日本人がいっぱいの”バンフ”
【65日目 4,124km】
ジャスパーでの滞在を終えると、引き続き東へ。
カナディアンロッキーもう一つの観光地
“バンフ”を目指します。
ジャスパーとバンフを繋ぐ道路は
“アイスフィールド・パークウェイ”
と呼ばれ、カナディアンロッキーの
絶景を楽しみながら走ることが出来ます。
通行する車のほとんどが観光目的のため
皆、焦らず運転ものんびりモード。
出発から間もなく道路脇の休憩所にて。
「え!?アルゼンチンまで走るの?」
と驚いたご夫婦から
お金を頂いてしまいました。
しかも25米ドルとそれなりの値段。
お金をもらうことはかなり珍しいです。
これが特別嬉しかったのは、理由がありまして。
ジャスパーにて渓谷へハイキングに行った際
少しでも荷物を減らすため、財布を持たず
現金紙幣(¥4,500ほど)をポケットに突っ込んで歩いておりました。
町に戻ってふとポケットを探ると、お札がなく
どこかで落としてしまったようです。
決して安くはないお金を不注意で失くし
ショックを受けていたところでこのご夫婦からのご支援金。
何かを失うと、まわりまわって何か得られるようになってるんです。
だって地球は丸いから…。
自転車を停めて横に目をやると
山々の絶景が。
上り坂でかいた汗の嫌らしさも
吹き飛ぶような
さわやかな光景。
これをずっと眺めながら走れるのは贅沢。
午後の休憩中に悲劇が…。
少し自転車から離れた間に、
ナップサックに入れてた
10本あったはずのシリアルバーが
2本に減っているではないか。
犯人はまだ遠くないはず。
あたりを見回すと
頭上に「カァ、カァー!」と黒いカラスが2羽。
せっかく安くまとめ買いしたのに。
せっかく朝お金を頂いて良いことがあったのに。
何かを得ると、まわりまわって何か失うようになってるんです。
だって地球は丸いから…。
夕方からかなり急な上り坂へ。
きょう出発したジャスパーの
標高は1,400m。
バンフに向けては2,000mに達する
峠を2つ越えなければいけません。
まさに1つ目の峠に差し掛かったところ。
せっせと漕いでいると
羊の大群が道をふさぐ。
観光目的で来てるドライバー
ばかりなので、動物が現れると
みんなスマホでパシャパシャ。
たちまち渋滞が起こります。
坂を上り始めて1時間半。
ようやく頂上に近づき
道も平らになりました。
すぐそこに迫った雪の壁の迫力。
自分の足で来たからこそ感慨深く
じっと見とれてしまいます。
予定していたキャンプ場が
まだ開業しておらず。
けど誰もいないのでしれっと侵入。
後から聞くと、今年は冬が長く
開業時期がずれ込んでいるようです。
2,000mで過ごす夜は寒い。
ジャスパー出発2日目。
スタートから一気に峠を下ります。
曇り空と標高のせいで空気が冷たい。
手袋をしてしっかりブレーキを握る。
昨日さんざん上ったぶん
高所から見下ろす谷間の景色が
最高に美しい。
“ロッキー山脈”の名の通り
無骨な岩肌が見渡す限り
どこまでも広がっている。
今日はリレーマラソンの大会だそうで、
たくさんのランナーが汗をたらし
激坂を上っていました。
対向車線側の路肩を走ってるんですが
そっちの方が安全なのだろうか。
この景色の中走るのは楽しいだろうな。
ちょうどお昼頃、
坂を下り切るとレストランを発見。
観光客でにぎわっております。
「ちょっと飲み物を」
と売店に向かうと、
ジュースが1缶¥550。
“だろうね、観光地だもんね”と
手ぶらで外へ。
ただでさえ円安で苦しいのに
こんなとこじゃ買い物できません。
レストランの良い匂いを嗅ぎつつ
インスタントラーメンをすする。
そして午後からは
昨日に続いてまたも
2,000mの峠越え。
傾斜は緩やかなものの
上り坂が30kmも
続いています。
午前中、空を覆っていた雲が流れ去り
太陽がさんさんと背中に照り付ける。
朝の出発時はあんなに寒かったのに…。
寒暖差が激しいだけでなく
標高も絶えず変わるので
どの服装が正しいのか分からない。
そして午後4時、峠の頂上へ。
標高2,069mは
カナディアンロッキーにおいて、
そしてカナダの旅路においての
最高到達点です。
あとはここから下るだけ。
夜寒いから少しでも標高を下げようと、
20kmほど進んだ先にキャンプ場を発見。
かなり混んでおり“どこか空いてないかな”
とキョロキョロしてると、
一人のおじさんが「ここに張れよ」と
招いてくれました。ラッキー。
ジャスパー出発3日目。
すでに山場となる2つの峠を越えており
ウイニングランの気分でのんびり漕ぎだします。
久しぶりのクマちゃん、13頭目。
かなり道路に近いですが
無心でタンポポを
頬張っているようです。
獣というにはあまりに可愛く
もはや黒いパンダ。
バンフまで50kmほどの所、
これまで走ってきたハイウェイと並行して
この時期限定の自転車専用道が
敷設されていました。
車もおらず静かな道を
気持ち良く進んでゆく。
バンフの町が近づくほどに
サイクリストが増えてきます。
ちょうど週末でもあり
数えきれないほどの人に
追い越されていく。
荷物なしでまた走りたいほど良い道。
ちょっと休憩していると
隣のほうから日本語が聞こえるではないか。
「日本の方ですか?」と
尋ねたのをきっかけに会話は盛り上がります。
“ジョンさん&ヒロミさん”ご夫婦はバンフ在住20年以上。
かつて日本人向けのツアーガイドをしていた夫のジョンさんも日本語ペラペラ。
なんやかんやと気づけば1時間近く道端で話し込みました。
(※ご本人の希望もあり写真は控えます)
夕食のお誘いを受けて、ご夫婦とは一度お別れ。
バンフの町に到着するとキャンプ場に向かいました。
テキパキとキャンプの準備をしますが、写真の通りテントが二つ。
実はバンフではある方と会う約束をしてたんです。
それが日本人サイクリストの中野亘さん。
過去にヨーロッパやアフリカを走破しており、
今回はカルガリーから北極海へ、
つまり僕のきたルートを逆へと旅されるそう。
偶然、時期も場所も近いということで
連絡を取り合っておりました。
一通りテントを整えると、中野さんと共に
中心部にお住まいの
“ジョンさん&ヒロミさん”宅へ。
晩御飯をごちそうになります。
久しぶりに話す日本語の会話が心地よく
楽しいひと時を過ごしました。
バンフ到着翌日は自転車を置いて
ゆっくり休むことに。
“トンネルマウンテン”に登れば町を一望できます。
午後からは町を散策。
ロッキー山脈のど真ん中に
バーやレストランなど賑やかな
お店が立ち並んでいます。
こないだまで一人ぼっちだったのに
周囲には人だらけ。
どうやら町にはラーメン屋さんまで
あるらしいとのことで
喜々としてやってきました。
その名も“ラーメン 嵐”。
日本人の方が経営されてるようです。
期待が高まる、よだれが垂れる。
看板メニューの“ブラック嵐ラーメン”。
とんこつをベースに黒ゴマのペースト
を加えることで濃厚さを増したスープ。
替え玉込みで24カナダドル。
美味しく食べるコツは
日本円に換算しないこと。
一日の終わりにはキャンプ場で
中野さんと遅くまで話し込みました。
海外を大陸規模で旅する
日本人サイクリストというのは
貴重な存在で、「そうそう!」と
互いの経験に激しく共感します。
偶然の出会いも含め、日本人の方々と
たっぷり時間を共にしたバンフでの滞在となりました。
カナディアンロッキーの景色をしっかりと心に焼き付けたら
いよいよカナダ最後の町・カルガリーに向かいます。
<訂正とお詫び>
前回のブログ“雨にうたれてジャスパーへ”にて、
「オスのムースを目撃した」と記述いたしました。
しかし、正しくは『ムース』ではなく『エルク』であることが判明しました。
混同してしまったムース様、エルク様および不快な思いをされた皆様に
心よりお詫び申し上げます。