。

国境の町“トック”まで
10kmほどの地点。
スクールバスに追い越されました。
何気ないことですが、
誰もいない場所をずっと走ってると
人の気配を感じた時にすごく嬉しい。

そして「トック」の町に到着。
といってもグレナレンと同じで交差点に建物が数十軒ある程度。
過去の旅でもいろいろな地域を走りましたが、
アラスカの人口密度ってホントに低いんだろうなって思います。
マシになったとはいえ
まだまだ続く寒さに耐えかねて
モーテルへ。
気温を気にせず
自由に野宿ができる季節が恋しい。
暑さより寒さのが絶対しんどい。
と、たった数日前の-15℃の夜が懐かしいほど
大きな出来事のない道のりでした。
実際、こんな特筆すべきことのない日々の方が
自転車旅の日常だったりします。
カナダ国境まであと少し…。

2024.04.24
【9日目 318km】

休業中カフェでの野宿場所から撤収。
あまりに寒くまともに動けるのは朝10時頃からでしょうか。
あと5分、もう5分なんて思いながら
やっと重い腰が上がりました。
さぁ、今日も張り切っていこう
とペダルを踏みこむと
前輪がパンクしてました。
「もう今日休んでいいですか」
って言いたくなるけど
仕方ないのですぐ直す。
再び漕ぎだすとかなり長い上り坂。
ただ傾斜はゆるいので
時間をかけてゆっくり上っていきます。
今日は天気が良いうえに
風も穏やかで
比較的漕ぎやすい日です。
キャンピングカー旅行者の方に
差し入れを沢山いただきました。
冒険的なことが大好きな
アメリカの方々。
実は道中かなりたくさんの人に
話しかけられています。
この日も道は激しいアップダウン。
極寒のキャンプがこたえて
はやくも体力が尽きそうです。
徐々に体を慣らせばいいけれど
ウォーミングアップにしては
このあたりの山々はかなり厳しい。
とはいえ眼前の山々は
やっぱり美しい。
3日ほどずっとこんな景色ですが
特に晴天の下だと目を奪われます。
はやく町に着きたいけど
ずっと見ていたいような気持ちもある。

15時頃、へとへとになりながら
“ガンサイト・マウンテン”という地域に到着。
久しぶりに商店を見つけました。
「お前、アンカレッジからここまできたのか!
お疲れ様、もうここからは道は緩やかになるぞ」
とガタイのいい店主が労わってくれました。

とたんに道が平らになり
すぐそこに見えた山々も
ほとんど見えなくなってしまいました。
どうやら一番厳しい地域は
走り終えたようです。
ちょっとした達成感。

周囲の針葉樹が
どんどん深くなっていきます。
本当にわかり易く地形も
かわってしまいました。
それにしてもアラスカはだだっ広い。
3日間ずっとまっすぐ。

さきほどの商店の店主から聞いていたロッジを発見。
かなり疲れ果てておりキャンプをする元気がありませんでした。
値段は¥10,000、高い!
夕方を迎え既に寒くなりつつあるけど、すぐイエスといえる値段じゃない。
「仕方ないわね、¥8,000でいいわ」
体が凍えていたので
「ノー」という言葉は出ませんでした。
疲れもありベッドに倒れこみます。
ストーブが暖かい。
ダウンを着込まずに
寝られるって素敵。

翌朝、引き続きグレンハイウェイを東に走ります。
もう山中じゃないのでほぼ平坦ですが
ずっと同じ景色が続いて退屈。

横を見れば針葉樹の森。
これが延々と数十kmほど
続くことになります。
昨日までさんざん山に
苦戦してたけど、それが懐かしいほどに
変化のない道が続く。
途中、川が凍っていました。
この日の最高気温は0℃。
ただ夜中の-15℃が厳しすぎて
0℃は暖かいという感覚に
なりつつあります。
寒いの嫌いだけど順応しているのか。

昨日までの道を思えば
「今日はのんびりデイでしょ」なんて思ってましたが、
地味に厳しい日となりました。
道路わきにある商店がことごとくシーズンオフで休業しており
食べるものが無くなってしまったんです。
“オープン”なんて書いてあるけど全然やってない。嘘つき。
昨日、道中もらった
ナッツとチョコレートで食いつなぐ。
ホントこれが無かったら
どうすればよかったんだろう。
リスのように
ちまちま食べていきます。
正面に白い山、脇に針葉樹。
この景色が数時間変わることなく
続いていきます。
途中漕ぎながら眠たくなってくるほど。
「わー!」とか「おー!」とか
叫んで眠気を覚ます。

そしてジェイソンさん宅から4日。
“グレナレン”という町に到着。
町というよりも交差点に建物が数軒ある程度ですが。

グレナレンの町で
一回疲労をリセットしたかったので
宿を探すことに。
数軒訪ねて一番安かったのが
¥22,000!
噓でしょ…と愕然としました。

ただ空腹と寒さと疲労で
体力の低下を感じたので
ちょっとだけまけてもらい
泊まることに。
この時期のアラスカの宿泊事情
かなり厳しいです。
という具合に、
走行序盤から苦戦を強いられています。
反省点としては、分かってたことだけど来る時期が早すぎました。
キャンプ場やお店が本格オープンするのは
春を迎えた5月から。
また、食料をどれだけ持っておく、行動食を切らさない、など
これまでの旅で培った勘もだいぶ鈍っておりました。
まあ、でもそんなこんな含めての旅です。
徐々に慣れていこう。

2024.04.20
【7日目 175km】

ジェイソンさん宅でひと休みすると東へ向け出発。
いよいよ都市部を離れ山岳地域に突入します。
「ここから先は寒くなる。道中かなり苦しむはずだぞ」
ジェイソンさんの忠告にビビりつつも、
ペダルを漕ぎ始めました。

進んでいくのは
「グレンハイウェイ」という
町と町を結ぶ一本道。
交通量はさほどでもなく
追い越していく車も
しっかり自転車を避けてくれます。

気温は0℃ほど。
漕いでいる間は大丈夫でも
休憩で立ち止まると
すぐに体が冷え込みます。
荒涼とした景色もあいまって
心細い気持ちになる。
昼過ぎに商店を発見。
ずっと何もない景色が続いていたので
ホッとします。
小さなお店で飲み物買って休憩してると
「自転車旅ってこうだったなぁ」
と徐々に感覚が蘇ります。
ジェイソンさんからもらっていた
スモークサーモンでサンドウィッチ。
物価高地獄のアメリカ。
“ちょっと食堂で食べてこか”
とはなりません。
また日用品の値段まとめてみますね。

川沿いを行くのでずっと平坦と思いきや
起伏もかなり多いグレンハイウェイ。
標高300~800mを絶えず上がったり下がったり。
寒くさえなければ何てことない道なのに。
地元の人曰く、シーズンオフの
無人キャンプ場は野宿し放題。
それをあてにして到着すると
50cmの雪に閉ざされてました。
入口まですらたどり着けそうにない。
そりゃ無人になるわ。
少し進んだ川辺に
人目を避けるポイントを発見。
あらいいじゃない、
とテントを張ったとたん猛吹雪。
夜を越せるだろうか…。
不安になります。
山の天気は変わりやすく
すぐに雪はやみました。
暖を求めて焚火開始。
この時間こそひとり旅の醍醐味。
川の水を汲んでパスタを茹でます。
シュラフにくるまりそのまま就寝。

夜が明け目を覚ますと気持ち良く晴れていました。
目の前には“キングス・マウンテン”の頂きがくっきり。
歯を磨いたら今日も漕ぎ始めます。
平らな道はほとんどなく
上るか下るかのどちらか。
まだ体が旅モードに
仕上がってないのだろうか、
ペダルを踏みこむ力も弱まってきます。
そして身を切る寒さ。
前日よりは日が差す時間が
増えたのが救い。
気温そのものより
風の強さと日照具合に
体感温度が左右されるのがよく分かる。
必死に漕ぐ上り坂は暑いほど。
この日もサーモンサンドウィッチ。
同じ食べ物が続くのも旅あるある。
ただジェイソンさんには言えないけど
流石に毎日食べると飽き…、
いや、何度食べても
アラスカサーモンは美味しい。
15:00頃、道端に教会を発見。
水を求めてコンコンとノック。
快く飲み水を下さいました。
「君は神がいると思うかい?」
話長くなりそうだったので
良いところで切り上げさせてもらいます。

夕方、道端に夏場は営業しているであろう
カフェらしき施設を発見。
ホントに誰も出入りしないようで
ももの付け根の高さまで新雪が積もっています。
荷物を抱えズボズボ埋まりながら
屋根付きのテラスにたどり着きました。

人目を避け道路から離れすぎると
今度は熊やムースが心配で…。
ここはほどほどの良い距離感です。
夜中にはフクロウの
「ホーウ、ホーウ」という鳴き声が
気持ち良く響いてました。

と、ここまで野宿が続きましたが
たった2日でもかなりしんどいです。
日照時間は朝6時から夜10時前まで。
活動時間多くていいじゃんって話ですが、
特に朝なんてもう寒いのなんの。
最も気温が下がるのは明け方6~7時で-15℃ほど。
旅ではもちろん、人生で一番の寒さじゃないかな。
上の写真分かりにくいですが、前日履いた靴下が凍ってます。
水筒の水はもちろん、テントの幕から骨組みのパイプまでカチコチ。
バッテリー関係も放電ですぐなくなっちゃいます。
スタートからかなりハードなキャンプが続いてますが、
疲れ果てながらもなんとか前に進んでいます。

2024.04.16
【4日目 走行距離73km】

アンカレッジのマーティンさん宅に3泊お世話になった後、
ついにアラスカの地を走り始めました!
気温は5℃ほどでしょうか、
意外に寒さを感じません。
幹線道路沿いの自転車道を進みます。
積雪が気になるけど、
遅いながらも難なく走れそう。
と思った矢先、気を抜いた瞬間に
雪の上で派手に滑って転びました。
そして、なんとカバンを
くくりつけるキャリアが破損。
出発前に溶接で強化したのに…。
根元からボキッと折れてます。

嘆いても仕方ないので
ネジで留めて応急処置完了。
日本にいる間に折れてくれてたら
良かったのに…。
言ってもしかたないので
ポジティブポジティブ。

気を取り直してまた走り始めます。
昼頃にイーグルリバーという町に到着。
朝作っておいたサンドウィッチを食べて
ひと休みしたら午後の部スタート。
朝からトラブルがあったけど
気を引き締めてしっかり走ろう。
と思った矢先、気を抜いた瞬間に
氷の上で派手に転びました。
そして、ドリンクホルダーが破損。
初日から2回も転ぶなんて…。
ボキッといっちゃってもう
新品と取り換えるしかなさそう。

現場はトンネルの中でした。
日光が当たらないので
つるっつるに凍ってるんです。
「2回もコケてどんくさい」
って思うでしょ?
でも、ホントつるっつるなんです。

自転車道にウンザリしたので
幹線道路沿いを進むことに。
路肩に余裕もあってスイスイ走れます。
始めからこっち通ればよかった。
アンカレッジから30kmほど離れると
かなり景色も開けてきました。
遠くに見える雪をかぶった
山稜が美しい。
気温が低いと
空気もパリッと澄んでいます。
“ムースに注意”の看板。
熊が怖いけど地元の人は
「熊よりムースに気をつけろ」って
言います。
舞茸みたいな角が後ろに倒れたら
怒ってるから注意らしいです。
そして至る所で
こんなコロコロした糞を見かけます。
これがムースの作品だそう。
やっぱり最初に出会う動物は
彼らだろうか。
ちょっと怖いけど楽しみ。

アンカレッジから北東に70kmほど走ったこの日は
「ビュート」という町に到着。
今朝お別れしたマーティンさんが
「俺の友達がその町にいるから泊まってきなよ」
と紹介してくれて、また人のお家にお邪魔することに。

食べることが好きな
陽気なカナダ人ジェーソンさん。
僕が到着した時も
キッチンで何か作ってました。
豆腐とギョーザとチンゲン菜。
アジアフリークだそう。

雪がひどくなる予報だった到着翌日。
「今日はもう止めとけ。
代わりに俺の仕事についてきたらいいよ」
ということで水槽管理の会社を運営するジェーソンさんの
仕事についていきました。

主に病院の待合室に
置かれている水槽を回って
清掃したり水質の調整など
をしているそう。
家で魚飼い始めたのが発展して
会社まで始めたらしいです。

家に戻ると壊れたパーツの修理。
エポキシ樹脂で固めます。
壊れたボトルケージも
新しいのを買いました。
こんなことにならないように
事前に国内旅したのに…。

二日目のディナーは
“アラスカサーモンのオーブン焼き”。
「冷凍庫がサーモンだらけだから
減らすの手伝ってくれよ」
こんな美味しいものが余ってるのか。
贅沢ですこと。

アンカレッジを出発したものの
天候不良もあり、なかなか進めずにおります。
ホストファミリーとの日々ばかりで、
楽しいアラスカライフを送っております。
このブログも女子大生の留学日記の様になってきました。
これからアラスカの荒野で過酷な旅が始まるとも知らずに…。

2024.04.11
【走行距離0km】

4月7日、ついに旅立ちの日がやってきました。
出発は成田空港。
前もって空港宛に送っていた梱包済みの自転車を受け取ると
チェックインカウンターへ向かいます。
自宅で何度も体重計に乗って量ったので重さはバッチリ、超過料金なし。

経路は成田→インチョン(韓国)→シアトル(アメリカ)→アラスカ、
待ち時間も合わせると合計25時間の移動です。
飛行機で海外を旅すること自体久しぶりでしたが、
色々と事情が変わって驚いたことが多々。
まず準備段階ですが、日本の郵便局って
2020年以降外貨両替やってないんですって。
銀行もサービス廃止してるところが多くて
金券ショップでやっと米ドルをゲットできました。
大きく進歩したのがWi-Fi環境。
空港内のフリーWi-Fiって「繋がるけど通信悪い」というイメージでした。
ところが韓国もアメリカも本当にどこでも良く繋がるようになってます。
一番驚いたのは出入国時のパスポートへのスタンプ。
ICチップ管理になってスタンプ押さない国が増えたそうです。
どんどんスタンプ増えるのが楽しかったけど、もうそれも終わり。
日本の出国もアメリカの入国も押してもらえませんでした。
寂しいけど、まぁ時代ですね。
日本時間の8日(月)AM10時頃。
ついにアラスカ・アンカレッジの
空港へ降り立ちました。
自転車も無事送られてきました。
箱はダメージ少なそうだけど
中身も大丈夫だろうか。
自転車の箱を受け取ると背後から男性に声を掛けられました。
「君がリョウスケかい?」
男性は出発前からメールのやり取りをしていたマーティンさん。
アンカレッジでお世話になるホストファミリーです。

特に欧米で盛んな「Warm Shower(ウォームシャワー)」という
自転車旅行者のオンラインコミュニティがありまして。
旅行中は無料で泊めてもらう代わりに、
自分が旅に出ていない時にはゲストを迎えてあげようというもの。
実際、僕も神奈川にいる時はこれまで5組のゲストを迎えたことがあります。
(うちのアパート狭いので、広いお家の友達の協力も得ながらですが…。)

タクシーでマーティンさん宅まで
向かう予定でしたが、
「空港まで迎えに行くよ」
という申し出に
甘えてしまいました。

マーティンさんは奥さんと
5歳の娘ちゃんの3人暮らし。
子供が生まれる前には
日本にも自転車旅行に来たことがあるそう。
自転車乗り同士で理解しあえるのも
Warm Showerの良いところ。

到着してからひと晩明けたら、
旅の準備に、街の散策に、と活発に動き回る予定でした。
しかし、目が覚めて時計を見ると昼の12時!
完全なる時差ボケです。
実はうまく眠れず、深夜未明に3時間ほどベッドで起きたままでした。
三半規管が強くて、バランス感覚が良い人ほど
時差ボケしやすいそうですよ。
ハワイ含めアメリカ来るの三回目ですが毎回のことです。
しんどい…。

体だるいけどこれだけやんなきゃと
自転車の組み立てを始めます。
ご近所さんに
「グッモーニン」と声を掛けると
「もう、アフタヌーンよ」と笑われました。
あぁ、時差ボケ…。

心配していた自転車輸送ですが
破損などは何も問題なし。
飛行機の窓から
たまに積み込みの作業見えるけど
荷物めっちゃ乱暴に投げますよね。
もうあれが嫌で嫌で…。

ということで、大きなトラブルもなく
まずはスタート地点のアラスカに到着しました。
しばらく準備を整えたら、
いよいよ自転車に乗って走り始めます!
2024.04.3

アラスカへの出発も迫り、今は装備品の最終チェックをしています。
装備品をざっと並べてみると写真のような具合。
これらが前後タイヤの両側に取り付けるバッグに収まるわけです。
野宿道具としてテント、マット、寝袋。
料理用のクッカー(鍋)、バーナー、ガソリンボトルなど。
冬用のダウンや手袋を含む服や下着。
パソコン、ミラーレス一眼、Go Proやそれに伴う充電器類。
予備のタイヤチューブなどの簡易的な修理キットに工具。
合計でおよそ25kgほどの重さになっています。
こうした装備品を用意するうえで
とても大きな力を貸してくださったのが、
アウトドア、自転車用品に携わる企業の皆さま。
そして、今回の広島~神奈川の自転車旅では
一部の企業様に直接ご挨拶周りもさせてもらいました!

まず最初にお邪魔したのは大阪に本社を置く「モンベル」さん。
国内での高い認知度を誇りますが、
海外でもモンベルのテントを立ててると
「あなた日本から来たのね」って認識してもらえます。
今回ご提供いただいたのが
設置と撤収がとても容易な
「ムーンライトテント2型」、
氷点下にも耐えるシュラフ(寝袋)
「ダウンハガー#2」。
寒い地域でも心強いです。

またダウンやジャケット、
LEDライトなど
アウトドアに関する様々なグッズを
使わせていただきます。
ご担当の安藤さんはじめ
モンベルの皆さんありがとうございます!

続いては、京都に拠点を置く
自転車用品の商社「ダイアテック」さん。
自転車乗りならだれもが知るGIRO社のヘルメットをはじめ
有名メーカーの製品を数多く取り扱われています。
ご提供いただいたのは
GIRO社「Syntax MIPS」ほか、
ABUS社のチェーンロック、
LEZYNE社の携帯ポンプなど。
また、訪問の際にGIROのキャップと
ソックスまで下さいました!

そして、サイクリストにとって
普遍の憧れであり定番
BROOKS社のサドルも頂いております。
本革がなじんでいくのが楽しみ。
加納さん、中里さんはじめ
皆さんありがとうございます!

次は愛知県に本社のある「新富士バーナー」さん。
キャンプ好きの人に馴染み深い
“SOTO”ブランドの調理用ストーブが有名です。

ご提供いただいたのは
前回もお世話になったガソリンストーブ
「ストームブレイカー」。
強風にも負けない安定した炎。
ガソリンを扱うのって怖いですが
あっという間に誰でも慣れちゃいます。

なんと工場見学もさせてもらいました。
火を扱う器具だけに
とても精巧な作業をされています。
世界の旅で使用することが誇らしい。
坂之上さん、夏目さんはじめ
皆さんありがとうございます!

続いては大阪に本社のある
「ティー・アール・エイ」さん。
モバイルバッテリーの“cheero”ブランドなどを展開されています。
ご提供いただいたのは
電力を持ち運べるモバイルバッテリー
「cheero Power Plus13400mAh」
野宿が続く時の心強い味方です。
松本さんはじめ
皆さんありがとうございます!

お次は東京に本社のある「昭文社」さん。
“まっぷる”“ことりっぷ”などの
旅行ガイドの出版で有名です。

「世界地図帳」のご提供に加え
SNSでの情報発信などにも
ご協力頂いております。
コラム記事も書いて頂きました。
竹内さんはじめ
昭文社の皆さんありがとうございます!

そして、南北アメリカ旅から新たに
ご支援いただくことになったのが東京の「スター商事」さん。
アウトドア用品の製造・輸入をされています。

提供いただいたのは
TOAKS社の
「ウッドバーニングストーブ」。
煙突効果を利用して
効率的に薪を燃やす小さな焚火台。
大自然の調理にぴったりです。

ほかにもSIGG社の水筒や
SEIRUS社のグローブなど
沢山のアウトドア用品を
ご提供頂きました。
佐々木社長はじめ
スター商事の皆さんありがとうございます!
ということで、これらの企業様から
物資の支援を頂いております。
決して予算に余裕が無い中で、
製品を無償提供して頂けるということももちろん嬉しいのですが、
それ以上に、
一個人の挑戦を企業様が応援してくださっている
という事実がとても大きな励みになります。
頂戴した製品がこれから
大切な旅の相棒になっていくのがとても楽しみです。
ご支援いただいた企業の皆さまへ、心より御礼申し上げます!
そして、あと4日。
身近な方々にご挨拶をしながら一日ずつ出発が近づいております。
ワクワク…。