無念の砂漠リタイア

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【555日目 24,428km】

 

困難な道を乗り越え、ナミブ砂漠の絶景に出会えた翌日。

 

首都・ウイントフックを出発して5日間で

砂漠の洗礼を受け続けた体を癒すために

キャンプ場でもう1泊したかったのですが…

 

 

 

国立公園内のキャンプ場は

¥3,000を上回る高額なので連泊したくない。

ということでお昼前にチェックアウトして

公園外のキャンプ場を訪ねますが

付近の施設はすべて満員。

 

 

泊まる場所がないとなればもう走るしかありません。

最低限の食料を調達したら

予定変更で出発することに。

嫌がる体にムチを打ちます。

 

 

 

未舗装の道はまったく

走りやすくなる様子がありません。

自転車に乗ったり下りたりを繰り返し

牛の歩みで進んでいきます。

砂漠地帯を走り切るには10日以上

かかるけど、自信がなくなってきた。

 

 

 

次の補給地点は150kmほど先。

通りすがる車も減っていき

秘境感が増してきました。

この日の気温は43℃…。

暑い、暑い…。

 

 

 

深い砂と猛暑に加えて

非常に強い向かい風が止むことなく

吹き続けたこの日の午後、

結局6時間走って進んだ距離が

わずか30km。

景色は何も変わらない。

 

 

 

夕方、木の下に休憩所を発見し

ここでテントを張ることに。

あまりの風の強さに

火を起こすこともできず

パンだけかじって

眠りにつきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、砂漠突入7日目。

自然の猛威は夜明け前の4時頃から

その唸りを響かせていました。

 

台風かと思うほどの風がテントを揺らすなか

夜明けと同時に外をのぞくと

すさまじい砂嵐。

 

 

周囲に誰もいない辺境の地に鳴り響く轟音を耳にして

しばらくどうすればいいのかわからなくなり、

ただただ呆然としました。

 

 

 

ふと落ち着きを取り戻して

思ったのは、

「無事にこの場から逃げ出さねば」

ということ。

砂漠を走破できるかどうかなど

この時、頭からは消えていました。

 

 

 

飛ばされそうになるモノを必死に抑え

なんとか荷物をまとめました。

しばらく待っても誰も通らないので

昨日漕いできた道を戻り

風下へ向かっていくことに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体にぶつかる砂のつぶてをこらえながら

1時間ほどかけて10km進んだところに

ホテルを発見。

周囲にはなんにもない僻地の

高級リゾートホテルのようです。

 

砂にまみれた体を落ち着けるべく

とりあえず避難したこのホテルで、

思わぬ展開が待っていました。

 

 

 

「この先で野宿してたんだけど

砂嵐に襲われたからちょっと休ませて!」

 

事情を説明すると

納得してくれた受付の女性に

とにあえず飲み物でも飲みなさいと、促されるまま

奥のバーに向かい歩き始めたとき

上方のバルコニーから声を掛けられました。

 

「リョウスケじゃないか!ここまで来たんだな」

 

 

見上げるとなんとそこにいたのは、

2日前にセスリエムの国立公園のキャンプ場まで

車で送ってくれた2人組のうちの1人の男性

“ナイルさん”でした!

 

 

 

「俺たち

このホテルを経営してるんだよ」

もう1人の“アドさん”もやってきて

ゆっくり話ができました。

「実はお前を車から下ろして

ずっと心配してたんだよ。」

 

 

 

「この地域を走るサイクリストを見かけることはあるけど

みんな涼しい冬の時期ばっかりだ。

厳しい夏にこれ以上進むと本当に死んじまうから

アスファルトのメインロードまで

俺たちがお前を連れていくからな」

 

この言葉を聞いた時、

砂漠を走り切れない悔しさよりも

過酷な自然環境から抜け出せる喜びが

ぐっと心からこみ上げてきました。

 

 

 

翌日じゃないと移動できないとのことで

この日はご厚意により

無料で宿泊させていただくことに。

一目見てわかるこの豪華な部屋、

アプリで検索すると

なんと1泊2万円でした…。

 

 

 

中庭にはプール付き。

この旅において1番の高級ホテル

であることは間違いないけど、

これまでの人生においても

最高ランクに近いはず。

昨日は路上で野宿だったのに…。

 

 

 

外から見ると

お城のような外観の素敵なホテル。

砂漠に沈んでいく夕陽をバックにすると

まるで映画のセットのような場所。

ホントにこんなトコ泊まっていいの?

やっぱ払えって言われても無理ですよ。

 

 

 

夜はレストランでコースディナー。

これまでたまに奮発することは

あったけれども

さすがに旅でコース料理は初めて。

出てくるもの全てが

もうホント美味しい(タダだから)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

贅沢な1日を過ごしすっかりリラックスできた翌日、

いよいよメインロード沿いの町まで送ってもらうことに。

 

 

右側がオランダ人オーナーの“アドさん”。

同じ規模のホテルをもう2軒経営されています。

おそらく懐がかなりホックホクなお方かと…。

この方に旅を褒めてもらったおかげで良い思いができました。

 

左側が共同運営者のナミビア人“ナイルさん”。

陽気な彼はアドさんの大親友であり良きビジネスパートナー。

この人もおそらくホックホク。

 

ナミビアにお越しの方は

ホテル「Le Mirage (レ・ミラージュ)」へどうぞ!

 

 

 

自転車と荷物を載せると

車はいよいよ走りだします。

走り切れなかったことは残念だけど

自然の恐怖を肌で感じられたことは

きっと今後の旅で活きるはず。

この借りはどこかで必ず…。

 

 

車から景色を眺めてみても

すごい所を走っていたんだなと

気づかされます。

時速100kmで走っても

なかなかたどり着かない

果てのない砂漠地帯。

 

 

 

 

 

 

 

 

3時間のドライブの後、

「マリエンタル」の町に到着。

お世話になったお二人ともここでお別れ。

 

走りだす前に

砂漠でボロボロになった身の回りを整理するため

キャンプ場で少し休んでいきます。

 

ちなみにここでも

「自転車で日本からってスゴイわね!」と

宿泊代を¥500割引きしてもらいました。

自転車旅って良いことがいっぱいなんですよ。

 

 

 

あまりに過酷な

真夏のナミビア砂漠地帯。

思わぬ形での幕引きとなりましたが

これも旅だと受け入れ

再び先を見据えて走り出します!