雨の日は雨を…

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【329日目 18,206km】

 

 

アウスロラル街道の中間地点にして

最も大きな街「コヤイケ」に滞在中。

昨日まで降り続いた雨は止み、

晴天のもと遥か遠くにはパタゴニアの山々が見えます。

 

 

 

リフレッシュの為に

コヤイケでは2日間の休養。

パタゴニアの玄関口である

「プエルトモント」から

10日間走り続けたことに加え、

直近5日間は雨ばかりで身体はクタクタ。

 

 

 

トレッキングやサイクリングの

合間の休憩地点という位置付けで

街そのものには

さほど用事はありません。

ひたすらベッドで横になってたいけど

片付けておきたいこともたっぷりある。

 

 

 

 

 

 

 

 

まず最優先事項は装備品を乾かすこと。

 

とにかく雨に降られ続けたことで、

あらゆるものがジメッと湿り不快極まりない。

パタゴニアを進む限りどうせまた降られるんだろうけど、

一回なんとしても綺麗にリセットしておきたかった。

 

 

 

そして、プエルトモントで買った

安物ペダルの交換。

途中で応急処置はしたものの

長続きはせず、

気付けば左右ともに

ボキッと折れていたんです。

 

 

 

雨により急激に磨り減った

ブレーキパッド共々

ここで交換しておきます。

ゴールが近いからと

いい加減なものを選んだのが失敗。

“安物買いの銭失い”とはこのこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

2日間の休養を終えると再びサドルにまたがります。

1200kmに及ぶ「アウストラル街道」ですが

ここからは後半戦に突入。

 

 

 

町を出ると、開けた平原が

どこまでも続いておりました。

深い森林を縫うように

進むことが多かったので

この開放感のある景色は新鮮。

山頂に雪をかぶった景色も綺麗。

 

 

 

今日の獲得標高は1,000mあって

地味に上りの多い行程だったけど

景色も良いうえに

久しぶりに天気も良かったからか

全然苦しく感じることも無く。

ずっとこの天気が続いておくれ。

 

 

 

昼前の11時と

のんびりスタートだったけれど

夕方5時頃には

60kmあまりを走り切って

予定していた無料のキャンプ場に到着。

まだ明るいけど早めに切り上げ。

 

 

 

 

無料の割には手入れがしっかりされていて

居心地最高。

せっかくの大自然の旅、

毎日こんなキャンプが続いたらどんなに幸せだろう。

(これから数日先の予報をチェックしてるからこそ切なくなる…)

 

 

 

煌々と降り注ぐ太陽の下、

読書しながらコーヒーを飲むなんて

最高の贅沢。

さらにチョコチップクッキー

まであるんだから言うことない。

(あぁ、明日からも晴れてくれたら…)

 

 

 

日が暮れた頃に食べるのは

やっぱり今日もパスタ。

街を出た直後は食材も豊富だから

調理自体が楽しくなる。

ジェノヴェーゼとトマトソース

の日替わりです。

 

 

 

 

 

 

 

 

コヤイケ出発2日目。

昨日上りきっていなかった坂を

ちょっとだけ上る所からスタートです。

 

 

 

道路脇の“動物注意”の看板が

ヤギになったりキツネになったり。

鳥は多いんですが

哺乳類の野生動物は見ていません。

この地域にはネコ科の“プーマ”が

生息してるけどかなりレアだそう。

 

 

 

コヤイケ以降は

ほとんど未舗装になるのですが

このあたりはまだ

綺麗なアスファルトが続いております。

この道がどこまでも

続いてくれればいいんだけど。

 

 

 

やがて峠を越えると

蛇のように曲がりくねった

九十九折りの下り坂が。

大自然を整った道路が

貫く様はどこか

ヨーロッパのようでもあります。

 

 

 

 

 

坂を下った先で「セロ・カスティージョ」という町に到着。

“アウストラル街道”沿い有数のトレッキングスポットで、

僕も1日休んでちょっと歩こうかとも思ったのですが

あいにくの天気なのでスルーすることに。

 

 

町でひと休みしてから

午後の部突入。

朝から薄く広がっていた雲は

徐々に厚みを増してきました。

さらに起伏も激しくなり

気分も重たくなる。

 

 

 

 

 

やがてこちらの見晴らし台に到着。

実はここから、先ほどの町の名にもなっていた

“セロ・カスティージョ”というパタゴニアの名峰の一つが

見えるのですが、残念ながらその姿は見ることは出来ず…。

 

このあたりで少し気持ちも折れてきました。

アウストラル街道の魅力は、道中に待ち受ける絶景の数々。

しかし悪天候が続くばかりで

正直期待していた景色を見ることが出来ていません。

 

トレッキングの予定を中止にしたり、

雨を避けるためアウストラル街道を逸れていく

他のサイクリスト達と「まぁ、仕方ないよね…」と

傷を舐めあうのが精いっぱい。

 

 

 

やれやれ、とため息をつきつつ

再び漕ぎ始めたところで

看板に書いてあるのは

「舗装路、終了!」のお知らせ。

分かっていたことだけど

いよいよか、はぁ…。

 

 

 

やがて雨も降り始めました。

瞬間的にひどく降ることもあるけど

基本的に雨粒は小さなことが多く

写真では分かりにくいほど。

パタゴニアの雄大な自然の支えだけど

もうちょっと晴れの日もあって欲しい。

 

 

 

 

 

前日と同じく60kmほど走った所で

川辺にちょうどいい場所を発見。

軽い雨なら木が防いでくれそう。

 

 

先人が焚火の後を

残してくれていたので

ありがたく再利用させてもらう。

あまり気分の良い日じゃなかったけど

揺らめく炎をぼんやり眺めるのが

ちょっとした癒しになりました。

 

 

 

 

 

 

 

コヤイケ出発3日目。

朝方テントを打っていた雨の音は

出発の頃には鳴り止んでいました。

今のうちに少しでも進もう、と急いで準備を整える。

 

 

 

走り始めてすぐ

前方の山に這うように

伸びている雲が美しい。

気流は激しいようで

こっちは止んでて、向こうは降ってる

なんてのもよく見えます。

 

 

 

1時間ほど走った所で

割と急な上り坂に突入。

足元の砂利道が

すごく緩いワケじゃないけど

ここまで傾斜が急だと

なかなか前にも進みません。

 

 

 

 

 

 

そして坂を上ってしばらくのところで

やっぱり降り出した雨、それもかなり土砂降り。

 

ちょうど道路脇にキャンプ場があり避難したけれども

オーナーも誰もおらず。

勝手に小屋の下で、なついてくれない犬と一緒に

雨宿りをさせてもらいます。

 

 

 

なんとそのまま激しい雨は

3時間にもわたって降り続けました。

もう今日は無理か、と思った

15時過ぎにピタッと止んだ雨。

「ちょっとだけでも進むか」と

だらだら漕ぎ始める。

 

 

 

“テントを張れる場所はあるだろうか”

とキョロキョロしながら

林道を進みつつ、

この写真を撮った数分後。

再び堰を切ったように

この日一番の雨が降り注ぎました。

 

 

 

 

1年近く旅をしていて、この数日ほど

自転車を漕ぐモチベーションが下がったことはありません。

 

“止まない雨はない”とか“雨の日は雨を愛す”なんて言葉は

その日家にいて、外に出る用事がない人が他人事だから言えるのであって、

「30kgの荷物を携えてパタゴニアの砂利道を

大雨の中走ってみやがれ!」という

やり場のない怒りをここに綴らせて頂きます。

合掌。

 

 

 

 

土砂降りの中10分ほど必死に漕ぎ続けたところ。

道路脇に人家を発見し、

なりふり構わず避難させてもらうことに。

 

 

 

玄関を開け穏やかな笑顔で

迎えてくれた男性は“アンヘルさん”。

温かいコーヒーを供してくれました。

天使(アンヘル)の名に違わぬ

優しさを持ち合わせた

素敵なおじさんです。

 

 

 

凍える自分の体が落ち着いたら

濡れた衣類を乾かさせてもらいます。

ひと段落したところで、ふと

窓の外を見ると雨は止んでました。

いいんです、いいんです。

僕が屋根の下に入ると止むんです。

 

 

 

そのまま小屋の下に

テントを張っても良いと

許可を貰いました。

ワラの上で寝たら気持ち良さそうだけど

まず寒いし、アトピー持ちだから

絶対痒くなる。

 

 

 

ずぶ濡れになった上に

旅の中で最も短い25kmしか進めない

という散々な1日だったけど、

アンヘルさんの優しい眼差しは

「まぁまぁ、そんな日もあるよ」と宥めてくれているようでした。