砂漠でアクシデント
【550日目 24,255km】
首都・ウィントフックでは4日間ほどのんびり。
久しぶりの都会に羽を伸ばしてしまいました。
ここからまっすぐ南下すれば
アフリカ大陸のゴール・喜望峰へと到着するのですが、
ナミビアの見所であり世界遺産にも登録されている
ナミブ砂漠の世界を堪能するために
少し海側に迂回して行きます。
そこで問題は未舗装路。
南アフリカへとまっすぐ続くメインロードを西に外れてしまうので、
ガタガタのオフロードを数百kmにも渡り進んで行かねば
なりません。
しかも、南半球は現在は夏の真っ只中。
アフリカ最後にして最大の難関となりそうです。
ウィントフックを出発すると
10kmも走らないうちにこの風景。
首都とはいえ栄えているのはほんの一部だけのようです。
都市を取り囲む山を超えてしまえば
割と平坦。
向かい風だけれど
そんなに強くはありません。
天気の良さは相変わらず。
90kmを走った昼過ぎ、
砂漠突入前の
最後の補給地点である
「レホボス」に到着。
大きなスーパーがありました。
ウィントフックで
ひと通り必要なモノは
揃えていたので、
傷みやすいものを改めてここで購入。
どれだけ持っても足りない気がする…。
緊張感が高まってきます。
さらに進むこと5km。
分岐を西に向かうと
ついに未舗装路がその姿を現しました。
これからしばらくはアスファルトとお別れ。
覚悟を決めて漕ぎ始めます。
いよいよ砂の世界に足を踏み入れると
これが予想以上に進めない。
車体、荷物、体重合わせて
100kgの重みは
細かい砂の粒に埋まっていくばかり。
不安が一層つのっていく。
未舗装路を10km走ったところで
この日は終了。
車もほとんど通らないようなので
道を少し逸れたところで野宿です。
これまでのアフリカ旅のように
順調に進めるのかしらと
不安を抱きつつ、
パスタを茹でます。
ドキドキワクワク。
砂漠突入2日目はパンク修理でスタート。
前日に気づいてたけど、
日が沈んだ後に直す元気がなかったんです。
走り出しはかなり順調。
砂もあまり深くなく
ゆっくりながら
なんとか漕ぎ進むことができます。
途中で牧場を発見。
ほとんど人は住んでいない地域ですが
まれにキャンプ場や農場らしき
建物が目に入ります。
まだ完全な砂漠ではない様子。
すかさず「水をください」とお願い。
猛暑日が続く真夏のナミビアで
水が絶えることは
旅の中断を意味します。
もらえるところでは
とにかくもらう。
大変だったのは午後から。
徐々に砂は深さを増していき
やがて漕ぐことはできなくなってしまいました。
40℃におよぶ暑さのなか
5km進むのに掛かるのは1時間ほど、
歩くほうが早いです。
限られた食料でやり繰りせねばならず
常に空腹気味。
自転車を押す手に力は
ほとんど入りません。
体力と同時に気力も
奪っていく砂の大地。
このままでは予定していたキャンプ場には到着できず
さらには
隠れて安全に野宿できそうな場所もないということで、
やむを得ず通りがかった車に乗せてもらうことに。
まだ砂漠地帯を走り始めて間もないのに
悔しいやら情けないやら…。
10kmあまり乗せてもらい
着いたのはキャンプ場。
ベッド・シャワー付きの
シングルルームももあるけど
¥3,000なんて泊まれません。
日が沈む前に
なんとかテントを張ったけれど
まれに見るほど体はクタクタ。
2日目にしてこれで大丈夫なのか。
夏のナミブ砂漠、
予想を上回る困難さです。
そして砂漠3日目。
ほんの2時間後に起こるアクシデントなど
予想もせず
まだ涼しい朝の風を受けて気持ち良く走り出しました。
テント泊の際は
8〜9時間たっぷり睡眠を取るので
午前中は割と元気なんです。
前日あんなにバテたのに。
遠くに見える山が美しい。
そして、アクシデントは一瞬のうちに起こりました。
深い砂が積もった急な下り坂。
勢いに乗りながらも砂地で不安定な
自転車の操作はままならず
おそらく時速40kmほどの速さで激しく転倒。
擦りむいて血が滴る左腕よりも
ショックだったのが
自転車のハンドル。
左側があり得ない方向に曲ってます。
おまけにブレーキも効かなくなるし。
この時、もう頭は真っ白。
下から見上げた事故現場。
写真では伝わりにくいけれど
意外と高く、
斜度もかなり急なんです。
深い砂に注意せず突っ込んだのが
間違いだった。
事故の痛みと精神的ショックで
呆然としてるところに車で通りがかったのは
観光中のスペイン人夫妻とガイドさん。
出血の応急処置をしてくださり、
「救助の車を呼ぶから待ってろ!」
と迅速に対応してもらいました。
数分後にやってきたのは地元の警察。
「意識は失ってないから
病院は行かなくてもいいよ」
と伝えると、
現場近くの宿までパトカーで搬送してもらえることに。
到着した宿のオーナーの気遣いで
無料で泊めてもらえることに。
ビクトリアの滝のリビングストン以来
テントで眠り続けながら実に23日振り、
ついにベッドで眠れる事に!
無料でナミブ砂漠の宿に泊まるなら
自転車で坂道に突っ込んで転ぶといいですよ。
転倒の衝撃から収まらない頭痛をこらえ
自転車の手当てをしてあげました。
ブレーキもじっくりにらめっこしながら
なんとか修理完了。
自転車の事なにも知らなかったのに
旅に出て成長したもんだ。
しかし、
なんとか自転車は走れる状態とはいえ
頭と腕は痛いし
やっぱり首都・ウィントフックまで戻るべきだろうか。
3日目にして
すでに砂漠に嫌われてる気がしてきました。
進むべきか、戻るべきか
それが問題だ。