別れを経て前に進む
【182日目 10,355km】
プエブラの街では3日間の休息。
お世話になった人たちにお別れをして、さぁ出発という時
カルロスさんの格好はバッチリ自転車モード。
「街を出るまで一緒に漕ごう」
家を出てそのまま別れるつもりだったので
その一言がすごく嬉しい。
まずは中心部の大聖堂前にて
記念撮影。
プエブラではさほど
観光らしいこともしてない。
けれども仲間の皆さんと
ゆっくり過ごす時間が楽しかった。
次に立ち寄ったのは
カルロスさんの職場。
なんと大学の調査施設で
天候に関する情報データを
まとめる仕事をされているとのこと。
歴史ある立派な建物です。
3人のお子さんも
全員医療関係にお勤めで
かなり立派なご一家。
カルロスさんをただの
お腹ポヨポヨおじさんだと
思ったら大間違い。
複雑な街の道を抜けて
高速道路へ。
黙々と先を進む彼の後ろ姿を
見つめつつ、
いつもは一人で走る道を
二人で進んでいきます。
昼過ぎにカルロスさんのタイヤがパンク。
ガラス片が刺さっていました。
ここしばらく僕も
パンクが続いてましたが
このあたりの道は誰が走っても
パンクしやすいんだろうな。
「高速の入り口まで」と言ってたのに
どこまでも一緒に走り続けてくれる
カルロスさん。
気が付けば家からもう70km。
彼の背中を眺めて走っていると
色んな思いがこみ上げてきました。
正直、入国前にはかなり不安だったメキシコ。
言葉も不自由だし、治安面も怖いし。
どんな旅路になるのか予想もつきませんでした。
出発時、奥さんのラウラさんがハグをしながら言ってくれた
「メキシコのプエブラに
あなたの家があることを忘れないで…」
という言葉。
そして、今目の前にあるカルロスさんの背中。
あんなに不安だった国に、
今は離れたくない場所と別れたくない人がいる。
こんな出会いがどこにでもあるワケじゃないからこそ
心の底から感謝の思いが込み上げてくる。
そして15時頃。
「じゃあ、ここまでだ」と
ついに別れの時が来ました。
フェリーで偶然会っただけなのに
温かいおもてなしをしてくれた
カルロスさん、本当にありがとう。
これまでに幾度となく別れを経てきたのに
この時は一層寂しく感じ、つい泣きそうになりました。
というかちょっと泣きました。
別れた直後に突然の夕立。
ここ数日のパターンから
あるだろうなとは思ったけれど。
高架下にて、通過する車の
水しぶきを受けながら
30分あまりの雨宿り。
思いのほか長く続いた雨に
予定の距離は走れず。
「クアクノパラン」という
通りすがりの町に
泊まっていくことにします。
なんかどんより暗い雰囲気。
野宿のつもりだったけれど
安いホテルが見つかったので
チェックイン。
というか最近、宿が続いているので
野宿が億劫になっている。
こんなんじゃダメダメ。
僕と同じように
雨に打たれたはずのカルロスさん。
心配になってメッセージを送ると
21時になってようやく
家に到着したとのこと。
あぁ、本当にありがとう。
プエブラ出発2日目。
漕ぎ始める前に通りの露店にて朝食を済ませます。
村や町が多ければ
ストリートフードも充実してるので
自炊からも遠ざかっています。
なんやかんや名前が違うけど
トルティーヤに具が乗ってれば
日本人にとってはすべてタコス。
この日も高速を行きます。
路肩が広いのもあるし、
高速道路周辺にある町は
人の出入りが多いぶん
治安も安定しているとのこと。
最後まで安全第一で。
20kmほど走ると峠に到達。
ここまで苦しみながら走ってきた
メキシコ中央高原を下り、
一日で一気に標高を2,000mも
落としていく行程。
どうやら楽な日になりそう。
と思いきや、かなりのトラックが
ふん詰まり状態。
スムーズに下りたいんですけど。
道路工事かしら、と
ブレーキを握りつつ
ゆっくり進んでいきます。
よく見ればトラック達は
全く動いておらず、
これはただ事ではない。
数百台にもおよび車の合間を縫って
申し訳なさそうに
どんどん下っていきます。
すると渋滞を5km以上も進んだ先に
衝撃の事故現場がありました。
立ち入り禁止テープの先には
大破したトラックの残骸。
聞いてみると、幸い死者は出ておらず
運転手も重体ではないとのこと。
まあ、ここまで派手に事故ればすでに大事ですが。
積載物は3ℓのオレンジジュース。
数千どころか万は軽く超えるだろう
膨大な量のペットボトルが散乱してます。
立ち入り禁止を無視した野次馬が
これをどんどん持ってくんだから
ホントに無神経というか何というか…。
事故現場を横目に
バイクはすり抜けているようなので
僕も構わず
先に進ませてもらうことに。
後ろから全然車が来ないので
堂々と走ることが出来ました。
面白いのが、
時折僕を追い抜いていくバイクたち。
皆が皆、オレンジジュースのボトルを
荷台に括りつけてるもんだから
声を出して笑ってしまいました。
地震などの災害が発生しても
略奪が起こらない日本が僕は大好きです。
オリサバという街に着いたところで
ランチ休憩。
グアナファト以降から
町同士の間隔がかなり狭いので
食べ物を持ち運ばなくていいのが
本当に助かる。
午後からも緩く長い下り坂。
80kmにも及んで
ゆっくり高原を下っていくので
傾斜も急すぎず
かなり気持ち良く下ることが出来ます。
ここまで長い下りは初めてじゃないかな。
引き換えに、帰ってきたのが
じめじめとイヤらしい蒸し暑さ。
朝はジャケットを着ていたのに
標高も200m程度になれば
汗だくだくになるほど
かなり暑いです。
結局141kmと、
最長に近い走行距離を経て
「ティナハ」という村に到着。
村の方のアドバイスで
ガソリンスタンドの休憩スペースに
テントを張らせてもらうことに。
一人でゆったりと寝られると思いきや
日が暮れると数名のトラックドライバーが
寝床を準備し始め、
修学旅行のようにぎゅうぎゅうに。
最後はみんなで枕投げをして眠りました。
嘘です。