”アレ”がない…
【254日目 13,562km】
ボリビアの首都(事実上)・ラパスには3日滞在。
標高の低い中心部にある宿を出発すると
ロープウェイで都市郊外へと上っていきます。
大都市を脱出するときは
必ずと言っていいほど、
大混雑の合間を縫ってイライラしながら
走っていくのがお決まりだけど
この日は道もガラガラ。
朝早く出たのが良かったかしら。
しばらく走ると
すぐにのんびりした荒野に。
とりあえず目指すは
200kmあまり先の
地方都市「オルロ」。
順調にいけば明日には着けそう。
ペルー同様、
路上の屋台が充実しているのが
助かります。
どこでも食事にありつけるから
食料を持ち運ばなくてもいい。
しかも安い。
ペルー終盤以降、
ずっと標高4,000m付近を
維持してるけど
さほど寒くないのが嬉しい。
夜も10℃を少し切るぐらいで
とても過ごしやすいです。
午後4時、100kmを走り
「パタカマヤ」という町に到着した時でした。
速度減少のための段差に勢いよくぶつかりすぎ
後輪がパンクしたのですが、
ここからリズムが狂いだす…。
いつも通りパンク修理したのは
良かったものの、
タイヤの着脱を荒く扱ってしまい
ディレイラー(ギア変速機)の
ワイヤーが
ネジから外れてしまいました。
“今日もう少し進んでおかなければ、明日オルロに到着できない…”
という不必要な焦りもあって
作業が雑になり、
チェーンが絡まって余計に時間がかかる。
「もう明日オルロに
着けなくていいや」
と諦め、近くの宿にチェックイン。
ここでゆっくり修理作業を
することに。
1泊¥1,000とお得。
ディレイラー修理は無事完了。
オルロまでの行程が1日伸びたけれど
「ベッドでゆっくり寝られるし
良しとしよう」と眠りにつきます。
しかし、僕はこの宿泊で
“1つのミス”を犯すのでした。
ラパス出発2日目。
今日も起伏の少ないなだらかな道を
気持ち良く走り始めます。
久しぶりにアルパカを発見。
大体近づくと逃げてくんだけど
この子はやたらと
興味ありげにコチラを
見つめてきてくれました。
一回で良いから触りたいなぁ。
今日もランチは
ストリートフード。
食べてると野良犬が
よだれを垂らしジーっと
見つめてくるのも
もはや定番です。
走行中、ふと横に目をやると
集落の中に
“西濃運輸カンガルー便”が。
はるばる地球の裏側まで
配達お疲れ様でございます。
アフリカでもよく見たな。
この2日間、
景色がほとんど変わらない。
車も少ないし
イヤホンを付け音楽を聴きながら
ダラダラと走っていきます。
何か変化が欲しい。
夕方5時過ぎ、「ヴィラヴィラ」という
小さな村に到着。
テントを張れないかと
キョロキョロしつつ進むと
羊の大群に邪魔をされる。
ボリビアは羊優先。
住民の方に確認を取り、
村の奥の廃屋で
テントを張らせてもらうことに。
夕方から吹き始めた強い風も
若干ながら防いでくれそう。
静かでいい場所です。
ガソリンストーブで夕食準備。
標高4,000mだと
炎が安定するのに時間がかかるし、
何より沸点が下がって88℃。
インスタントラーメンなら問題ないけど
美味しいご飯は炊けないだろうな。
ラパス出発3日目、いよいよオルロ到着の日。
人の少ない静かな集落をひっそりと出ていきます。
ラパスを出てから
景色といえばずっとこんな感じ。
だだっ広い荒野に
ポツンと家が一軒。
背景には背の低い山の
なだらかな稜線。
もともと2日で走り切ろう
としていただけに、
今日の行程はわずか50km。
起伏もほとんど無く
交通量も少ない道と
のんびりと走ります。
昼過ぎにオルロ郊外に差し掛かる。
ボリビア入国以降感じてはいたけど
ペルーに比べると街が汚い…。
道路はデコボコなうえに
そこらじゅう散らかるゴミ。
それを貪る野良犬たち。
ゴミ収集は機能していないのだろうか。
ちなみに路上の屋台で
よく食事をしてますが、
小さな村でも鼻を突くアンモニア臭が
漂うこともしばしば。
今のとこ印象良くはないボリビア。
さらに10kmほど進んだところで
街の中心部に到達。
ラパスは賑やかなゲストハウスに
滞在していたので
ここでは個室の宿で
一人ぼっちになりたい。
賑わう市場の近くに1泊¥600の
お得な宿を発見。
さぁ、ここでのんびりひと休み
とウキウキしながらチェックインをしようとした時、
あることに気付くと同時に心臓がキュッとなりました。
「“アレ”がない…」
ボリビアの宿では外国人旅行者は
滞在中、パスポートを受付に預けておく
というルールがあります。
そう、このとき手元になかったのは旅の必需品“パスポート”。
2日前、パンクおよびディレイラー修理のため
急遽宿泊したパタカマヤの宿に預けたまま
パスポートを受け取ることなくチェックアウトしていたのです。
事情を説明すると
理解してくれたオーナーさんは
問題なく泊めてくださることに。
だからといってパスポートが
不要という訳ではありません。
なんとしても取り返さねば。
ということでオルロ到着翌日、
僕はワンボックスカーの乗り合いバスに揺られておりました。
本来ならゆっくり部屋で休みたいところ、
昨日漕いできたばかりの道を引き返す。
なんて時間の無駄なんだろう…。
宿のあるパタカマヤまでは
130kmほど。
「あぁ、あの建物見たな」とか
ゆっくり眺めてきた景色を
猛スピードで巻き戻すように
進んでいきます。
そして、自転車で1日半かけて
やってきた道のりを
わずか1時間半で到着。
“自転車の1日は車の1時間”と
よく言うのですが、大方その通り。
車って便利な乗り物です。
そして宿に向かうと
すんなりパスポートをゲット。
実はパスポートを預けるルールは
アフリカやイランなどでもあって
「いつかやってしまうんじゃないか」
思ってたものの、今回が初めてでした。
バスを降りて取り返すまでほんの5分。
このまま帰るのもシャクなので
床屋さんへ。
刈り上げ部分のバリカンだけなので
これも3分で終わり、たったの¥250。
8分の滞在を終えオルロへと戻りました。
という具合に、
自転車の故障によりオルロ到着が1日伸び
さらにパスポートGETのためオルロ滞在が1日伸びる、
という何とも非効率な時間の使い方をしてしまいました。
ボリビアには壮大な自然の光景が待っており
早くそこに向かいたいのに、
無駄に足踏みをしているここ数日間でございます。