日本人より日本人

投稿日:

【232日目 8,700km】

 

 

大雪の中たどり着いたハミットの村を出て

親切なトールガさん一家に別れを告げると、

首都アンカラの方向へと走りだします。

 

 

 

前日の猛吹雪はぱったりと止み

綺麗な青空が広がっています。

一面に広がる雪景色が

クセになりつつあるトルコの旅。

 

 

 

時々あらわれる町を横目に

ひたすら進んでいきます。

ほどほどの起伏があるおかげで

身体があったまりました。

 

 

 

 

 

 

 

この日に着いたのは「クルッカレ」という街。

街の中心部で安いホテルはないかと探していると

とある男性が声を掛けてきました。

 

「ホテルは沢山あるけど、せっかくだしウチにおいでよ」

 

これまでに沢山の外国人旅行者を招いてきたという

彼を信用してお邪魔することにしました。

 

車で走る彼を7kmほど追いかけると

郊外のマンションに到着。

 

 

 

奥さんは近々引っ越す予定の

イスタンブールに先に行っており、

しばらく独りで暮らしているという「サヴァシさん」。

 

少し話しただけで

にじみ出る人柄の良さが感じられる人でした。

 

 

 

そんな彼の趣味は“織物”。

伝統工芸職人であるあばあちゃんから

直々に教わったという腕は

素人でもその精巧さが分かるほど。

リビングには自作の手織り機が

堂々と置いてありました。

 

 

 

羊毛を紡ぐところから

手作業でおこなう本格派。

トルコでもここまでやる人は

決して多くないらしく、

彼のもとにやってきた友人が

パシャパシャ写真を撮っていました。

 

 

 

 

 

 

実は、

織物好きのサヴァシさんの本職は学校の先生。

街の外れにある高校で英語を教えてるんです。

 

出会った翌日、

彼が教鞭をとる学校に出向き

授業に参加させてもらうことになりました。

 

校長先生にも許可をいただき、ワクワクしつつ

日も昇りきらぬうちからバスに乗って学校に向かいます。

 

 

 

山間部にある学校のため

交通手段はみんなスクールバス。

生徒や同僚の先生が

次々と乗ってきました。

 

 

 

 

 

いよいよ楽しみになってきたと思いきや

バスの中で残念なお知らせが…。

あまりに雪が深いため

この日の学校は

お休みになってしまいました。

 

 

 

 

学校にたどり着くことすらできず

バスはそのままUターン。

後々聞くと、

この日から3日連続休みになったそう。

この辺でも珍しいほどの雪とのこと。

我ながらよくこの中を漕いできたな。

 

 

 

 

 

 

プロ並みの織物師だったり、

僕の前職でもあった英語教員であったり、

色々と驚かされたサヴァシさんですが

一番の衝撃は奥さんと夫婦そろって

大の“日本フリーク”だということ。

 

特に日本食に関心が強いらしく、

「朝ごはんを食べよう!」と言ったとき

まさか卵焼き用の四角いフライパンが出てくるとは

思いませんでした。

 

 

 

学校が休みになって時間ができたので

一緒にうどんを作ることに。

「こっちの食材じゃ

和食のだしは再現できないよ」

と伝えると、海外ではほとんど見ない

“昆布”が出てきました。

 

 

 

「こんな田舎じゃ

日本の麺なんか売ってないでしょ」

と言うと、小麦粉を出してきて

“うどんの麺”を打ちはじめました。

 

 

 

 

 

「麺をのばす棒が要るよ」

と言ってすらないのに、

“麺棒”が出てきました。

もはやこの家にはなんでもある。

 

 

 

 

 

まさか故郷の日本から

数千kmも離れた異国で

人生で初めてうどんを打つとは。

うどん打ち体験に興味がある方は

トルコへどうぞ。

 

 

 

 

もちろん麺を切るための

包丁も出てきました。

ホント職人みたい。

実はトルコにも似たような

麺料理の文化はあるそうです。

 

 

 

 

箸も上手に使いこなし

見事に茹で上げてくれました。

茹でた後に冷水にさらすとこまで

もう完璧。

 

 

 

 

 

うどんだけじゃ寂しいので

親子丼もつくりました。

これは僕が作ったんですよ。

ホントに。

 

 

 

 

 

旅をしていて「日本が恋しい!」

と思う時の理由は食事。

摂取することで精神的余裕を取り戻し

旅を続けることができます。

まさかトルコの田舎で食べられるとは。

予想を大きく超えるほど美味しかった。

 

 

 

 

 

 

日本を愛し、

手打ちの麺を茹で、自作の袴を身に着ける。

そんなサヴァシさんは日本人よりも日本人。

 

 

ホテル泊が中心となっていた

冬のトルコの旅路。

ここにきて現地の人とのかかわりが増えてきています。

 

思わぬ場所での思わぬ出会い、

どれだけ味わっても飽きることがありません。