36ヵ国目・チリ
【278日目 14,820km】
「宝石の道」を走り終え、ボリビアも出国。
さらに2国間の緩衝地帯を5km進んだところに
次なる国・チリへの入国審査がありました。
パスポートチェックとX線検査を
終わらせると、あっという間に越境。
国境を越えると同時に
アスファルトで綺麗に整えられた
公道に合流。
およそ一週間に及んだ
砂の道との戦いも
ここで終わりとなります。
4,500mの高所に位置する
宝石の道から脱出して
はじめの町へ向かうには、
標高を2,000mも
下げていきます。
はるか下の地平線が霞んでいる。
2時間以上にも渡って
ペダルをほとんど漕ぐことなく
一気に駆け下りていく。
時速30km近いけど
真っすぐなうえに
交通量がほとんどないのが助かります。
夕方4時頃に到着したのが
アタカマ砂漠観光拠点の町
「サンペドロ・デ・アタカマ」。
宝石の道中盤以降ずっと楽しみにしてたのは、
この町の宿で何もせずゆっくり休むこと。
しかし、いざ町に突入してビックリ。
無数に存在するはずの宿はどれもが満室。
砂漠で年越しをして、この日は1月4日。
クリスマス休暇でバカンスにやって来た観光客で
町は溢れ返っていたのです。
到着から1時間のうちに
訪ねた宿は15軒ほどでしょうか、
町の中心部にやっとのことで
空室のあるトコロを見つけました。
“郊外で野宿”なんていう
最悪のシナリオは何とか避けられた。
南米屈指の物価大国であるチリ。
さらに観光のための街である
「サンペドロ・デ・アタカマ」
の物価は高く1泊¥6,000。
ただ砂漠を走り切ったご褒美に
奮発することにしました。
歩いて回れるほどの大きさしかない
「サンペドロ・デ・アタカマ」。
欧米人が闊歩するメインの通りを歩いても、
カフェとツアー会社があるだけ。
この町自体に見所は無く、
ここから皆さん“宝石の道”や“ウユニ塩湖”へ
ランクルツアーに出かけるみたいです。
観光客の割合は
フランスとブラジルが多いようで、
一気にヨーロッパにワープしたような
錯覚すらしてしまう。
クリスマスとあって
家族連れもよく見かけます。
そんなサンペドロの町で
一番の楽しみだったのが食事。
砂漠の日々はオートミールやクッキー、パスタばかりが続き
走行中は頭の中で食べ物がずっと巡っていました。
思い通りの食材で
思い通りの調理ができる、
ということがこんなにも嬉しい。
滞在中は外食することなく
毎食自炊してました。
パスタは大好きなので飽きません。
朝食は
町で有名なパン屋さんで買った
フランスパン。
オートミールの数倍美味しい。
そして、熱々のコーヒーが
飲めるなんてもう夢のよう。
さらに午後には
ケーキでコーヒーブレイク、
もう砂漠で妄想していたことを
全て実現してやりました。
とにかく“食べ物”なんです。
このケーキ全然美味しくなかったけど…。
オーナー夫妻の
“イヴァンさん&アンへリカさん”
がまた良い方たちで、
夕食に呼ばれた時の魚が美味しかった。
チリはワインも有名ですよね。
僕、飲めませんけども。
という具合に
「宝石の道」走破後、3日間の“冬休み”は
心も体も癒される最高の休息期間になりました。
普段から一人でいることが好きなのですが、
特に今回のように大自然に浸り切った直後は
あまり人と接することなく
神聖な時間の余韻を
たっぷり味わうのが至福のひと時でございます。
合掌。
サンペドロの町で、写真整理やブログ投稿など
のんびりとやるべきことを片付けると
リフレッシュした気持ちでまた自転車を漕ぎ始めます。
宝石の道を走り終えたとはいえ
ここはまだ
チリ北部に広がるアタカマ砂漠の中。
道が舗装されてはいても、
目の前の砂の大地は
もうしばらく続くようです。
砂漠というと
平坦なイメージがあるけど、
アンデスの一角でもあることから
起伏はかなり激しいです。
この日も獲得標高は
1,000m以上に及びます。
ペルー、ボリビアに比べ
道路がとても綺麗に
整備されているのが分かる。
物価面において「南米のヨーロッパ」
などとも言われるチリ。
経済力も豊かなようです。
朝の出発から
緩やかな坂を上り続け
12時には峠に到達。
それなりにしんどい坂だったけど
アスファルトの道を走れるなら
砂に埋まらないぶん快適。
ただ、坂をくだった峠の向こうが過酷だった。
なだらかな平地がどこまでも続く景色の中、
14時を過ぎた時点で
ものすごい向かい風が吹き始めたんです。
あたりには風力発電のウインドミル。
写真で見ると爽やかですが、
これがあるということは
一帯は自転車走行の困難な
強風地帯だということ。
ペダルを踏み込んでも進まない。
平地だというのに
ときに時速8kmという遅さで
夕方5時にやっと
目的の街「カラマ」に到着。
宝石の道走破直後なんだから
のんびり漕がせてほしい。
疲れて余裕がなかったことから
目に留まったハンバーガー屋さんへ。
よく考えると入国後、
はじめての外食。
チリはどんな料理が有名なんだろうか。
これから南へ下っていくのが楽しみだ。
街中に入り込んでしまったので
野宿をあきらめキャンプ場へ。
¥1500と高いんだけれど、
WiFiはサクサクで
シャワーから温かいお湯。
チリのライフラインは安定してるよう。
サンペドロの町を出て
アタカマ砂漠を走ること2日目。
ここから数日は、
路面の整った高速道路の路肩を進んでいくことになります。
山側の内陸部から
海の方へ向かっていくことで
標高2,000m地点から
徐々に下っていきます。
緩やかな坂を信号も無く
滑走していくのが気持ちいい。
途中で小さな集落に到着。
高速道路が延々と続くと
人との交流も少ないんだけど、
宝石の道で深砂に苦戦しまくった
数日前を思えば
黙って爆走してられるのも悪くない。
集落の外れのキッチンカーにて
ランチのホットドッグ。
まだ始まったばかりだけど
チリ旅はこんなファストフード
ばかりになるんだろうか。
海沿いの町に期待。
昼食を終えた走行を再開した午後2時過ぎ、
前日と同じ苦難がまたも襲ってきました。
海側から強烈に吹きつける向かい風です。
下り坂だというのに
やはり時速10kmも出せなくなり、
重たいペダルを踏み込んでいく。
結局、予定していた距離を
走り切ることはできず
高速道路脇に見つけた廃墟で
テントを張ることに。
日が暮れてもしばらく風は止まず
ボロボロの壁でなんとかしのぎます。
向かい風と格闘していた日中、
ほんの30分のうちに
3人ものトラックドライバーから
食料や水の差し入れをもらいました。
アタカマ砂漠は風との戦いになるけど
ちゃんと人の温もりも存在しています。
アタカマ砂漠走行3日目。
この日も午後からの強風が予想されるので、
日も昇りきらないうちからせっせと準備し
朝7時にはペダルを漕ぎ始めます。
砂漠ということで
朝晩の寒暖差もかなりのもの。
ほんの1時間前は凍えながら
テントを片付けてたのに、
ちょっと漕ぎ始めると
もうジャケットが暑くなってしまう。
風さえなければ
路面も綺麗だし、道路幅も広いし
こんなに快適な道はありません。
ただ、午後の風を恐れるあまり
のんびりする間もなく
走れるうちに少しでも進んでおく。
すると後輪がパンク。
ごくごく小さなトゲが
しっかり刺さっていました。
アメリカやメキシコでもそうだったけど
砂利道なんかより高速道路の方が
パンクが多いです。
正午を過ぎ、そろそろ風が吹き始めるか
というタイミングで道路脇すぐにあるキャンプ場へ。
事前に下調べをしたかぎり
他に風をかわせる場所もなさそうだったので
何とか到着できてよかった。
気付けば標高も
500mほどまで下っており
気温も20℃を越えて
じんわり汗をかくくらい。
それでも夜はしっかり冷え込んで
ぐっすり眠れるのが嬉しい。
街がないのでまともに
買い物ができないけれど、
ガソリンスタンドだけはあるので
燃料を気にせずパスタを茹でられます。
そのパスタすら無くなりそうだけど
その前に砂漠を走り切りたい…。
ということで、
走り始めたのは36ヵ国目となるチリ。
細長いことで有名な南米の大国とあって、
走り切るのに2ヵ月程度は掛かってしまいそう。
しかも、現在は
北部から首都のサンティアゴを目指しているのですが
その間にこれといった見所がないので
ただただ南に向け走るだけの日々が続きそう…。
その道中に素敵な出会いがあることに期待しつつ
しばらくイノシシのように爆走していきます!