憧れの絶景

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【260日目 14,027km】

 

 

パスポート置き忘れにより

ひとりでてんやわんやしたオルロには2日間の滞在。

南の隣国チリの方向へと向かいつつ、

道中にあるボリビア随一の絶景を拝みに走り始めます。

 

 

 

オルロ郊外へ出ると

工事によるオフロードが。

スピードが遅くなるうえに

砂塵防止にまかれた水のせいで

泥が跳ねて自転車が泥だらけ。

しかも10kmも続いておりました。

 

 

 

オルロ以降さほど

大きな都市がないらしく

交通量が激減。

さらに山も無いもんだから

景色の変わらない平地を

数時間も漕ぎ進めていく。

 

 

 

午後からは一時雨も降り

商店の軒下にて

雨宿りをさせてもらう。

これからは景色の良いエリアが

続くことになるから、

なるべく晴れて欲しい…。

 

 

 

予定を越え120kmも走ってしまい

「チャヤパタ」ヘ。

それなりに大きな町で

野宿もできなさそうなので

大人しく宿へとチェックイン。

もっと前で止まっとけばよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

オルロ出発2日目。

今日も周りに何もない平地を進んでいきます。

日中は風も強くないし、快適快適。

 

 

 

出発から30km地点で

道が二手に分かれます。

真っすぐ行けば国境方面だけど

“壮大な寄り道”をするために

ここで右へと進路を取ります。

あぁ、ワクワクしてきた。

 

 

 

分岐から10kmのところで

集落に到着。

屋台のおばちゃんが

肉の揚げ焼き“チチャロン”。

豚が定番だけど、「何の肉?」と聞くと

これはリャマの肉だそう。

 

 

早速味わったのですが

肉の繊維がしっかりしてて、うま味もあって絶品。

牛肉にかなり近いけど、牛より安いそうです。

世界各国でヤギ、ラクダ、ネズミなど色々食べてきたけど

リャマが一番おいしいかも知れない。

 

 

 

そのまま変わらない景色を進み

出発から90km地点で

道路脇に廃屋を見つけテント泊。

主要道ではないので

車も人も少なく

静かで穏やかな夜を過ごしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

オルロ出発3日目。

朝から雲のない良い天気。

憧れの絶景に近づくのを感じつつ、今日も漕いでいきます。

 

 

 

車とすれ違うことも

追い抜かれることもほとんどない。

昨日分岐を曲がってから

本当に静かな道のりになってしまった。

ただ目指すのは自然の絶景、

人などほとんどいない場所。

 

 

 

昼過ぎに一つの集落を過ぎてから

道が未舗装の砂利道になりました。

遠くには高くそびえる

「トゥヌパ火山」が見える。

ガタガタの振動を受け流し

黙々と進みます。

 

 

 

未舗装路を30km進んだ先に

「ヒリラ」という小さな集落に到着。

村に一つだけの宿を見つけ

泊まることに。

そして目的の景色はすぐそこ。

明日が楽しみ…。

 

 

 

 

 

 

 

オルロ出発4日目。

出発の宿から7kmばかり進んだところ、

昨日眺め続けていたトゥヌパ火山がすぐそこに。

ただ目指していた景色はこの火山ではなく、

くるっと背中を向けた反対側に広がります。

 

 

 

山と反対方向に数十m進むと

遂に目的の場所が…。

「良い旅を」と書かれた

石のゲートの向こうには

どこまでも続くだだっ広い

空間が広がっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲートを越えてやってきたのは

果てしなく広がる塩の大地、

世界的にも有名な絶景スポット「ウユニ塩湖」!

 

圧倒的な自然美が続く南米の旅路でも

かなり楽しみにしていた場所です。

(360°を塩が取り囲むのでしばらく白い写真が続きます。)

 

 

 

地平線の果ての果てまで続く塩湖。

南北100km、

東西には250kmもの広さがあり

新潟県とほぼ同じ広さだそう。

漕いでも漕いでも景色は変わらない。

“広大”という言葉のスケールが違う。

 

 

 

アンデス山脈が隆起した際、

取り残された海水が干上がって

できたのが「ウユニ塩湖」。

塩の厚みは薄くて60cm、

最も厚い所で11mにも及ぶのだそう。

膨大な量の塩です。

 

 

 

「塩湖に道あんの?」って話ですが

観光用の4WDが走って

塩の表面をならしてくれているので

うっすら一本道が見えるんです。

スマホのGPSも誤差はあるけど

何とか使い物にはなる。

 

 

 

 

 

 

そんなウユニ塩湖ですが、楽しみばかりでなく

自転車旅らしいトラブルにも見舞われることになります。

 

まずは走行開始30分、

三脚を立てこの写真を撮った直後のこと。

 

いつもこんな写真を撮るときは、

ガードレールなどに自転車を立てかけ

カメラと三脚をセッティングするのですが

当然塩湖に立てかける場所なんてあるはずもなく…。

 

 

“よっこいせ”と重い自転車を

起こした瞬間、

三脚に自転車がドンとぶつかり

カメラごと倒れてしまいました。

「うそっ」と冷や汗をかき

すぐさまカメラをチェック。

 

 

するとレンズ(中古6万円)の接合部分が

めりっと隆起してしまっておりました。

まるでアンデス山脈の様に。

 

この時ほど自分の浅はかな行動を呪ったことはありません。

もうちょっと三脚から離れて自転車を起こしておけば…。

覆水盆に返らず、破鏡再び照らさず、時すでにお寿司。

 

ただ、ひとりぼっちのウユニ塩湖。

色んなものが少しずつ壊れていくとは

この時の僕はつゆ知らず…。

 

 

 

 

 

「上海から旅をはじめて数万枚の写真を撮ってきたんだから

すでにあのレンズは役割を果たしてくれたよね。

うんうん、お疲れ様」

と自分をなぐさめつつ、走り続けました。

(ちなみに以後は、もう一本持参していた単焦点レンズでの撮影です。)

 

昼過ぎにたどり着いたのは

塩湖の真ん中にある「インカワシ島」。

 

 

 

多くの観光ツアー客が訪れる場所です。

周囲にはたくさんのツアートラックが。

ここではじめて人と出会います。

ちなみに最後まで僕以外に

自転車で走っている人は

見かけることはありませんでした。

 

 

 

島には無数のサボテンが。

真っ白な塩湖を背景にすると

どんなものでも

美しく映えるのが面白い。

観光客の方々はこの背景を利用して

色んなトリック写真を撮るようですよ。

 

 

 

人の住まない観光用の島ですが

トイレと食堂はあります。

ツアーに参加すると

塩湖の真ん中にテーブルを出して

食事ができるので、食堂には

他のお客さんはそれほどいません。

 

 

 

夕方までもうひと走り。

100km先まで走っても

高低差が50cmしかない

というウユニ塩湖は

「世界一平らな場所」でもあるそう。

自転車乗りにぴったり。

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方5時まで走った所でテントを張る。

もちろん周囲には誰もおらず

塩湖を吹き抜ける風だけが聞こえる神秘的な世界。

贅沢な野宿になりそうです。

 

 

 

自転車のあちこちが塩だらけ。

雪と違って放っておいても

消えてはくれないので

宿に着いたら掃除をせねば。

海辺で潮風にあたるだけでも

さびが付くというのに…。

 

 

 

 

 

 

ウユニ走行2日目。

テントがくしゃっとなっているのですが、

実は昨晩は壮絶な夜を過ごしていました。

 

夕日を撮ったり、ラーメンを調理して

テントに入ってしばらくした頃、

日が沈んで気温が下がったと同時に

北東からビュービューと強風が吹き荒れ始めたんです。

 

遮蔽物が何もないことでもろにテントに吹き付ける風。

バタバタと布が音を立て、骨組みのパイプがゆがみ始めたことで

「これはまずい!」とすぐさまパイプの接続を外し

テントを収縮させました。

 

暗闇の中、それ以上何もできず

萎れたテントにマットと寝袋を乗せ

なんとか夜を越えて朝を迎えたのでした。

 

 

 

朝日に照らされた静かな塩湖。

六角形の塩の模様は

乾いた表面が割れてできた

ヒビとヒビが合わさって

できるのだとか。

自然ってホントに不思議です。

 

 

昨日とはまた違う朝の塩湖にうっとりしつつ

「さぁ出発」と荷物をまとめた瞬間、ため息が漏れました。

…パンクです。

 

ただいつもどうり修理を進めるなか

タイヤに空気が入らないことに気付いたんです。

 

 

問題はコチラの空気入れ。

どれだけポンピングしても

空振りするばかり。

どうやらピストン部のゴムが

摩耗して空気が抜けてしまってるよう。

にしても、なぜこのタイミングで…。

 

 

 

さらにさらに、自転車に取り付ける

カバンの持ち手が

ブチンと切れているではないか。

致命的ではないけど

なんで塩湖のど真ん中で

皆寿命を迎えてしまうのか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

陸地まで60km。

当然パンクした自転車で歩ける距離ではなく

やむを得ずヒッチハイクを試みることに。

ツアートラックが停まってくれるといいけど。

 

結果として、朝8時半から待ち続けて

4時間の間に通った車の数はたったの3台。

どれも距離が遠く、気づいてもくれませんでした。

無人島に取り残されたかのよう…。

 

 

 

12時30分、やっと現れた救世主は

地元のトラックドライバーさん。

僕の目指す街とは

反対に向かうとのことでしたが、

荷台に電動ポンプをお持ちでした。

神様って本当にいるんだ…。

 

 

 

 

 

 

 

タイヤにバッチリ空気も入って、午後1時走行開始!

塩湖の主な入口に向かうとあって

昨日よりも轍がくっきり、地面もしっかり踏み固められています。

時速20km/hでゴールを目指す。

 

 

 

塩湖の中心から縁に向かうにつれ

塩の色がほんのり

赤みがかってきました。

やはり中心部ほど

綺麗で真っ白な塩の大地が

広がっているようです。

 

 

 

そして夕方4時過ぎ、

入り口付近の万国旗まで到着。

ウユニ塩湖の

定番フォトスポットですが、

真っ白で広大な塩湖を見た後だと

さほどインパクトを感じません。

 

 

 

さらに進んだところで

アスファルトの舗装路に復帰。

一時はどうなるかと思ったけれど

しっかりウユニ塩湖の魅力を堪能して

“壮大な寄り道”を

終えることが出来ました。

 

 

 

 

 

期待を上回る感動と困難を与えてくれた

ボリビアのウユニ塩湖。

 

はじめてその白い大地が視界の片隅に見えた瞬間は、

あまりの美しさに涙が出そうになったほど。

「旅に出てよかった」と

心から思うことができる素敵な場所となりました。

 

装備品にもガタがきてるし、疲労も溜まっているので

ゆっくり休みたいところではあるけど、

ウユニ塩湖の直後には

“世界を巡る旅”における最大級の試練と絶景が待っております。