目指せ、宝石の道
【265日目 14,261km】
美しき塩の大地「ウユニ塩湖」の走行を終えると
20kmほど離れた観光拠点の町・ウユニに滞在。
年末が差し迫っていたこともあり
ここでのんびり休めたらよかったのですが、
僕の気持ちも行動もソワソワとしておりました。
というのも、これから進む道は
南米大陸きっての難所となるはずだから。
それはウユニの町から南の方向。
真っすぐ公道を進めば隣国チリに入国できるけど、
途中であえて道路をそれて未舗装地帯を進みます。
そこに広がるのは「アタカマ砂漠」。
なんでわざわざ自転車で砂漠を進むかというと、
標高4,000mもの高所に存在する砂漠の道のりが
その美しさから“宝石の道(ルタ・デ・ラス・ホジャス)”
と呼ばれており、
世界各国のサイクリストの憧れとなっているからなんです。
およそ250kmに及ぶ
砂漠地帯を渡り切るのに
想定する日数は8日間。
まともに補給が見込める場所は
なさそうなので、
ウユニの町で食料を買い込んでおく。
当然、水の携行も必須。
5リットルの大きなボトルに加え
1リットルボトルを2本。
これに食料も加えると
普段の走行よりも10kg程度
重い自転車で走ることになります。
2日間のウユニでの滞在を終えると
覚悟を決め、ペダルを漕ぎだします。
まず“宝石の道”に突入する分岐までは200km。
そこまでは公道を行きます。
未知の秘境に向かう
コチラの緊張感など
知る由もないのは
道端のアルパカ達。
可愛らしい耳飾りを付けて
じっと見つめてくれます。
向かう先にある国境が
決して主要なものでなく
さほど大きな都市も無いからだろう、
すでにところどころ
未舗装の部分が出てきます。
でも地面は固くて難なく漕げる。
午後2時過ぎに90kmを走り
「サンクリストバル」
の町に到着。
道路も整ってるし
思いのほか
大きな町ではあるみたい。
まだ漕げる時間だけれども
風も出てきたし、これからのことを考えると
ここで泊まって体力を温存しておきたい。
屋台メシで遅めのランチ。
ボリビアではどこでも
“リャマ肉”が定番みたい。
当たり外れも無く
どこで食べても美味しいから
かなり好きになって来ました。
町の中心近くに宿を発見。
電波も安定して
ベッドで眠れるという環境も
しばらくお預けになりそうだから
今日のうちは
特にしっかり休んでおく。
ウユニ出発2日目。
今日も綺麗に整った路面を
朝から快適に飛ばしていきます。
日本国内外のサイクリスト達が
書き残してくれたブログを見つつ
宝石の道の旅程を組んだのですが、
数年前には未舗装だったエリアも
今はアスファルトで舗装されてます。
時代は流れている。
おかげで目標の“ビジャ・アロタ”には
予想より早いお昼頃の到着。
砂漠前最後の宿泊を、と思いきや
宿主さんが出かけており
泊まることが出来ない。
ネットも繋げると思ったのに…。
チキンの煮込みとライスを食しつつ
しばらく沈思黙考。
もうこの先に宿はないので
進むとなれば野宿になるのは決定。
ただ砂漠に備えて
食料も体力も温存しときたかった…。
結局、留まるにしても
時間があまりに勿体ないので
進んでおくことに。
この先何があるか分からないけど
まぁ何とかなるはず。
不安とともに坂を上り始める。
程なくして坂の途中で
アスファルトが途切れてしまう。
おかげで予想以上の早さで
ここまで来られたけど、
いよいよこれからは
土埃の風景が始まってゆく…。
日が傾くにつれ
強くなり始めた向かい風に加え
未舗装路の凹凸も
だんだん荒くなってゆく。
まだ砂漠突入前なのに
すでに悪路が嫌になる。
すると18時を過ぎた頃
石造りの建物を発見。
近づくと食堂だったようで
持参食料節約のためにも
ここで食べさせてもらうことに。
ありがたや。
出てきたのはリャマのステーキ。
水が90°未満で沸騰してしまう
高所のお米はモサモサで
決しておいしくないけど、
リャマの肉だけは裏切らない。
大事なたんぱく源です。
店の横にテントを張ろうとすると、
(というか一度張り終わった後)
店主さんから一言。
「やっぱ物置で寝れば?外寒いし」
今日から連日のテント泊を
覚悟してたので、嬉しいお誘い。
用意していただいたマットレスでぐっすり眠り
迎えたウユニ出発3日目。
いよいよ、今日にはアタカマ砂漠の難所
“宝石の道”に突入です。
これまでにもサイクリストを受け入れてきたという
店主のアビエルトさんにお礼を伝え、いざ出発。
この先に過酷な旅路が
待つと思えば、
良い天気も、良い景色も
逆に不気味に思えてしまう。
どんな景色が広がっているのだろうか。
期待2割、不安8割。
そしてお世話になった食堂から10kmあまり。
ウユニの町を出て以来ずっと続いた道から
左の方向に目をやると、
車の轍がくねくねと道を作っていました。
ここが“宝石の道”、北側の起点。
ついに過酷な旅路へと足を踏み入れてゆく。
スタートからわずか1kmのところで
傾斜の急な坂が…。
公道ではないので
斜度が計算されておらず
ハンドルを強く握って
重い車体を必死に持ち上げる。
坂を越えた先には
観光にやって来た
4WD車が複数見えました。
宝石の道は絶景ゆえに
観光客も訪れ
そして、轍を作ってくれるのです。
これから数日にわたり
目の前に広がっているであろう
砂の道。
ただ予想以上に固く安定しており
まだまだしっかり
漕ぐことができそう。
砂漠突入2時間足らずで着いたのは「カニャパ湖」。
白く見えるのは塩ではなく
夜間の低気温によって凍ったであろう水面です。
“宝石の道”というのは
道中に点在する湖を
巡っていく道でもあり、
現に英語圏の旅行者からは
“ラグナ・ルート(湖の道)”
として知られてもいます。
青空の下に広がる湖に
花を添えるのが、
ピンクがかった体躯が美しい
フラミンゴ達。
標高4,000mの水辺は
鳥たちの楽園です。
ちょうど昼頃でもあり
湖畔にてランチ。
フレーク状に乾燥したものに
お湯を加えてできあがるのは
インスタントマッシュポテト。
飽きる前に砂漠を走破できるか。
午後から徐々に悪くなっていく路面状況。
ゴツゴツと振動が激しくなると
サドルを降りて、自転車を押さざるを得ません。
それでも、ペダルを
漕ぐことができる箇所もあり
「あら、意外と楽勝?」なんて思いつつ
砂と石の道を進んでいきます。
気温は10°を越え
非常に快適。
カニャバ湖を発って
1時間後には
次なる「エディオンダ湖」へ。
氷が張ってない方が
綺麗なんだろうな。
ちなみに12月は初夏です。
湖畔にはとても綺麗に整った
観光ホテルが。
値段は1万円以上するようなので
休憩にコーラだけ買わせてもらいます。
まださすがに初日なので
泊まりたいとは思わない。
引き続き砂利道を進んで
次なる湖を目指します。
午前中はツアートラックに
たくさん追い抜かれたけど
午後も3時を過ぎると
車も通らなくなりました。
午後4時ごろ、3つ目の湖「オンダ湖」に到着。
“宝石の道”に入って約30kmのところで
1泊目の夜を過ごすことにします。
夜はパスタ。
燃料のガソリンにも限りがあるので
なるべく茹で時間の短い
カッペリーニ(細麺)を
常食として採用しました。
ここから毎日これが続きます。
比較的穏やかに1日目は終了。
ここから徐々に苦しむことになるんだろうな、と
どこかおびえながらも寝袋に包まれました。