アタカマ砂漠をゆく

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【282日目 15,253km】

 

 

ボリビアから宝石の道を越え、チリに入国。

北部に広がるアタカマ砂漠を南下し

首都サンティアゴを目指しています。

 

 

 

アタカマ砂漠を走り始めて4日目。

毎日ペダルを漕ぎ続けるけど

とにかく周辺に街が無い。

物資が補給できないうえに

午後から吹き荒れる風のせいで

朝早く行動しなければいけない。

 

 

 

ボリビアの終盤は苦しみながらも

宝石の道を走り切ったことに清々しさを感じており

ここからはのんびり期間が続くだろうという

根拠のない予想をしていたけれど、

それはあっさり裏切られました。

 

 

 

ここまで風が強いことは

予想外だったにしても、

街が少ないことは

地図を確認すれば分かったはず。

見込みの甘さにより

食料の買い込みも不足気味です。

 

 

 

 

 

 

80kmほど走ったこの日の午後4時前、

想定していなかった場所に食堂が現れる。

この先、風が避けられる場所もないかもだし

ちょっと早いけどここにテントを張らせてもらうことに。

 

 

 

思えばまともな食堂に

立ち寄るのはチリで初めて。

ただシンプルなスープと

鶏肉を焼いたものがだけだったので

まだチリの食文化というものが

分かっていない。

 

 

 

ためらうことなく

テントを張る許可を下さった

“ウェンディさん”ご一家。

砂漠のど真ん中で

こんなのんびりした

レストランに出会えてよかった。

 

 

 

ちなみに食堂内で付いていたテレビの画面を見て、

ボリビアから時刻が1時間ズレていることを知りました。

もう入国から1週間経つというのに

人との関りも少なく砂漠を走るばかりで全然気づかなかった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

アタカマ砂漠走行5日目。

食堂で朝食をご馳走になり今日も走り始めます。

 

 

 

空気がひんやりとして

風も無い朝の砂漠は

走っていて本当に気持ちが良い。

ただ、こんな時間は

せいぜい最初の1時間で

景色も変わらず進んでる気もしない。

 

 

 

 

 

 

走行開始から1時間弱ほど走ったところで

道路の脇に地面から、うにゅっと突き出る大きな手を発見。

 

こちらはアタカマ砂漠のちょっとした見所となっている

その名も「砂漠の手(マノ・デ・デシエルト)」

という彫刻作品。

 

 

 

アタカマ砂漠の象徴として、

さらにはかつての独裁政権に

よる被害者を弔うため、

約30年前に製作されたそう。

何もない砂漠の途中で

異様な存在感を放っていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日は斜度がゆるいながらも

獲得標高は1,000mに及ぶ行程。

幸いここ数日に比べると

風がほとんど吹かないおかげで

されほど苦しむことなく

漕ぎ続けることができています。

 

 

 

道端に“食堂”と書かれた小屋を

発見するけども

残念ながら鍵が掛かってました。

“肉が食べられる!”と期待したけど

いつもどおりクッキーなどの行動食で

お腹をごまかすしかなさそう。

 

 

 

気温は25℃くらいだろう

と思うけど、

雲一つなく太陽に

照らされ続けることで

体力を奪われる。

見つけたバス停でしばし休憩。

 

 

 

気付けば水も残り少なくなっており

やむを得ず、走行中のトラックを止め

せがんでしまう。

幸い1台目で停まってくれた

ドライバーさんが快く

ペットボトル一杯に注いでくれました。

 

 

 

前後数十kmに渡って

水の一滴も補給できる場所などないことを、

トラックの運ちゃん達は誰よりもよく知ってくれている。

 

数日前にはたくさんの差し入れを頂いたし、

チリのトラックドライバー達は

とても好意的に助けてくださいます。

 

 

 

そして夕方5時過ぎ、

前日に続くパンク。

連日ということはタイヤに問題か

と疑ったけれど

新たなトゲが刺さっていました。

チリの高速、多いです。

 

 

 

 

 

 

少しずつ日も傾き、

どこか風をかわせる場所は無いかと探しても

辺りには本当に何もないので

道路から百mほど離れたあたりでテントを張る。

 

この時は運が良く、ここ数日ではありえないほど

風が弱かったので無事寝床に着くことができました。

 

 

 

 

 

 

 

 

アタカマ砂漠走行6日目。

今日も午後の風が怖いので

太陽が上ると同時に走行スタート。

 

 

 

あたりには無数のウインドミル。

このあたりも

風が強い地域と聞いていたので

朝のうちに走り抜けておきたかった。

今は風が弱いどころか

優しい追い風が背中を押してくれるほど。

 

 

 

2時間ほど走った所で

ドライバー向けの食堂を発見。

まだ時間も少し早いけど

何か人の温もりがこもったものを

食べたいので寄ることに。

砂漠に疲れてるんです。

 

 

 

ランチには早い時間だったので

食べれたのは

ハムエッグとパンだけ。

それでも美味しかった。

ただの炒り卵なんだけど

一口ずつ味わって食べる。

 

 

 

 

すると食事中、しつこく話しかけてくる運ちゃんが。

 

ぶっきらぼうな話し方と強いアクセントで

ほぼ何を言ってるか分からなかったのですが、

どうやら「オレがおごってやる!」と言ってくれてるよう。

 

ありがとうアレックさん、

人生で一番おいしいスクランブルエッグでした。

 

 

 

 

 

 

昨日、標高を上げたぶん

今日は下り基調なんだけど

やはり午後からは風が強まるせいで

それほど速くは進めない。

力んでも無駄なので

辛抱強くじっと漕ぎ続けていく。

 

 

 

そして夕方4時、またも道路脇に食堂を見つけました。

本当に砂漠の中のオアシスのよう。

まずは駆け込んで冷たいコーラを流し込む。

 

 

 

お願いしたところ

すんなりとテントを張る許可を

もらうことができました。

地面も平らで整ってるし

風を防ぐ方向に建物があるし

完璧なキャンプ地です。

 

 

 

ランチでも夕食でも

だいたい千円弱ほどと

決して安くはないチリの食事事情。

それでも疲れ切った体には

肉が染み込みます。

この固い牛肉ですら美味しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

アタカマ砂漠走行7日目。

今日には小さな町に到着できるはず。

早くシャワーも浴びたい…。

 

 

 

南米大陸の東側沿岸に

細長く伸びるチリの土地。

夏を迎える1月は

陸地の気温が高まることで

広大な太平洋からの空気が

一気に流れ込んでくるそうです。

 

 

 

この日は正午前から

すでに風が吹きはじめてきました。

上りも多い行程だったので

どのみちゆっくりなんだけど

毎日吹きさらされて疲労困憊。

もう好きにして…。

 

 

 

1日に1回はこんな食堂が

道路脇に現れてくれるので、

助かっています。

朝と夜はテントで調理できるけど

日中の移動中は

できるだけ手軽に食事を済ませたい。

 

 

 

さほどお腹が空いていないので

スープだけでささっと済ませる。

いまだに

チリ食文化の核心を突かない

微妙なチョイスをしていると

我ながら思います。

 

 

 

 

 

午後からも止まない風の中

ゆっくりと進み続け、

標高800mの峠に到着。

 

ここから海側に下りていけば

およそ1週間ぶりとなる

町にたどり着けるはず。

 

 

そして峠の向こう

最後の10kmが辛かった。

気持ちよく進めそうな下り坂なのに

この3日間ほどで

最も強い向かい風に吹かれる。

だから、もう好きにして…。

 

 

 

 

 

そして夕方6時、

サンペドロの町から7日間走り続けた果てに

ようやく海沿いの街「チャニャラル」に到着!

 

日々、風と戦い続けたことで

もう脚がガクガク。

しばらくここで休むことにします。