世界の果てへ
【351日目 18,979km】
「エル・カラファテ」に滞在しながら
“ペリト・モレノ氷河”への観光を終えて宿に戻ってからのこと。
ここからしばらく連続走行が続くため、
もう1日延泊して
ブログ執筆やルートの下調べなどの
事務作業を片付けるつもりでいました。
ドミトリーのベッドも結構空いてるし、
まあ問題ないでしょと気楽に受付にお願いしてビックリ。
「明日から4日間は全部、予約埋まっちゃってるよ」
聞くと、“La Renga”という
ロックバンドのコンサートが
このエル・カラファテで行われるため、
パタゴニアのみならず
アルゼンチン全土から
多くの人が押し寄せるのだとか。
他のホテルを調べても、どこも満室。
やむをえず最低限の用事だけ済ませ、出発の準備を整えることに。
ただ間接的にではあるものの、
このコンサートに後々助けられることになります。
結局2日間の滞在となったエル・カラファテの街。
長距離バスで先に南へと向かう
千田さんともついにここでお別れ。
短い時間ながら旅の思い出を共有させてもらい光栄です。
日本で必ず会いましょう!
エル・カラファテを発つと
だだっ広いパンパの景色が
どこまでも続きます。
ここから目指すは
ゴールの“ウシュアイア”。
もうじき旅も終わりを迎えます。
2時間ほどで3日前に
バスに拾ってもらった地点に到着。
あの時は100mすら進めなかったのに。
風向き一つで走行が左右されるとは…。
自転車旅における最も重要な天候条件は
雨より気温より、風なのかも。
午後からは緩やかながら
20kmにもわたる上り坂に突入。
傾斜が緩いだけに
ずっと漕ぎ続けられるんだけど、
どこまでのぼっても
終わりが見えないのが辛い…。
途中から降り出した
雨を耐え忍ぶと、
坂の上には平らな道が
延々と続いておりました。
右を向いても左を向いても
どこまで草原だらけ。
雨雲も去り青空が広がった夕方5時過ぎ。
エル・カラファテから100kmの地点で
事前に調べていた道路整備の施設に到着。
サイクリストやバイカーを泊めてくれるそうです。
雨風をしのげる軒下に、テントを
張らせてもらうことが出来ました。
さらにはフリーWiFiまで完備。
数百kmに渡り草原が続くパンパ地帯。
緊急連絡用に要所で
WiFiが飛んでるんです。
管理人の“クラウディオさん”。
気を使って
大きなやかん一杯の水まで
持ってきてくれました。
心配りに感謝です。
Oh! クラウディオ。
エル・カラファテ出発2日目、
朝7時に目を覚ますとオレンジ色に灼ける東の空。
天気に恵まれる1日になりそうです
もうここからウシュアイアまで
目立った観光地もなく、
言ってしまえばこの殺風景な
草原が続くばかり。
人もほとんど住まない大陸の南、
世界の果てへと進んでいく。
70kmを走ったお昼過ぎに
「エスペランサ」という集落へ。
集落といってもドライバーの休憩のため
ガソリンスタンドといくつかの
食堂が集まっただけです。
それでも貴重なオアシス。
ガソリンスタンドの前に立ってると
「ヘイ、アミーゴ!」と
ガタイの良い兄ちゃんがピザをくれ、
名前を聞く間もなく去っていきました。
臆することなく人に親切を与えられる、
そんな人間に私はなりたい。
午後の部スタート直後、
道路脇には轢かれたであろう
アルマジロの亡き骸が…。
アウストラル街道で見れるかも
と思ってたけど、こんな初対面だとは。
こうなる前のキミに会いたかった…。
基本的には西から東へと
吹き抜けるのが
秋を迎えるパタゴニアの風。
南東方向に走るここ2日間は
追い風基調だから良いものの
これが向かい風だと思えばぞっとする。
順調に走り、気づけば130kmも走ったこの日。
川辺に風をかわす林を見つけてテントを張ります。
「このキャンプ飯もあと何回…」
とぼんやり火を眺めてると
クスクスの入った鍋を
コテンと傾けてしまいました。
“あぁー、クソー!”と誰もいない
パタゴニアの草原で叫ぶ。
エル・カラファテ出発3日目。
今日も朝から青空が広がり気持ち良く走れそうです。
さらに前日に引き続き
背中を押してくれる追い風。
調子が良いと時速30kmも出るから
漕いでいて楽しい。
あぁ、このままゴールまで行けたら
どんなに良いだろう。
そのまま風に乗って
80kmをスムーズに走り、
午後2時過ぎには
カラファテから3日振りとなる街
「リオ・ガジェゴス」に到着。
計画通りに進めてます。
向かったのは住宅街の真ん中にある
こちらの宿。
パタゴニア特有なのか、
住宅街も殺伐とした雰囲気で
陽気なラテンアメリカという
感じではありません。
到着翌日、宿にて1日休養。
エル・カラファテで済ませておきたかった作業を
ここで完了させておきます。
宿のお母さんから
「今夜はBBQだから
あんたも一緒に食べるのよ!」
とのお誘い(有料)。
屋内に炭火グリルがあるほど
アルゼンチン人はBBQ好き。
道中に出会った人からも
アルゼンチンのBBQは勧められており
実は楽しみにしてました。
そして、期待に違わぬその美味しさ。
チョリソーもビーフも
本当に絶品でした。
パソコン作業ばかりの休日でしたが
宿主“シリさん”とそのお友達のおかげで
美味しく素敵な夜を過ごせました!
アルゼンチン滞在中、絶対またBBQ食べよう。
「リオ・ガジェゴス」で休養をした翌日。
BBQの旨味を思い出しながら、
さらに大陸の南を目指します。
ただエル・カラファテから
順調に進んでいたここ数日とは
大きな違いが…。
街を出ると斜め前から吹き付ける風。
風向きは変わらないものの
進路自体が南西に向かい始めたんです。
数日間は強い風が吹き続けること、
リオ・ガジェゴス以降進路上どうしても
向かう風を受けてしまうこと。
当然そんなことは出発前から分かっておりました。
実際この時期、多くのサイクリストは
強風を考慮してバスでスキップしてしまうエリアなんです。
でもゴールまで数百kmに迫った地点で
バスに乗るなんてしたくなかったし、
何とか自力で、と思っておりました。
ただ吹き付ける風はあまりに強く
頑張ってどうにかなるレベルではない。
やむをえず、ヒッチハイクをすることに。
交通量の少なさから長期戦を覚悟したヒッチハイクですが
10分ほどすると1台のピックアップトラックが
停まってくれるではないか!
ちょうど進行方向にある街へと帰るのだという
“レネさん&ダイアナさん”父娘。
なんと僕がエル・カラファテの宿を
予定より早くチェックアウトせざるを得ない理由となった、
La Rengaのコンサートを見に行った帰りだというのです。
どの宿も満室で困ったけど、これでプラマイゼロになった気がします。
La Rengaの皆さん、ありがとう!
「いや、もうちょいゆっくり…」
と後ろからお願いしたくなるほど
の速さで爆走するレネさん。
けど乗せてもらってる身なので
わがままなんて言えません。
でも、ちょっと怖い…。
ここで一度、国境を越えチリへ再入国。
ゴールのウシュアイアは
アルゼンチン側ですが
このあたり国境線が複雑なので
出たり入ったりなんです。
検疫でタマネギとトマトを没収される。
さらに船に乗って海を渡る。
客室などなく車に乗ったままです。
あまりにも風が強いため、
なかなか船が出ず
2時間近くも待たされました。
乗船時間はわずか30分ほど。
向こう岸についてさらに40kmほど進んだ
「セロ・ソンブレロ」という小さな町で降ろしてもらうことに。
結局、終日風が止むことは無く
町中まで1kmあまりを進むにも大変なほどでした。
レネさん、ダイアナさん
本当にありがとう!
町の外れには
公営の無料キャンプ場が。
「こんな大草原の真ん中に
誰が泊まるのか」
と思いきや、予想以上の
車が泊まりに来てました。
という具合に、
思い通りにことが進まないながらも
ゴールに向け前進することができました。
自分の脚で進めなかったのが悔しいけど
これがパタゴニア、世界の果てならではの旅なのかもしれません。
旅の終わりウシュアイアまで、あと400km。