絶品ボロネーゼ
【315日目 11,986km】
水の都・ヴェネチアを満喫し
スザンナさんに別れを告げると
再び西へ走り始めます。
イタリアのこのあたりの地域には
町と町を結ぶように自転車専用道が敷設されています。
実はこれ、
かつて敷かれていた鉄道の線路を取り除き
そのままサイクリングコースにしてしまったというもの。
鉄道が走っていた道なので
曲がりが少なくひたすら真っすぐ。
大部分は未舗装の砂利ですが、
時々ランナーやサイクリストと
すれ違うくらいなので
非常に走りやすいんです。
途中に寄る多くの町は
中世の面影を残しており
昔ながらの雰囲気が漂っています。
石畳が走りにくいけど、
情緒あふれる景色を走るのが
気持ちいい。
人が集まる観光地でなくても
絵になる素敵な風景が広がる
イタリアの道。
ついつい自転車を停めて
写真を撮りたくなってしまいます。
この日は130kmを走って「フェラーラ」の街に到着。
イタリア北東部海岸沿いは住宅地ばかりで
野宿はしないほうが良いと聞いてたので、
Warm Showerを利用して「ルディーさん」宅にお世話になります。
建築家のルディーさんはご自宅も自身でデザインされていました。
天窓から差し込む優しい日の光がロフト部分を抜けて
リヴィングへと注ぎ込む設計はまさに“匠の技”。
ディナーはパスタ。
トマトベースのソースに
具材は豪華なエビと蟹。
さらに、唐辛子とお酢を混ぜた
オリジナル調味料を加えた
スパイシーな一品です。
年に数回休みを取って海外を自転車で走るというルディーさん。
日本も走ったことがあるという彼が呟いた言葉は、
「日本の人ってとても親切で礼儀正しいけど
あまりコミュニケーションはとってくれない。
旅の間、僕はずっと1人だったよ。」
建築家で、料理も上手くて、イケメン。
そんな伊達男が漏らした寂しい一言が胸に突き刺さった
フェラーラの夜でした。
(一緒に写真撮るの忘れちゃいました…。)
翌日も青空の下、
田舎道をのんびりと走り始めます。
対向車もほとんどおらず
走りながら眠たくなるほどでした。
イタリア入国以来
だだっ広い野原というのはなくて、
何らかの農作物を植えているであろう
畑が延々と続いています。
パスタの国だから
小麦が多いのだろうか。
この日は70kmほどを走ると
「ボローニャ」に到着。
しかし観光は後回しにして
事前に連絡してあった
郊外のホストさん宅へと向かいます。
ボローニャの街を少し過ぎると
景色は山に変わり、
急な上り坂が続いていました。
汗をかきながら
時に自転車を押しながら
必死に上っていきます。
ここはすでに
イタリア中央部を貫く
アペニン山脈の麓。
広がる山の景色に癒されながらも
足には疲労が溜まっていきました。
山を上り始めて1時間ほどで到着したのは、
アレックスさん(カナダ人)とガイアさん(イタリア人)
カップルのお宅。
家のすぐ隣はこの風景。
目の前に広がる青と緑。
元気で素直な子供が育ちそうな
場所です。
お二人に子供はいませんけど。
到着した日の晩ご飯は
オムレツ。
イタリアの家庭にお邪魔して
初めてパスタが出なかった日です。
オムレツに乗っかってるのはトリュフ。
トリュフはイタリアの日常。
到着翌日はバスに乗ってボローニャ観光に繰り出します。
サッカーの中田英寿選手も一時期在籍していたボローニャ。
ランボルギーニの本社があったり、
マセラッティが設立された街でもあります
この日は日曜日だということもあり
街の中心は歩行者天国。
沢山の観光客で
かなり賑わっていました。
こちらは「ボローニャの斜塔」。
かつての富豪たちはこぞって
高い塔を建てたらしいです。
人はお金を持つと
変なことに使いたがる。
ヴェネチアに比べて
物凄い数の人がいるわけでもなく
過ごしやすい雰囲気でした。
やっと落ち着いて
イタリアの都市を見た
という気がします。
賑わう人々の中で注目を集めるのは
ストリートパフォーマー達。
ヨーロッパは
バスキング(路上パフォーマンス)の
本場とあって
皆、活き活きと活動してました。
そして、ボローニャで最も楽しみにしていたのは
この街ならではのグルメ。
多くの人が行列をなすこちらの
レストランで味わってみることにしました。
その料理がこちら「ボロネーゼ」。
街の名を冠するこのパスタは、
ひき肉をじっくり煮込んだソースが
平打ちの面にしっかり絡み、
さらにたっぷりとかけたチーズで
マイルドにまとめた一品。
イタリアには各地に名物パスタがあるので
道中、味わっていくのが楽しみなんです。
そんなボローニャの滞在で
街の観光以上に思い出深いのは
ホストのアレックスさん&ガイアさんたち
と過ごした時間。
毎週日曜日は
近所の人たちを集めて
ピザパーティーをするらしく、
朝から仕込んでいた生地を伸ばして
ゼロからの手作りです。
家の裏にはピザ窯があり、
直火でピザを焼いていきます。
アレックスさんカナダ人なので
「焼き方あってるか知らない」
らしいですけど。
ピザが焼ける頃には
パーティーの準備も整い
ぞろぞろと人が集まってきます。
盛大にみんなで
チンチン(乾杯)するかと思いきや
パーティーはふわっと始まり、
ふわっと終わりました。
イタリア人はあまり
乾杯しないらしいです。
次の日も
裏庭のご近所共同畑での
農作業を手伝ったり
二人が仕事にいってる間、
作り置きしてくれてた
自家製ボロネーゼを
ご馳走になったり
最後の夜には
ブルーグラスのセッションを
聴かせてもらったりと、
穏やかなイタリアンライフを
送らせてもらいました。
都会的なイタリアの方たちとは
あまりじっくり交流できないのでは
という不安をあっさり拭い去ってくれた、
アレックスさん&ガイアさん宅での
滞在でした。
“またいつか会いたい人”が
どんどん増えていく。